JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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怨嗟の章

解放

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『まともに座っていることさえできないくらい辛いのに、多少なりとも栄養を取って睡眠をとると、いくらかでも楽になるもんだな……

でも、以前に思ったけど、これは回復とか言えるものじゃないのかもしれない。さっさと楽になれればこんなに苦しまずに済むのにっていう、『まだ楽になれないのか』っていう絶望でもある気がする……

安楽死を望む人がいるっていうのも分かる気がするよ……

ここまでくると一刻も早くこの苦痛から解放されたいっていう欲求の方が上に来るのかな……

どうせクォ=ヨ=ムイのことも信じられないし、いっそこのままアリーネさんに任せて僕はもう、最後の時を静かに待てばいいんじゃないか……』

そんなことも考えてしまう。

『何も分からずに突然死ぬのも辛いけど、それはあくまで周囲の人間にとっての話だな……

怪物に襲われて亡くなった人は…いや…厳密に言えば今の時点ではまだ生きてるのかもしれないけど、でも今回のことが終わる時点では亡くなるんだろうし、きっと本人は自分が死んだことにさえ気付かずに亡くなるんだろうな……

そうなんだ……

死んだ当人は死んでるんだからそういうのもまったく分からないし関係ない気がする。こうやって徐々に死んでいくっていうのは、周囲は覚悟もできるかもしれなくても、逆に本人は辛いな……

そうは言っても、どっちが良いとか悪いとかじゃなくて、どっちも辛いんだろうけどさ……

たぶん、『誰が辛い』っていう部分じゃ違っててもね……

人が死ぬっていうのはそういうことなんだろうな……』

朦朧とした頭でぼんやりと考えながら、アリーネに車椅子を押してもらって、錬治は怪物退治を続ける。

車椅子のままですぐ傍まで行って、手で掃うという形で。

そうしてもらうと、さすがに、自分の脚で歩くよりはずっとマシになった。座ってるだけでも辛いけど、それでも歩くよりはって感じだった。

『こんな事ならもっと早くこうしてればよかった……』

とも思う。しかしすぐに、

『…いや、それは<甘え>だ……

そうやって自分の行為を正当化するのは駄目なんだ……

もちろん、ちゃんとあらかじめその為に用意されたものを利用するのはいいと思う。だけど、それがなくても他にやりようがあるうちから盗んだりっていうのはやっぱり甘えだよ……

犯罪者っていうのはその殆どが、『このくらいならいい』『このくらいなら見逃してもらえる』『このくらいなら許してもらえる』っていう考えでやってる筈だから……

万引きする奴だって、飲酒運転する奴だって、イジメする奴だって、人を殴る奴だって、それどころかきっと人を殺す奴だって、『〇〇だから自分は許してもらえる』って思ってるんだろうなって、自分がこうなってすごく分かるようになった気がする……

結局は甘えてるんだ。自分では些細なことと思ってる甘えが最終的にはそんなことになってしまうんだ……

だからきっと、限度はあるにしても、苦しい時にこそ自分に厳しくなくちゃいけないんだろうな……』

そんな風にも思うのだった。

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