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一緒にお風呂に入りませんか?
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塚崎さんが帰って、買い物に出掛けただけで後は三人で過ごし、夕食を済ませ、玲那がお風呂に入り、沙奈子ちゃんの体を拭いてあげた後、私は彼に向かって言った。
「達さん、一緒にお風呂に入りませんか?」
以前、玲那にそう仕向けられた時にはさすがに恥ずかしかったけど、今回は私から言わせてもらう。
「あ、ああ…、分かった…」
彼が呆気に取られながらも了承してくれる。
「ごめんなさい、沙奈子ちゃんの前では少し言いにくいことだったから、二人きりで話したかったんです」
二人で膝を抱えて湯船に浸かりながら私は話し始めた。
「玲那のことです…」
さすがに気まずそうに視線を逸らしてた彼が、その言葉にハッとなって私を見る。
「彼女の様子がおかしいのは、達さんも気付いてますよね……」
そうだった。沙奈子ちゃんのことももちろん気になるけど、昨日から玲那の様子がおかしいことが、時間が経つほど私も気になってきてた。それは彼も感じてたらしくて何度も心配そうに玲那を見るのを感じてて、だから今の時点で私に分かることを話させてもらう為に、こうやって一緒にお風呂に入ったんだ。
言いにくいことだけど、彼には知っておいてもらいたかったから。
「…あれはたぶん、玲那も昔の状態に戻ってしまってるんだと思います…。
これは、私たちが出会った頃の話です。その頃の玲那は、今とは全然印象の違うコでした。無口で大人しくてぼうっとしてて、でも時々すごく怖い目で人を見る、正直言って印象の悪いコだったんです。
玲那がどうしてそうなったのかは、やっぱり私からは話せません。でもその後のことなら、私にも分かることがあります……」
そうして私は、玲那のことを彼に話した。
彼女と初めて会った頃の玲那は、どぶの中から外の世界を恨めしそうに睨み付けるような目をしてたこと。
同僚から疎まれ、面倒な仕事を押し付けられるようになっていったこと。
私はそれが嫌で、彼女を手伝うようになったこと。
それをきっかけに親しくなっていったこと。
そして、私を通じて香保理と出逢い、私がヤキモチを妬いてしまうほど二人が意気投合したこと。
香保理と出逢って、玲那がびっくりするくらい明るくなっていったことを、一気に彼に話した。
だけど、そこまで言った時、私は言葉に詰まってしまった。「ただ…」と、話を繋げる為に口にしたそれ以上、喉につかえるように言葉が出て行ってくれなかった。その代わり、涙がこぼれる。
『どうして…?。どうして私ってこうなの……?。すぐにカッとなるくせに泣いてばかりで……』
大事な話さえちゃんとできない自分に対する苛立ちが湧き上がってきて、体を引き裂いてやりたい衝動に駆られる。
でも、彼はそんな私のことも穏やかに受け入れてくれた。
「香保理さんの、事故…?」
彼の言葉が、喉につかえていた私の言葉を引き出してくれたのだった。
「達さん、一緒にお風呂に入りませんか?」
以前、玲那にそう仕向けられた時にはさすがに恥ずかしかったけど、今回は私から言わせてもらう。
「あ、ああ…、分かった…」
彼が呆気に取られながらも了承してくれる。
「ごめんなさい、沙奈子ちゃんの前では少し言いにくいことだったから、二人きりで話したかったんです」
二人で膝を抱えて湯船に浸かりながら私は話し始めた。
「玲那のことです…」
さすがに気まずそうに視線を逸らしてた彼が、その言葉にハッとなって私を見る。
「彼女の様子がおかしいのは、達さんも気付いてますよね……」
そうだった。沙奈子ちゃんのことももちろん気になるけど、昨日から玲那の様子がおかしいことが、時間が経つほど私も気になってきてた。それは彼も感じてたらしくて何度も心配そうに玲那を見るのを感じてて、だから今の時点で私に分かることを話させてもらう為に、こうやって一緒にお風呂に入ったんだ。
言いにくいことだけど、彼には知っておいてもらいたかったから。
「…あれはたぶん、玲那も昔の状態に戻ってしまってるんだと思います…。
これは、私たちが出会った頃の話です。その頃の玲那は、今とは全然印象の違うコでした。無口で大人しくてぼうっとしてて、でも時々すごく怖い目で人を見る、正直言って印象の悪いコだったんです。
玲那がどうしてそうなったのかは、やっぱり私からは話せません。でもその後のことなら、私にも分かることがあります……」
そうして私は、玲那のことを彼に話した。
彼女と初めて会った頃の玲那は、どぶの中から外の世界を恨めしそうに睨み付けるような目をしてたこと。
同僚から疎まれ、面倒な仕事を押し付けられるようになっていったこと。
私はそれが嫌で、彼女を手伝うようになったこと。
それをきっかけに親しくなっていったこと。
そして、私を通じて香保理と出逢い、私がヤキモチを妬いてしまうほど二人が意気投合したこと。
香保理と出逢って、玲那がびっくりするくらい明るくなっていったことを、一気に彼に話した。
だけど、そこまで言った時、私は言葉に詰まってしまった。「ただ…」と、話を繋げる為に口にしたそれ以上、喉につかえるように言葉が出て行ってくれなかった。その代わり、涙がこぼれる。
『どうして…?。どうして私ってこうなの……?。すぐにカッとなるくせに泣いてばかりで……』
大事な話さえちゃんとできない自分に対する苛立ちが湧き上がってきて、体を引き裂いてやりたい衝動に駆られる。
でも、彼はそんな私のことも穏やかに受け入れてくれた。
「香保理さんの、事故…?」
彼の言葉が、喉につかえていた私の言葉を引き出してくれたのだった。
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