JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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怨嗟の章

再出発

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『まったく……

こんなとんでもない状況だってのに、こうやってウダウダ考える余裕があるっていうのがすごく変だ。意味が分からない。でも、そもそも本来は有り得ないことが起こってるんだから、それに意味を見出そうとしても無駄なのかな……』

夢とも現実ともつかないまどろみの中で、錬治はそんなことを考えていた。

「ふう……」

取り敢えずうとうととだけど少しは寝られていくらか体が楽になった気がする。

「…じゃあ、行こうか」

そう言って立ち上がる彼を、綾乃だけじゃなく、エレーンも、そしてアリーネまでもがどこか辛そうな表情で見る。みほちゃんだけはまだよく分かってないみたいだけど、でも錬治の傍にはいようとしてくれる。

その一方で、クォ=ヨ=ムイは姿を現さなかった。

『…まあ、それはむしろその方がありがたい。彼女に振り回されるのは正直ごめんだ……』

意識を集中し、頭の中に思い浮かべられた場所へ『移動する』と考える。するとその瞬間、画面が切り替わるように周囲の景色が変わる。

「ここは…?」

綾乃が呟くと、

「中国……いや、香港デスか」

とアリーネが応える。確かに錬治もテレビとかで見た景色だと思った。

『ジャッキー・チェンとかが街中を走りまわってた時に見たのと同じ気がする……』

乱雑としたその人混みの中に、怪物はいた。エレーンがシェリーとみほちゃんの注意を引いてくれてる間に、それを片付ける。

今回はどうやらギリギリ間にあったみたいだ。怪物の触手は、そこにいた人達の首には辛うじて届いていなかった。

より状況が深刻なところから順番に対処していって、ようやく追いついたってところか。

『なら、ここから先は少しは気が楽になるか……』

さらに、若い女性もそこにいたのに、クォ=ヨ=ムイがいないことで動き出すこともなかった。

それについてもホッとする。

『これ以上増えるのはごめんだ……』

いろいろ最初はぎくしゃくもしたけど、アリーネも今では割と大人しくしてくれてる。せっかく微妙なバランスかもしれなくても落ち着いてるところに新しい人が加わってまた波風立つのは避けたいと錬治は思った。精神的に辛い。

そういうことにもホッとしつつ、次へと移動する。今度は日本のどこかだった。お城が見える。

「…けど、どこだろう……?』

するとみほちゃんが言った。

「あ、わかやまじょうだ!」

「って、え? 知ってるの?」

思わず問い掛けた彼に、

「おとうさんのほうのおじいちゃんとおばあちゃんのおうちあるんだよ。おしろからむこうにいったところに」

と彼女が指差したのは、太陽の位置から考えると東の方だった。

『そうか。父方のお祖父ちゃんやお祖母ちゃんが住んでるんだな。それで遊びに来たことがあるとかか……』

怪物は、お城が見える歩道を歩く団体客らしい人達のところにいた。だから彼は、早々に片付ける。幸い、間に合ったようだった。

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