獣人のよろずやさん

感情は別にして

ただ、

『場を乱すような人間を雇うくらいならロボットの方がマシ』

とは言うものの、だからと言って、一般企業で、

『＜自分だけが楽をしたいがために他人の事情を考慮しない人＞を排除する』

となるとこれまた、

『差別だ！！』

などという話になりますので、ここでまた＜メイトギア＞が活きるのです。

なにしろロボットは人間に何を言われても堪えません。ですから、いわゆる＜場を乱すタイプ＞のフォローをするために職場に配置されたりもします。メイトギアがそういう人の言葉に丁寧に耳を傾けて、クッション役になってくれるわけですね。これによって職場の和を守ると。

そうすることで、当人の人柄に関係なく採用ができると。

それでもさすがに限度はあります。あまりに反社会的傾向の強い人などは無理ですし。

ただまあ、少なくとも＜社内イジメ＞や＜パワハラ＞等の問題はこれによって随分と緩和されたなどとも言われていますね。

加えて、＜職場の人間関係＞を理由にした離職者の割合が減ったとも。

こういうことも含めて、

『自分の思い通りにならない相手にムカついてキレるのが普通の人』

という感覚も昔のものになりつつあります。

自身の正義感を盾に他人を罵る人を＜普通＞とは言わなくなっているんです。

とは言え、そういう人がいなくなったわけでもありませんが。

相堂しょうどう伍長もそういう人の一人ですね。

ただ、彼は、以前にも言ったと思いますが自分より確実に弱い相手、反撃できない相手を暴力的に従えようとはしません。

彼が強く反発するのは、最低でも自分と同等以上の力を持つ相手、権力を持つ相手、なのです。

ですから、自分は安全な場所にいて一方的に他人を罵るタイプとはまた違うのでしょう。

事実、ノーラや赤ん坊やクレアに対して横暴な態度を取るわけではありません。

ハイハイを始めたノーラの赤ん坊が、寝ている彼の髪を引っ張ったり体に上ったり顔をペチペチと叩いても怒ったりはしません。

それどころか、寝たままでされるがままになり、赤ん坊の玩具おもちゃになってくれているんです。

まるで＜お父さん＞のように。

ある一面だけを見れば彼は非常に扱いにくい＜乱暴者＞のようにも見えます。ですがそれは必ずしも彼のすべてではないということがこれで改めて分かります。

人間にはいろんな面があります。周囲から、

『困った人だ』

と思われることの多い人であっても、それだけではないということでしょう。

だから私は、自分達の思い通りにならない相手であっても、全否定はしないように心掛けているんです。

私自身の感情は別にして。