獣人のよろずやさん

京衛武百十

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汚物処理

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あの<透明で不定形の謎の存在>が植物については吸収ないし同化しないというのは、何を示唆しているのでしょうか。

現時点では全く想像の域を出ませんが、あれを作った何者かの意図がそこにあるのかもしれません。

もしかすると、それを作った何者かにとっては植物はデータとして保存する必要がなく、動物に関してのみデータを収集、シミュレーションを行いたかったのでしょうか。

それにしては、データヒューマンとして存在していたあの世界には、植物が豊富に存在していました。

ああでも、だからこそ植物のデータはすでに間に合っていて、動物に関するデータが必要だったとか?

個人的にはそう考えると納得ができるのですが、これもきっと様々な意見があるでしょうね。



なお、デルラと合流した少佐と伍長は、まずは彼が汚物をあれに吸収させる様子を確認することにしたそうです。

ただ、うまくあれを見付けられるかどうか。

と、幸い、すぐに発見できたそうです。川岸で佇むあれが。

するとデルラは、天秤棒から汚物の入った皮袋を外して手に持ち、少佐と伍長には離れているように指示して自分は躊躇うことなく近付き、それに気付いたらしいあれが向かってくると、巧みに汚物の入った皮袋を投げつけました。

それが触れた瞬間、<透明で不定形な謎の存在>は、躊躇うことなく包み込み、皮袋ごと見る間に吸収あるいは同化していったとのこと。

衛生上の問題などはまったく影響ないのは分かっていますが、正直、複雑な気分にはなります。

とは言え、溶け崩れるようにして見る見る透明になっていく様子は、学術的な点から見ても興味深いでしょうね。しかも同時に、紛れ込んでいた生の木の葉などはそのまま外に輩出されるという。

そして、吸収ないし同化されるとその時点で完全に透明になってしまいます。

これは、実は私達の体でもそう。

食事によって取り入れたものが消化器官の中で消化される様子は、見ようと思えば実に詳細に見ることができます。さすがに気分はよくないので見ないようにしてるだけで。

なにしろ、消化されたものが便へと変化していく過程すら完全に見えるんですから。

にも拘らず、体内に吸収されると、途端に透明になってしまうのです。消化器官については、実際には外部の空間と繋がっているので厳密には<体内>とは言えないとする専門家もいます。それを裏付けるような話ですね。実際に体内に吸収されて初めて透明になるというのは。

医学の研究者が歓喜しそうな体です。ホントに。

いずれにせよ、私達の体と同じく、あれは対象を吸収あるいは同化することで透明にしてしまいます。

データを取得した後は自身のエネルギーとして利用するのでしょうか。

私達の体はあくまで完全に人間として機能しているので、おそらくあれとは根本的に機能が異なってしまっているでしょうし、その意味では参考にならないのが残念です。

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