JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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最終章

ある意味、平等

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化生共は、老若男女、貧富、貴賤の関係なく人間を襲い、蹂躙し、貪っていった。それはある意味、平等というものだっただろう。

その中には、月城こよみの両親もいた。ケネリクラヌェイアレの襲撃を受け、なす術もなく頭を噛み砕かれ、脳を食われた。その際、母親が使っていたアイロンのコードが破れてショートし、その火花が服に移って燃え上がり、月城こよみの家はたちまち紅蓮の炎に包まれたという訳だった。

そんな月城こよみの父親の部下だった男女も、結婚が決まり仲人を頼むべく月城宅に向かう途中に<狂える刃>ゲベルクライヒナに襲われて死んだ。二人揃って仲良く細切れの肉片になり、文字通り血も肉も混ざって一緒になった。

裁判員裁判で有罪判決を受け刑務所に服役していた山下沙奈の母親も、刑務所内に現れた<魔界の番犬>ンクァライガキェルアに食い殺され、同じく山下沙奈を虐待した件で執行猶予は出たものの社会的には抹殺された下衆な男共も、ある者は<暴虐の隷獣>ヴィシャネヒルに殴り殺され、またある者は<貪欲なる餓獣>コボリヌォフネリに貪りつくされた。

また、別の刑務所では、綺勝平法源きしょうだいらほうげんもかつて自分が使役していたこともあるグェチェハウに、他の受刑者共々食われた。

赤島出姫織あかしまできおりの実の父親も、家族もろともブジュヌレンに食い殺された。最初の娘のことは父親の中ではなかったことにされていたようだが、事実婚の妻との間にできた二人の娘のことは守ろうとしたようだが、呆気なく娘共々ただの肉となった。

また、赤島出姫織を拉致しようとしたり、淫魔に憑かれて嬲った連中も、それぞれ無残な死を遂げた。

それと同時に、肥土透がエニュラビルヌを呼び出してしまった時に襲われた女子生徒も、肥土透ではない別のエニュラビルヌに体を食いちぎられて結局は命を落とした。自然科学部に新しく入部してきた者達も次々と殺された。

その他にも、人間として転生していた私の一人で、僅かにその力に目覚めてしまったことで勘違いしてしまった引きこもりの少年も、社会復帰に向けて順調に推移していた中、たまたまコボリヌォフネリに食われそうになっていた子猫を助けようとして、子猫ごと食われた。

ネルヒホゥニュルクァにとり憑かれて、たまたま学校に訪れただけの他校の女子生徒をボールペンで刺し掛けた教師は、恐怖のあまり心室細動を起こして勝手に死んだ。

石脇佑香いしわきゆうかが暴走させた原発で、最後まで原子炉の暴走を抑えようと奮闘した原発作業員も、原発の地下に現れたヌォホ=ノォホレヘェンの胃袋に収まり、消化された。

<スーパーケモケモ大戦ブラックΣ>を模したくだらないイベントを起こしてくれた女子生徒も死んだし、その女子生徒に手を出し写真を撮っていて、その画像を私が教育委員会に送ってやったことで退職に追い込まれた数学教師ももちろん死んだ。

日下言葉ひかげこのはに乱暴しようとした男も死んだし、日下言葉も死んだ。

とにかく死んだ。殺された。まさしく容赦なく徹底的にだ。

しかしそれでもなお人間達は抗った。理不尽な死を甘んじて受け入れたりはしなかった。勝てなくとも、敵うことはなくとも、懸命に不条理に立ち向かった。その姿を、私は、二千を数える私の影の目を通して見、その声を聞いた。

人間達の苦痛が、恐怖が、憤りが、怨嗟が、折れぬ想いが、砕かれぬ心が、私の中へと流れ込んできた。それが渦を巻き、膨れ、弾け、甘露のように私を満たしていったのであった。

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