絵里奈の独白

京衛武百十

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そんなの嘘です!

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『あなた方は、沙奈子さんの前で性行為をしているという証言もあるんです。これは、明確な性的虐待に当たります』

完全に事実無根の言いがかりをつけられて、私は自分の頭のてっぺんから何かが突き抜けるような錯覚さえ覚えた。昔、アニメとかで見た、<怒りのあまり頭が火山のように噴火する>という表現は、まさにこういう感じを表現してるんだと後で思い返した時に悟った。

「な、なんですかそれ!?、そんなの嘘です!。私たち、そんなことしてません!!」

その声は、自分でも驚くぐらい腹の底から出た。まるで猛獣の咆哮だと思った。なのに来支間きしまって人は私に手の平を向けて顔を背け、『聞く耳を持たない』って態度を見せた上で、切り捨てるように言った。

「とにかく、詳しいお話を聞かせていただきたいので、一緒に児童相談所まで来ていただけますか」

すかさず私も、

「じゃあ、私達も一緒に行きます…!」

と食って掛かる。なのに来支間って人は私を蔑むような視線を向けて言い放った。

「あなた達は、沙奈子さんの親族じゃないんですよね?。じゃあ、関係ありませんので立ち会う権利もありません。どうぞお引き取りください」

『親族じゃない』……。

』……!?。

その言葉が私の頭に石のようにガツンとぶつかった気がした。一瞬、呼吸さえできないくらいだったけど、気を取り直して言う。

「今はまだ確かにそうですけど、私、達いたるさんと結婚を前提にお付き合いさせていただいてます!、だから関係者のはずです!」

そうだ。私はもうそのつもりだ。親族じゃないと駄目だって言うのなら、私はいたるさんと結婚して<夫婦>になる。それなら文句はない筈だ…!。

それなのに、来支間って人はただ面倒臭そうな顔をしただけだった。

「では、お付き合いを始めて何年になりますか?」

その問いに、絵里奈が、

「…!。一ヶ月ちょっと…、です」

と応えると、今度はせせら笑う感じの表情になった。

「それではとても関係者とは言えませんね。内縁関係として認められるにも短すぎます。性的虐待があったという疑いが強まれば刑事告訴もありますから、その時にはあなたも事情を聴かれるでしょう。それまで大人しく待っていてください」

刑事…告訴……!?。

それを耳にした瞬間、私は『怖い』とか『大変なことになる』とかじゃなくて、カーッとますます体の中が熱くなるのを感じた。

『上等よ…!、そんなことできるものならやってみなさい……!!。

そんなことで身柄拘束とかしたら、それこそ後で国家賠償請求を起こしてやる!!。児童相談所に対しても損害賠償請求をしてやる!!。

無辜の人間にあらぬ疑いを掛けたことを心底後悔させてやる……!!』

そんな考えが頭の中をぐるぐると駆け巡って、体が勝手にわなわなと震えてたのだった。

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