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日守こよみの章
石脇佑香の悪戯
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時間は戻って黄三縞亜蓮が菱川和に刺される前日、私が菱川和の家庭の修羅場に飽きて寝てしまったその後も、案の定、石脇佑香はその修羅場を覗き見ていた。
しかもそれを実況していたのだ。それだけではない。自分が実況していた様子を、メールで菱川和に送りつけたりしていたのである。更には、菱川和と女房がお互いに疲れて黙ってしまうと、女房のPCに自分の姿を浮かび上がらせ、愚かな中年夫婦の無様な姿を嘲笑して見せたのだった。
ただしそれは一瞬のことで、菱川和が気付いた途端に画面を消した為に、菱川和にはそれが現実だったのかそうでないのかが掴めなかった。だがその後も、石脇佑香は、菱川和がちらりとPCに視線を向ける毎に一瞬だけ自分の姿を浮かび上がらせるという悪ふざけを続けた。
『な…何だよこれ…?』
自分が視線を向ける度にちらちらとPCの画面に浮かび上がる見知らぬ少女の姿に、菱川和は混乱した。しかもその少女は明らかに嘲るような笑みを受けべている。さすがに何者かによる意図的な行為であることに菱川和も気付いた。
「お前、さっきから何だそのパソコン、何の嫌がらせだ?」
菱川和の疑いはまず女房に向けられた。女房が、自分に対する嫌がらせとして何か仕掛けをしたのだと思ったのだ。
「はあ? あんた何言ってんの?」
何の心当たりもない女房は当然そういう反応になる。それがまた菱川和の癇に障ったらしく、
「ふざけんな! お前の嫌がらせだろう!?」
と声を荒げた。しかし女房の方も全く意味も分からず罵られたことに頭に血が上り、また罵り合いが始まるのだった。その様子を見ながらケラケラ笑う石脇佑香は、自分がメールを送ったスマホの方に意識を向けさせる為、着信メロディーを流させた。電話を掛けた訳ではない。ただ着信メロディーを流させただけだ。
さすがに女房との罵り合いを止めて自分のスマホを手に取る菱川和だったが、当然、着信はない。にも拘らず着信メロディーだけが流れたのだ。トリックが分かればどうということもない悪戯でも、女房との喧嘩で冷静さを欠いた上、奇妙な現象が相次いだことに菱川和の思考は著しく乱されていた。
そこへ、石脇佑香が今度はスマホの画面に自分を映し出したのだった。
「うわっ!?」
跳び上がりそうなほどに驚きながら、菱川和は自分のスマホをテーブルの上に放り出してしまった。幸い壊れはしなかったが、少女の姿が消える。石脇佑香がアプリを終了させたのだ。待ち受け画面に戻ったそれを、菱川和が凝視する。
『あ…有り得ねえ…』
単なる女房による嫌がらせだと思っていた少女の姿が、女房には触らせてもいない自分のスマホに映し出されたことで、菱川和はそれが女房の仕業でないのを理解してしまった。
「何やってんのあんた?」
ひどく汗をかき、動悸も激しそうな様子でスマホを呆然と見ている亭主の姿に、女房は心底呆れたように訊いてくる。しかしその声はこの時の菱川和の耳には届いていなかった。
女房はその様子をおかしいと思ったが、何か病気ならそのまま放っておいて手遅れになればいいと考えて敢えて無視することにした。
「私はもう寝るからね」
吐き捨てるようにそう言いながら、泣き疲れて眠ってしまっていた子供のいる布団に面倒臭そうに横になる。既にそんな女房のことは意識の彼方へ追いやってしまっていた菱川和は、恐る恐る自分のスマホを手に取った。そしてメールが届いてることに気付き、震える手で操作し確認する。それは、知らないアドレスからの、題名すらないURLだけが記されたメールだった。さすがに菱川和自身はそんな怪しいメールをすぐに開くほどウブではなかったが、スマホに侵入していた石脇佑香がそれを開く。
「!?」
自分が何も操作していないのに勝手にページが開かれ、菱川和の体がビクッと反応する。そして自分と女房の画像と共にそれを面白おかしく実況されたそれが表示された。
「……!?」
菱川和はもう、声もなかった。画像を見て角度的に女房のノートPCのカメラのそれだと気付き、慌てて開かれたままのそれを閉じる。やはり女房の仕業かとも思ったが、自分だけでなく女房のことも徹底的に笑いものにするその内容に、女房ではない第三者の仕業だということにようやく気付いたのだった。
『遠隔操作、ってやつか……!?」
そこでついに、これは怪奇現象などではなく、何者かが女房のノートPCや自分のスマホを何らかの方法で勝手に操作しているのだと思い至ったのだ。
『くそっ! どこのどいつだよ…!』
スマホの電源を切り、吹き出た汗を拭う。にも拘らず、女房がケチってエアコンの温度を高めに設定しているからいつもは暑いぐらいの部屋がやけに寒く感じられた。怪奇現象の類ではないと思っても、得体の知れない何者かに部屋を覗かれていたという事実は変わらない。それはやはり寒気を感じる話だった。
だが、そうやって自分を納得させようとしていた菱川和の目に、信じられないものが映っていた。電源を切った筈のスマホが起動していたのだ。それに気付いてギョッとなるが、テーブルに置く際にうっかり電源ボタンを押してしまったのだろうと自分に言い聞かせ、再度電源を切った。
それを、ボタンに触れないように慎重にテーブルに置く。自分はボタンには一切触れていない。にも拘らずまた勝手に起動を始めたのである。
電子機器の類に精通しているとまでは言い難くても、普通のウイルスやスパイウェアの類でここまでのことはできないと知っていた菱川和の背筋を冷たいものが走り抜けた。さすがにこれはおかしいと思い始める。
起動したスマホを再び慎重に手にして、画面に触れた。それ自体は特に何か変わった様子もない。だがその時、あの少女の姿が映し出された。しかも今度は音声付きで。
「キャハハハハハハハハハハハハ!」
壊れた玩具の様な、人間離れした甲高い声で笑う見知らぬ少女の姿に、菱川和は生まれて初めてと言ってもいい恐怖を感じた。さらに、テレビの電源が勝手に入り、そこにも同じ少女の姿が映し出された。
ネットワークを掌握しただけでは飽き足らず、電気や電波というものまで操り出した石脇佑香のトリックを知る私から見れば幼稚な悪戯だが、そこまでのことを知らぬ菱川和にとってはいよいよ怪奇現象と言えただろう。
軽く錯乱状態になった菱川和がスマホをテレビに向かって思い切り投げつけた。ガキャッっという感じの異様な音と共にテレビの画面が割れ、少女の姿は見えなくなった。同時にスマホの画面も割れ、電源が落ちる。
「あんた! 何やってんの!?」
あまりの異様な物音に眠りに入りかけていた女房も目を覚まし、目も当てられない惨状に声を上げる。すると今度は、オーディオの電源が勝手に入り、スピーカーからまたあの笑い声が聞こえ始めた。
それだけではない。音声アナウンス機能を持ち、スピーカーを備えた家電全てから、笑い声が聞こえ始めたのだった。
「キャハハハハハハハハハハハハ!」
「キャハハハハハハハハハハハハ!」
「キャハハハハハハハハハハハハ!」
その耳につく、神経に障る、狂気を誘う笑い声に包まれ、菱川和の精神はついに破綻した。テーブルの上にあった鋳鉄製の重い灰皿を手に取り、笑い声を発している機器を、獣のような声を上げながら片っ端から破壊し始める。
そんな亭主の狂乱ぶりに女房も冷静さを失い、「やめてぇーっ!!」っと叫びながら菱川和に掴みかかった。すると菱川和が狂気に満ちた目で振り返り、女房の頭目掛けて灰皿を振り下ろしたのであった。
しかもそれを実況していたのだ。それだけではない。自分が実況していた様子を、メールで菱川和に送りつけたりしていたのである。更には、菱川和と女房がお互いに疲れて黙ってしまうと、女房のPCに自分の姿を浮かび上がらせ、愚かな中年夫婦の無様な姿を嘲笑して見せたのだった。
ただしそれは一瞬のことで、菱川和が気付いた途端に画面を消した為に、菱川和にはそれが現実だったのかそうでないのかが掴めなかった。だがその後も、石脇佑香は、菱川和がちらりとPCに視線を向ける毎に一瞬だけ自分の姿を浮かび上がらせるという悪ふざけを続けた。
『な…何だよこれ…?』
自分が視線を向ける度にちらちらとPCの画面に浮かび上がる見知らぬ少女の姿に、菱川和は混乱した。しかもその少女は明らかに嘲るような笑みを受けべている。さすがに何者かによる意図的な行為であることに菱川和も気付いた。
「お前、さっきから何だそのパソコン、何の嫌がらせだ?」
菱川和の疑いはまず女房に向けられた。女房が、自分に対する嫌がらせとして何か仕掛けをしたのだと思ったのだ。
「はあ? あんた何言ってんの?」
何の心当たりもない女房は当然そういう反応になる。それがまた菱川和の癇に障ったらしく、
「ふざけんな! お前の嫌がらせだろう!?」
と声を荒げた。しかし女房の方も全く意味も分からず罵られたことに頭に血が上り、また罵り合いが始まるのだった。その様子を見ながらケラケラ笑う石脇佑香は、自分がメールを送ったスマホの方に意識を向けさせる為、着信メロディーを流させた。電話を掛けた訳ではない。ただ着信メロディーを流させただけだ。
さすがに女房との罵り合いを止めて自分のスマホを手に取る菱川和だったが、当然、着信はない。にも拘らず着信メロディーだけが流れたのだ。トリックが分かればどうということもない悪戯でも、女房との喧嘩で冷静さを欠いた上、奇妙な現象が相次いだことに菱川和の思考は著しく乱されていた。
そこへ、石脇佑香が今度はスマホの画面に自分を映し出したのだった。
「うわっ!?」
跳び上がりそうなほどに驚きながら、菱川和は自分のスマホをテーブルの上に放り出してしまった。幸い壊れはしなかったが、少女の姿が消える。石脇佑香がアプリを終了させたのだ。待ち受け画面に戻ったそれを、菱川和が凝視する。
『あ…有り得ねえ…』
単なる女房による嫌がらせだと思っていた少女の姿が、女房には触らせてもいない自分のスマホに映し出されたことで、菱川和はそれが女房の仕業でないのを理解してしまった。
「何やってんのあんた?」
ひどく汗をかき、動悸も激しそうな様子でスマホを呆然と見ている亭主の姿に、女房は心底呆れたように訊いてくる。しかしその声はこの時の菱川和の耳には届いていなかった。
女房はその様子をおかしいと思ったが、何か病気ならそのまま放っておいて手遅れになればいいと考えて敢えて無視することにした。
「私はもう寝るからね」
吐き捨てるようにそう言いながら、泣き疲れて眠ってしまっていた子供のいる布団に面倒臭そうに横になる。既にそんな女房のことは意識の彼方へ追いやってしまっていた菱川和は、恐る恐る自分のスマホを手に取った。そしてメールが届いてることに気付き、震える手で操作し確認する。それは、知らないアドレスからの、題名すらないURLだけが記されたメールだった。さすがに菱川和自身はそんな怪しいメールをすぐに開くほどウブではなかったが、スマホに侵入していた石脇佑香がそれを開く。
「!?」
自分が何も操作していないのに勝手にページが開かれ、菱川和の体がビクッと反応する。そして自分と女房の画像と共にそれを面白おかしく実況されたそれが表示された。
「……!?」
菱川和はもう、声もなかった。画像を見て角度的に女房のノートPCのカメラのそれだと気付き、慌てて開かれたままのそれを閉じる。やはり女房の仕業かとも思ったが、自分だけでなく女房のことも徹底的に笑いものにするその内容に、女房ではない第三者の仕業だということにようやく気付いたのだった。
『遠隔操作、ってやつか……!?」
そこでついに、これは怪奇現象などではなく、何者かが女房のノートPCや自分のスマホを何らかの方法で勝手に操作しているのだと思い至ったのだ。
『くそっ! どこのどいつだよ…!』
スマホの電源を切り、吹き出た汗を拭う。にも拘らず、女房がケチってエアコンの温度を高めに設定しているからいつもは暑いぐらいの部屋がやけに寒く感じられた。怪奇現象の類ではないと思っても、得体の知れない何者かに部屋を覗かれていたという事実は変わらない。それはやはり寒気を感じる話だった。
だが、そうやって自分を納得させようとしていた菱川和の目に、信じられないものが映っていた。電源を切った筈のスマホが起動していたのだ。それに気付いてギョッとなるが、テーブルに置く際にうっかり電源ボタンを押してしまったのだろうと自分に言い聞かせ、再度電源を切った。
それを、ボタンに触れないように慎重にテーブルに置く。自分はボタンには一切触れていない。にも拘らずまた勝手に起動を始めたのである。
電子機器の類に精通しているとまでは言い難くても、普通のウイルスやスパイウェアの類でここまでのことはできないと知っていた菱川和の背筋を冷たいものが走り抜けた。さすがにこれはおかしいと思い始める。
起動したスマホを再び慎重に手にして、画面に触れた。それ自体は特に何か変わった様子もない。だがその時、あの少女の姿が映し出された。しかも今度は音声付きで。
「キャハハハハハハハハハハハハ!」
壊れた玩具の様な、人間離れした甲高い声で笑う見知らぬ少女の姿に、菱川和は生まれて初めてと言ってもいい恐怖を感じた。さらに、テレビの電源が勝手に入り、そこにも同じ少女の姿が映し出された。
ネットワークを掌握しただけでは飽き足らず、電気や電波というものまで操り出した石脇佑香のトリックを知る私から見れば幼稚な悪戯だが、そこまでのことを知らぬ菱川和にとってはいよいよ怪奇現象と言えただろう。
軽く錯乱状態になった菱川和がスマホをテレビに向かって思い切り投げつけた。ガキャッっという感じの異様な音と共にテレビの画面が割れ、少女の姿は見えなくなった。同時にスマホの画面も割れ、電源が落ちる。
「あんた! 何やってんの!?」
あまりの異様な物音に眠りに入りかけていた女房も目を覚まし、目も当てられない惨状に声を上げる。すると今度は、オーディオの電源が勝手に入り、スピーカーからまたあの笑い声が聞こえ始めた。
それだけではない。音声アナウンス機能を持ち、スピーカーを備えた家電全てから、笑い声が聞こえ始めたのだった。
「キャハハハハハハハハハハハハ!」
「キャハハハハハハハハハハハハ!」
「キャハハハハハハハハハハハハ!」
その耳につく、神経に障る、狂気を誘う笑い声に包まれ、菱川和の精神はついに破綻した。テーブルの上にあった鋳鉄製の重い灰皿を手に取り、笑い声を発している機器を、獣のような声を上げながら片っ端から破壊し始める。
そんな亭主の狂乱ぶりに女房も冷静さを失い、「やめてぇーっ!!」っと叫びながら菱川和に掴みかかった。すると菱川和が狂気に満ちた目で振り返り、女房の頭目掛けて灰皿を振り下ろしたのであった。
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