JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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夏休みの章

人間性の欠落による論理の飛躍

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「あ~、なんか、ますます腹立ってきた。もういいやメンドクサイ。電気作れないようにしたらナイターなんかできないよね。今は原発で電気作ってるんだっけ。じゃあ原発潰せばいいよね」

凄まじい論理の飛躍だった。もはや途中が何もない。段階を踏む気もない。ナイターさえなくなれば後はどうなろうと知ったことじゃないという理屈だった。

いや、もしかするとナイターのことすらもう重要じゃなくなっているのかもしれない。人間が何をしているのかということを、石脇佑香いしわきゆうかは考えてしまったのだ。自分を苦しめ、下らない諍いばかり起こしてネットを荒らし、イジメを行い、犯罪を起こし、テロを起こし、戦争をし、憎しみ合ってばかりの人間とか、別にいなくなってもいいよねっていう風に思ってしまっていたのだ。

今の自分になって、例の<ネット弁慶>を追い詰めたように自らもネットを荒らしておきながらそれは棚に上げて。まあ、その時点では彼女は既に人間ではなかったのだが。

「原発を派手にドカーンとやっちゃうかあ! そしたら人類終了のお知らせになるよね~」

まるっきり幼い子供が癇癪を起し玩具を壊すように、石脇佑香は破滅を願った。一気に片を付ける為に同時多発的に原子炉を暴走させ爆発させてしまおうと考えたのだ。そうすれば電気も止まってナイターどころではないし高線量の放射性物質が大量に放出されれば人間もお終いだ。その程度の理解での発想である。

厳密には、原子炉で使われる核燃料程度では核爆弾のような爆発を起こすことは理論上有り得ないとされている筈なのだが、石脇佑香には核爆弾と原子炉の違いを理解する知識がなかったのだ。せめてネット上の情報だけでも考察すれば分かりそうなものなのだが、科学に疎い中学生の彼女には、その情報そのものを理解できる素養がなかったのだった。

とは言え、核爆弾にはならずとも原子炉が破壊されれば高線量の放射性物質が大量に拡散されることには変わりなく、しかもチェルノブイリ等の事故を上回る規模の惨事が世界各地で同時多発的に発生すれば、その影響はさすがに計り知れないだろう。人類滅亡とまでは言わないにしても、およそ未曽有の大惨事となることは疑う余地もない。

しかもその事故の後に起こるであろう社会的な恐慌も含めれば、それこそ数億の人命が失われるような事態にもなりかねない。それどころか、事故後の対処を誤ればそれこそ本当に人類滅亡というシナリオも絶対にないとは言い切れなくなる。それほどのことを、彼女は実行しようとしているのだ。そしてその手始めとして、ネット上に自分のコピーをばらまくことを更に加速させたのだった。そうすることであらゆるところで同時に事を運ぶことができるようになるからだ。

石脇佑香による人類滅亡へのカウントダウンが、こうして始まってしまったのだった。

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