メルシュ博士のマッドな情熱

京衛武百十

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フィーナQ3-Ver.2002

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コラリスについてはCLS患者による妊娠という非常に重要な実験の為、経過観察中は一切手を触れないことにした。

なので、上空に待機している<アリスマリアの閃き号>で待機していたレイバーギアを新たに起動させ、積み込んでいた資材を軟着陸コンテナに移し、さらにもう一人の助手としてメイトギアを同梱させて地上へと降下させた。

こちらから取りに上がろうとすると、リヴィアターネから脱出しようとする者を容赦なく迎撃する攻撃衛星によって撃墜される可能性があったので、一方的に下すしかなかったのである。もっともそれは十分に想定していたので、<アリスマリアの閃き号>の中にはまだ多くの資材と数十機を数えるレイバーギア、メイトギアが保管されていたのだが。

しかし博士自身は、いずれ地上だけですべてを賄えるようにと考えていた。その為の新たな助手が必要だったのである。

研究棟から百メートルほど離れたところに着陸したコンテナが自動で開き、中から一体のメイトギアが現れた。さらりとした長い銀髪を頭の左右でまとめた、涼しげな眼元が印象的な美女のメイトギアだった。名前はフィーナQ3-Ver.2002。百年ほど前に発売され人気を博したフィーナQ3-Ver.1911の後継機である。そしてそれは、要人を警護する為に、要人の盾となる為に、非常に高い戦闘力と高い防弾性能を持ったロボットでもあった。

今後のことを考えると、生身の人間やCLS患者相手なら十分な力も持つが実際には戦闘力らしい戦闘力は持たないリリアテレサ(リリアJS605s)では心許ないので、護衛も兼ねた新たな助手として降下させたという訳だ。

なぜ、人間はおらずロボットにとっては脅威にならないCLS患者しかいないのに護衛が必要なのかと言うと、CLS患者は人間ばかりとは限らないからである。何しろ偽生症(Counterfeit Life Syndrome)=CLSは、カラス以上の脳を持つ動物なら何でも感染、発症し、動き回るようになる。その所為か、ここリヴィアターネには本来、CLSが沈静化していた間に大型化した思われる犬猫程度の大きさの動物までしかいなかったのだが、そこに人間が家畜や愛玩動物として大型の動物を多数持ち込んでいたのだった。だからそれらの動物も当然、CLSに感染し、このリヴィアターネの地上を闊歩している状態だった。

とは言え、力は強いが動きは緩慢なそれらがどの程度危険かと言われればいささか疑問に感じる向きもあるだろう。しかし食用の牛やバイソンなどは群れる習性もあるのでそれがある程度の数で群れると決して小さくない驚異にはなる。そして何より、現在、そんなCLS患者や患畜の天敵とも呼ぶべき存在が現在のリヴィアターネにはいるのだった。

それはロボットである。爆撃を免れて生き延びたCLS患者や患畜を<処置>する為のロボットが、多数配置されているのであった。 

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