JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
501 / 562
最終章

決定事項

しおりを挟む
ついでなので触れておくが、黄三縞亜蓮きみじまあれんが出産することになる数日前、月城こよみは異様な気配を感じていた。

「なにこれ、この感じ……?」

いつものように、部活の後で私の家にたむろしていた時、体を身震いさせてそう口にしたのだ。

「どうしたの?」

すっかり腹の大きくなった。しかし敢えてゆったりとしたサイズの制服に変えることでただの肥満にも見える黄三縞亜蓮が尋ねた。肥土透ひどとおるも訝しげに見る。

しかし、私(影)は察していた。ノボォエ=ノヌゥルオイグッェスの存在を。

日守かもりこよみとしての私がいないことを悟らせないために軽く認識阻害を掛けておいたというのに、さすがにそちらの気配は察知されてしまったようだ。

「ハリハ=ンシュフレフアの眷属だ。偵察のために寄こしたのだろうな」

日守こよみの代わりとして残していった<影>も、力の差こそあれ私なので、当然、その程度のことは分かる。

「気になるか? なら、始末すればいい。どうせ宣戦布告は済んでいる。人間同士の場合ならいろいろ気遣うところだろうが、カハ=レルゼルブゥアとの衝突は決定事項だ。今さら先兵を潰そうが状況は変わらん。遠慮なく叩き潰してやれ」

そう言って私(影)と月城こよみは、山下沙奈やましたさなに、

「少し出掛けてくる」

と告げ、

「いってらっしゃませ」

と見送られ、それぞれハリハ=ンシュフレフアが寄こした偵察役であるノボォエ=ノヌゥルオイグッェスの始末へと向かった。

「偵察が主な役目の奴だから力はそれほどじゃないが、呪詛は決して弱くない。念を向けられれば今のお前でもそれなりにダメージはあるだろう。だから初手から一切の手加減はするな。様子見をしようとして先手を取られれば死ぬのはお前だ。巻戻しも当てにするなよ。

巻戻しそのものを阻害されるぞ」

私(影)がそう釘を刺しておいてやったおかげで、一切の手加減はなかったようだな。

私(影)は海上自衛隊のイージス艦の方へと向かい、月城こよみは陸上自衛隊が遭遇した奴に、私の忠告を守って全力で一切の手加減なく突貫し、撃破した。

それから続いて力を振り絞り音速を超えて飛行。空気の流れを操作することで衝撃波は出さないようにしていたもののそちらに集中しすぎて認識阻害は疎かになってしまったために一部の人間に目撃はされてしまったが、まあそれも普通の人間の目にはほとんど捉えることができなかっただろうから、別にいいだろう。

航空自衛隊のF-15を追尾していた奴に一切の手加減なく突貫。こちらも撃破することに成功したのだった。

しおりを挟む

処理中です...