JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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最終章

夜凶鳥

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前線でジャガイモの毒に当たった上に合併症で死んだドイツ軍人のエイドリアン・メルケルも、戦場で活躍できなかったのを取り返そうとするかのように励んでいるし、殺人犯に殺されたブリギッテ・シェーンベルクに至ってはもはや、「死ね…」「殺す…」等の呪いの言葉にしゅを乗せて吐き出し、化生共を腐り果てさせているだけでそれ以外口にしていない。

十一歳の連続殺人鬼、コンスタンティア・エリントンは、まあ実に楽しそうに遊んでいて結構だ。それとは対照的に、リーネは麦の刈り入れでもするかのように無表情に淡々と刈り取っているが。

こうして見ると、私もいろんな人間だったんだなとつくづく思う。直近だから呼び出しただけに等しい藤波沙代里と市野正一はまあ別にしても、ロクでもない人生だったのが多いなと改めて感じるよ。これでもあくまで恨みが強いとか攻撃性が高いとかいう理由で選んだだけだから、実はもっと悲惨な人生を送った私も多数いるのだ。だが、悪くない。人間とはこういうものなのだ。愚かで近視眼的で卑屈で不様で、それ故に面白い。

数キロ離れたところからこちらを窺っている人間共も、同じだ。

そんなことを考えていると、またHEAT弾が飛んできた。直撃となるとナハトムの防御力では持ち堪えられん可能性があるので、結界を張ってまとめて拒絶する。化生共も守ってしまうことになるがこれはまあ仕方がない。

ガーン、ガガーンと結界の外で爆発が起こる。結界はあくまで一部分で、戦車砲だけを防いでいる。ガンシップからのガトリング砲なら凌げるからな。が、弾薬が尽きたのか離脱していくのが見えた。化生共の数も半数以下になっている。と思うと次のガンシップが来た。徹底的にやるつもりということか。

だがその時、ガンシップが来たのとは反対方向から空を覆いつくす程の黒い影が来るのが見えた。<夜凶鳥>ホゥブルネェフだ。一匹一匹はそれほど大した奴じゃないが、それが数千から数万、場合によっては数十万の大群になって押し寄せ、あらゆるものを食いつくす、厄介極まりない奴である。まさかこんなものまで顕現していたとは、これはいささかマズいぞ。奴らが人間の町を襲えば数時間で十万人単位の人間が食いつくされる。

ホゥブルネェフ共はまず、新しく来たガンシップに狙いを定めたようだった。夜空にガトリング砲の火花が走るが、いかんせん数が多すぎる。見る間に覆いつくされ、機体がバランスを失って降下を始めるのが見えた。数が多いだけで力そのものは知れてるホゥブルネェフ共ではガンシップの装甲は破れないとしても、大量のそれらを巻き込んだことでプロペラが破損したか、エンジンに吸い込んで故障したものと思われた。

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