JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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怨嗟の章

諫めてくれた

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アリーネは単独で、錬治とみほちゃんと綾乃とエレーンは四人一緒に移動して、怪物退治に出掛ける。四時間後にまた集合ということにしていた。

ただし、みほちゃんとエレーンにはなるべくに現場を見せないように心掛ける。綾乃はある程度は錬治の体のことも気遣い、直接は見ないようにしつつも傍にいてくれた。

彼が辛そうにしたら水を差しだし、時には体を支えてもくれる。彼女にとっては男性である錬治に触れるのは望まないことだろうに。

「ごめん……気持ち悪いよね」

錬治がついそんな風に言ってしまったら、

「ただの介護ですよ。私の嗜好とか関係ありません」

と、少し憮然とした顔で言う。だけど気遣ってくれてるのは分かる。

だから自分に触れた彼女の手のあたたかさに、

「ありがとう……人生の最後でこんな風に他人に優しくしてもらえるとか思わなかった……人間って、意外にあたたかいんだな……」

なんて本音も漏れてしまう。

だけどそんな彼に彼女は、

「何言ってるんですか。あなたの癌を治すことはクォ=ヨ=ムイが提示した条件でしょう? だったらそれを守らせてあなたは癌を治すんです。治るチャンスがあるなら活かすべきです。人生の最後とか、簡単に諦めないでください……!」

って発破をかけてくれる。

『本当にいい子だな……』

異性として綾乃を意識するとかじゃなく、なんだか娘とか姪っ子とかが立派に育ったのを見てるみたいな気分にもなった。

ところでこの間、クォ=ヨ=ムイが何をしてたかと言うと、錬治達とは少し離れたところでやっぱりニヤニヤしながらただ様子を見てるだけだった。

しかも、アリーネのところにも同時に現れてるらしい。複数のところに同時に現れる。クォ=ヨ=ムイが人間じゃないということを改めて実感させられる事実だ。

『だけど、ちょっかいを掛けてこないならそれでいいか……』

そんなことを思いつつも、十体の怪物を倒したところで、いよいよ体が辛くなってきて立ってることもままならなくなってきた。

「くそう…もう少し頑張りたいんだけど……」

思わず悔しそうに呟く彼に、綾乃は、

「無理は禁物です。まだ先は長いんですから…!」

と諫めてくれた。

錬治は思う。

『こんな風に言われるのが嬉しいと感じられるなんて、なんだか不思議だな……今までは他人にあれこれ言われるのなんて、不快でしかなかったのに……

そうか…彼女が本気で僕を案じてくれてるのが分かるからか。それが例え、叔父とかに対する気持ちと同じものでしかなくても……』

それすら縁遠かった彼にとっては沁みるくらいにあたたかった。

綾乃に支えられつつ、錬治は休む為にあの公園に戻る。

アリーネはまだ戻ってない。

その間に、綾乃が食事の用意をしてくれたのだった。

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