獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第二部

大きく価値観が違う相手

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ニャルソは語ります。

「僕さ、ビアンカみたいなコが好きなんだよ。リニャスもビアンカそっくりだし。リニャスは素敵な雌なんだよ。だから彼女にそっくりなビアンカもそれだけ素敵な雌ってことさ」

よくそこまで抜け抜けと語れるものだと感心しますが、確かに本心からそう思っているのでしょう。

なお、<リニャス>というのは、ニャルソのパートナーの山猫人ねこじんです。私も何度か見掛けたことはあります。だけど正直、『私にそっくり』というのは分かりません。たぶん、プロポーション的に近い系統にはあるのかもしれませんが、顔などは猫そのものなので、当然ながら似ても似つかないのですから。

ただ、<プロポーション的に近い系統>こそが、『そっくり』ということなんだろうなというのは分かります。

山猫人ねこじんは、顔の造形で言うなら、地球人の感覚でも<美男美女>揃いだと称しても過言ではないでしょう。あくまで<猫>としてですが、確かに<美型>なのです。

正直、少佐のことがなければ揺らいでしまうかもしれないくらいには。

と言うのも、私、本当は猫好きなんです。部屋を猫グッズで埋め尽くしてしまった時期もあるくらい。家族も代々猫好きで、実家でも猫は飼っていました。むしろ、

『猫がいなかった時期はない』

程度には<ガチ>です。

私自身はさすがに<軍人>なので万が一のことも考えなくてはならず、加えて、任務で長期間にわたって家を空けることもあるので、飼うことは控えていましたが。

なので、本音ではもっと仲良くなりたい。その気持ちはあります。

でも、彼らの場合の『仲良く』は、基本、『性的に』というのが大前提なんです。

いくら『猫が好き』と言っても、私の場合は、そういう方面での<嗜好>ではありません。

それを全面に押し出されると、さすがに引いてしまいます。

そんなわけで、山猫人ねこじんとの付き合い方には苦慮しているというのは、正直言ってあるんです。

ただ、少佐も伍長も山猫人ねこじんの雌に言い寄られるかと言うとそうでもなく、私も、ニャルソ以外の雄からアプローチを受けたことはありません。あくまでニャルソだけが私を『<雌>として好き』になってくれているようですね。

だから、彼が特殊であって、それをわきまえていれば問題ないのでしょう。

とは言え、一度、

『そういう目で見られている』

と意識してしまうと、それを振り払うのもやはり容易ではないというのも正直なところ。

これらの点においても、大きく価値観が違う相手と良好な関係を築くことの難しさは痛感するところですね。

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