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片付け
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翌日の日曜日。私は玲那の部屋に向かった。彼女は今日、友達と一緒に遊びに行くと言ってたから、その間に部屋を片付ける為だ。
インターホンを鳴らして「玲那、まだいる?」って声を掛けた。するとバタバタとした気配があって、ドアが開いた。
「おはよう、絵里奈!」
嬉しそうに笑いながらそう言ってくれる彼女に、私の顔も緩んでしまう。
さっそく部屋に上がると、中には女の子が一人いた。
「おはようございます」
と挨拶してくれたから私も「おはようございます」と返した。人懐っこそうな可愛い感じの女性だった。
彼女の名前は木咲美穂(きざきみほ)さん。玲那のアニメ友達で、確か旅館で仲居をしてるんだったかな。
「ちょうど出るところだったんだ。今日はみんなでカラオケだから、夕方には帰ってくると思うよ」
ブルゾンを羽織りながら玲那が言うと、木咲さんも立ち上がって身支度を始めた。
「分かった。お昼は食べてくるのね?。夕飯はどうするの?」
「多分食べないとは思うけど、おやつとかは食べまくるだろうから、あんまり食べられないかな。だから食べられたら軽く何か用意するし、今夜はこっちでいるよ」
「そう。じゃ、気を付けてね」
「行ってきます!」
木咲さんが先に出て、玲那がそれに続く形で部屋を出て行った。ホントに元気だなあ。もっとも、それが演技だということも私は知ってる。すっかり定着したから知らない人には分からないだろうけど、彼女のあの明るい振る舞いはすべてアニメとかのキャラクターの真似なんだよね。
「玲那……」
彼女が出て行ったドアを見詰めながら、私は彼女の名前を呟いてた。
とても儚げで、とても危うげで、でもとても強い、私の大切な人……。
早くあなたが幸せを掴んでくれることを、私は心から願ってる……。
そう思った瞬間、山下さんの姿が頭に浮かぶ。そして、山下さんの隣に私が立ってて、玲那と沙奈子ちゃんが子供みたいに遊んでるのを二人で見守ってる光景が見えた気がした。
ふわっと顔が熱くなるのが分かって、思わず両手で頬を押さえてしまう。
『それが玲那の望みなら……』
そう考えながら、私は部屋の中を見回した。でもその瞬間に、現実に引き戻されてしまう。相変わらずの汚部屋ぶり。前回片付けてからまだ二週間も経ってないのにこれだものなあ。
…だけど、それでいいと思った。家事をさぼってると思われただけで両親から殴る蹴るだった彼女の境遇を思うと、こうやって部屋を散らかしてもそんな目に遭わないっていうこと自体が彼女にとっては安心なんだもんね。
そして私は、彼女の部屋を片付け始めたのだった。
インターホンを鳴らして「玲那、まだいる?」って声を掛けた。するとバタバタとした気配があって、ドアが開いた。
「おはよう、絵里奈!」
嬉しそうに笑いながらそう言ってくれる彼女に、私の顔も緩んでしまう。
さっそく部屋に上がると、中には女の子が一人いた。
「おはようございます」
と挨拶してくれたから私も「おはようございます」と返した。人懐っこそうな可愛い感じの女性だった。
彼女の名前は木咲美穂(きざきみほ)さん。玲那のアニメ友達で、確か旅館で仲居をしてるんだったかな。
「ちょうど出るところだったんだ。今日はみんなでカラオケだから、夕方には帰ってくると思うよ」
ブルゾンを羽織りながら玲那が言うと、木咲さんも立ち上がって身支度を始めた。
「分かった。お昼は食べてくるのね?。夕飯はどうするの?」
「多分食べないとは思うけど、おやつとかは食べまくるだろうから、あんまり食べられないかな。だから食べられたら軽く何か用意するし、今夜はこっちでいるよ」
「そう。じゃ、気を付けてね」
「行ってきます!」
木咲さんが先に出て、玲那がそれに続く形で部屋を出て行った。ホントに元気だなあ。もっとも、それが演技だということも私は知ってる。すっかり定着したから知らない人には分からないだろうけど、彼女のあの明るい振る舞いはすべてアニメとかのキャラクターの真似なんだよね。
「玲那……」
彼女が出て行ったドアを見詰めながら、私は彼女の名前を呟いてた。
とても儚げで、とても危うげで、でもとても強い、私の大切な人……。
早くあなたが幸せを掴んでくれることを、私は心から願ってる……。
そう思った瞬間、山下さんの姿が頭に浮かぶ。そして、山下さんの隣に私が立ってて、玲那と沙奈子ちゃんが子供みたいに遊んでるのを二人で見守ってる光景が見えた気がした。
ふわっと顔が熱くなるのが分かって、思わず両手で頬を押さえてしまう。
『それが玲那の望みなら……』
そう考えながら、私は部屋の中を見回した。でもその瞬間に、現実に引き戻されてしまう。相変わらずの汚部屋ぶり。前回片付けてからまだ二週間も経ってないのにこれだものなあ。
…だけど、それでいいと思った。家事をさぼってると思われただけで両親から殴る蹴るだった彼女の境遇を思うと、こうやって部屋を散らかしてもそんな目に遭わないっていうこと自体が彼女にとっては安心なんだもんね。
そして私は、彼女の部屋を片付け始めたのだった。
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