獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第二部

計画通り予定通りにことが進まないのを楽しむ

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でも、<対ゴヘノへ用決戦兵器>を建造した時もそうでしたが、実際に建造を始めてみるとトラブルの連続で。

<事故>は意外なほど少ないんですが、とにかく設計通りには上手くいかない。

まあ、それについては、設計した少佐や私自身が『素人だから』というのが一番なんですけどね。

おそらく、この種の工業的な設計の専門家が見たら、

『こんなの上手くいくわけないだろ』

と呆れるでしょう。分かってます、分かってますとも!

でも、多少なりとも知識があるのが私と少佐だけなんですから、仕方ないじゃないですか!

などと泣き言を並べても始まりません。それに、実際に作業をしている獣人達も、

「ナンカ、オカシイゾ」

「ナンダコリャ。ハハハ!」

とか笑いながら言ってくれるんです。そうやって<上手くいかないこと>そのものを楽しんでいるみたいですね。彼らのおおらかなメンタリティに助けられています。

もしこれが、

『とにかくきっちりと計画通り予定通りにことが進まないと気が済まない!』

というタイプの人達だったりしたら、今頃、ストライキとか起こされてたかもしれませんね。

正直、今、地球人の社会では、AIの補助もあって、事前にものすごく綿密に計画が立てられて設計もものすごく丁寧に行われて、

『現場で実際に組んでみようとしたら上手くいかなくてその場で対処した』

なんてことがあったら下手したら訴訟モノって空気があるんです。

それに比べて獣人達は、

『計画通り予定通りにことが進まないのを楽しむ』

みたいな部分が。

ああでも、だからこそ、前回のゴヘノへ戦で想定通りにいかなくても心折れたりせずに勇敢に戦ってくれたというのもあるのかもしれません。

彼らは、

<自分の思い通りにいかないこと>

についても、耐性が高いんでしょう。

地球人は、どうにも、『自分の思い通りにいかないと気が済まない』という気性の人が多くて、それでキレて他人を罵ったりということも多かったです。

そもそも、

『何でもかんでも自分の思い通りにいく』

なんてことがこの世ではむしろ珍しいんですから、上手くいかなかったら上手くいかなかったその時に随時対処すればいいだけのものを、上手くいかないことについて感情的になったりと、始末に負えません。

獣人達がこのおおらかさを保ったまま社会を築いていってくれればと思いつつ、その一方で、これが行き過ぎて、

『適当でいいや』

というのが蔓延するとこれはこれで社会が混乱しそうですからね。

その辺りのバランスをいかにとるかが、将来の課題になってくるのかもしれません。

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