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最終章
外伝・壱拾陸 JSDF、深淵と対峙する
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海上自衛隊のイージス艦<れいわ>が謎の<未確認飛行物体>と遭遇していたちょうどその頃、陸上自衛隊第19旅団所属のCH-47JAは、訓練飛行からの帰還中に、こちらも<未確認飛行物体>と遭遇していた。
第19旅団は、陸上自衛隊における慢性的な機動力不足を解消するために新たに創設された純粋なヘリボーン部隊であり、自衛隊すべての部隊の中で、ヘリとそれに関係するものについては質・量ともに最も充実した装備を誇る部隊だった。
しかし新しい部隊であるだけに熟練度の早急な底上げを求められており、緊張する情勢とも相まって連日のように訓練が行われていたのである。その中での異様な事態だった。
「右後方ぴったり五百メートルを維持して当機を追尾しています。あれはいったい、何でしょう…?」
「何でしょうと訊かれても、俺にも皆目見当も付かんが、少なくとも悪戯にしちゃ度が過ぎてると言わざるをえないな」
「まさかどこかの国の新兵器とか……?」
「やめてくれ! 縁起でもない。それでなくても最近、いろいろと面倒なことになってんだ。俺はそういうのには関わりたくないんだよ」
「あんたなんで自衛官やってんですか?」
CH-47JAの機内で、椛島陸士長、戸栗二等陸尉、阿達二等陸曹、杜持二等陸曹、本間三等陸曹が、<未確認飛行物体>について言葉を交わしていた。
しかし、無数の目玉と腕を生やした『気持ち悪い』それに、考えがまとまらない。
最初は、気球を基にした悪趣味なオブジェかとも思ったが、時速百キロ以上で飛行中のCH-47JAに、風向きも無視して追いすがれる気球などおよそ考えられないし、飛行船なら時速百キロ以上で飛行できるものもあるものの、それだけの性能を有した飛行船となればそれなりに知られたもののはずだった。
が、現在、確認できるそれはいかなる記録とも合致しない。
しかも、航空法に基づいて出されている飛行計画には、自衛隊・民間問わずこのルートを飛行している航空機やそれに類するものはないことになっている。
「いずれにせよ、このまま基地にあれをつれて帰るわけにもいかないよな……」
戸栗二等陸尉が神妙な面持ちでそう口にすると、
「ですが、攻撃するわけには……」
椛島陸士長が苦々しく応える。何しろ、その未確認飛行物体は、カメラにもレーダーにも捉えられない、人間の目にしか見えていないものであり、司令部の方では判断できないため、現在、対応を協議中とのことだった。
と言うか、おそらく信じていないのだろう。あまりに真剣に報告してくるので無下に扱うこともできないからと、情報を集めようとしてくれてはいるようだ。
が、存在を確認できない以上はやはり手の打ちようがない。
「何でこうはっきりと見えてるものが確認できないんですか? おかしいでしょ!」
阿達二等陸曹が苛立った様子で口にしたその時、
「おい! 見ろ!!」
戸栗二等陸尉が声を上げる。
「!?」
それを受けて視線を向けたその先で、<未確認飛行物体>が、突然、穴の開いた気球のように揺らめき、煙が拡散するように掻き消えてしまったのだった。
「なんだ…!? 何が起こった……!?」
戸栗二等陸尉のその問いに答えられる者は誰もいなかったのだった。
とまあ、こちらは種を明かせば、異変を察した月城こよみが、時速五百キロを超える速度で突貫したことで撃破されただけだがな。
あと、海自の件については、私の<影>がミサイルを誘導したというのが種明かしではある。
ノボォエ=ノヌゥルオイグッェスは、力そのものは大したことのない化生だが、ハリハ=ンシュフレフアが偵察のために放つやつでありしかもそう距離もおかないんだ。
つまり、ハリハ=ンシュフレフア自身がもう間近まで迫ってきているという証拠でもある。
第19旅団は、陸上自衛隊における慢性的な機動力不足を解消するために新たに創設された純粋なヘリボーン部隊であり、自衛隊すべての部隊の中で、ヘリとそれに関係するものについては質・量ともに最も充実した装備を誇る部隊だった。
しかし新しい部隊であるだけに熟練度の早急な底上げを求められており、緊張する情勢とも相まって連日のように訓練が行われていたのである。その中での異様な事態だった。
「右後方ぴったり五百メートルを維持して当機を追尾しています。あれはいったい、何でしょう…?」
「何でしょうと訊かれても、俺にも皆目見当も付かんが、少なくとも悪戯にしちゃ度が過ぎてると言わざるをえないな」
「まさかどこかの国の新兵器とか……?」
「やめてくれ! 縁起でもない。それでなくても最近、いろいろと面倒なことになってんだ。俺はそういうのには関わりたくないんだよ」
「あんたなんで自衛官やってんですか?」
CH-47JAの機内で、椛島陸士長、戸栗二等陸尉、阿達二等陸曹、杜持二等陸曹、本間三等陸曹が、<未確認飛行物体>について言葉を交わしていた。
しかし、無数の目玉と腕を生やした『気持ち悪い』それに、考えがまとまらない。
最初は、気球を基にした悪趣味なオブジェかとも思ったが、時速百キロ以上で飛行中のCH-47JAに、風向きも無視して追いすがれる気球などおよそ考えられないし、飛行船なら時速百キロ以上で飛行できるものもあるものの、それだけの性能を有した飛行船となればそれなりに知られたもののはずだった。
が、現在、確認できるそれはいかなる記録とも合致しない。
しかも、航空法に基づいて出されている飛行計画には、自衛隊・民間問わずこのルートを飛行している航空機やそれに類するものはないことになっている。
「いずれにせよ、このまま基地にあれをつれて帰るわけにもいかないよな……」
戸栗二等陸尉が神妙な面持ちでそう口にすると、
「ですが、攻撃するわけには……」
椛島陸士長が苦々しく応える。何しろ、その未確認飛行物体は、カメラにもレーダーにも捉えられない、人間の目にしか見えていないものであり、司令部の方では判断できないため、現在、対応を協議中とのことだった。
と言うか、おそらく信じていないのだろう。あまりに真剣に報告してくるので無下に扱うこともできないからと、情報を集めようとしてくれてはいるようだ。
が、存在を確認できない以上はやはり手の打ちようがない。
「何でこうはっきりと見えてるものが確認できないんですか? おかしいでしょ!」
阿達二等陸曹が苛立った様子で口にしたその時、
「おい! 見ろ!!」
戸栗二等陸尉が声を上げる。
「!?」
それを受けて視線を向けたその先で、<未確認飛行物体>が、突然、穴の開いた気球のように揺らめき、煙が拡散するように掻き消えてしまったのだった。
「なんだ…!? 何が起こった……!?」
戸栗二等陸尉のその問いに答えられる者は誰もいなかったのだった。
とまあ、こちらは種を明かせば、異変を察した月城こよみが、時速五百キロを超える速度で突貫したことで撃破されただけだがな。
あと、海自の件については、私の<影>がミサイルを誘導したというのが種明かしではある。
ノボォエ=ノヌゥルオイグッェスは、力そのものは大したことのない化生だが、ハリハ=ンシュフレフアが偵察のために放つやつでありしかもそう距離もおかないんだ。
つまり、ハリハ=ンシュフレフア自身がもう間近まで迫ってきているという証拠でもある。
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