獣人のよろずやさん

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
336 / 404
第四部

何度も試作品を作り試して

しおりを挟む
ロープがちぎれてしまうのを防ぐために、引っ掛かりの部分それぞれに<コロ>を付けることで摩擦を減らし、より小さな力で引けるようにして解決を図ります。

しかしそのためには正確でかつそれなりの強度を持った<コロ>を設置しなければならず、その<コロ>の開発を行うことになりました。

いやはや、<開発>というものはこういう地道な作業の積み重ねであることを実感しますね。

小さくて、それでいて十分な強度を持つ<コロ>を作るために、ティクラやルッセン達は、それぞれ職人達を指揮して挑みます。

細かい工作を行うこと自体は苦にならないものの、やはり『小さいけれど高強度』というのはなかなか難しいようです。そのため、そもそも素材からして見直さないといけなくなりました。改めて強靭な素材で作るために。

それには、メイミィやラレアト達のように、

『職人には向いてない』

タイプの者達も素材探しに協力します。森を歩き、片っ端から使えそうな素材を試す。いつ終わるとも知れないトライ&エラー。地球人の先人達もこのようにして科学や技術の発展に尽力したのでしょう。頭が下がります。

その努力が実り、一ヶ月を要して、使えそうな種類の材木がいくつか得られました。それらで何度も試作品を作り試して、さらに絞り込みを。

そんな地道な作業を、文句も言わずに続けてくれる鼠人そじん達や兎人とじん達に感謝しか湧いてきません。

なんてことが行われている間も、よろずやとしての営業は行っています。

もっとも、店の運営そのものは、トームとメイミィとラレアトとフロイのおかげで問題ありません。皆、必要なことはすっかりと習得してくれて。

トームとメイミィが昼の店番。ラレアトは商品の管理。フロイが夜の店番を確実にこなし、さらにクレアがフロイと一緒に夜の店番と、獣蟲じゅうちゅうへの対応を兼任してくれます。

そして伍長は、震電を育てながら獣蟲じゅうちゅうの対応を。

「! ビア樽! 震電を頼む! クレア! こい!!」

言って、伍長は私に震電を預け、闇の中へと駆け出していきます。すると、十分と経たないうちに倒した獣蟲じゅうちゅうを抱えて帰ってくるんです。相変わらず見事なものです。

こうして伍長が獣蟲じゅうちゅうの対応に出て、戻ってきてからも獣蟲じゅうちゅうの処理を行っている間、私が震電を預かってるんですが、私としても震電に慣れてもらう努力をしたこともあってか、彼女はすごくおとなしくしてくれてて、手を焼かされたことはほとんどありませんでした。

そもそも猪人ししじんだということもあってか、肝が据わった子です。

しおりを挟む

処理中です...