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お願い
翌日、指定のコーヒーショップには私よりも先に黒川くんが来ていた。
合流する前に購入したホットカフェラテを手に店内を探せば、少し奥まった席に彼の背中が見える。
「早かったのね」
「誘った側が遅れるわけにはいきませんので」
背の高い二脚のスツールの間に小ぶりのテーブルがあり、黒川くんはその一方に姿勢良く腰掛けていた。
声をかければそう淡々と答えられたが、ほんの少し口角が上がったのがわかる。
彼の大きな手に包まれればコーヒーカップさえも小さく見えて、改めて黒川くんが大柄な青年なのだと感じた。
「これ、ありがとう」
「何か余分に入ってますが?」
小さなショップ袋を渡せば中を覗き込んだ彼が言う。
「お礼よ。休憩時間にでもどうぞ」
袋の中には洗ってアイロンをかけたあのハンカチと、ショップで購入したクッキーを入れてある。
「気にしなくても、それこそそのまま返してもらってもよかったんですが」
「そういう訳にはいかないでしょう?」
案外こだわりが少ないのかそう言った彼に呆れつつも答える。
自分の涙が染み込んだハンカチをそのまま返すだなんて、できるわけがない。
「せっかくなのでありがたくいただきますけど」
そしてそう言った彼の前の席に私は腰を下ろした。
「いずれにしても、昨日はお世話になりました」
昨日の彼の行動で助かったのはたしかだから、私は彼に向かってきちんとお礼を言う。
「本当に、真面目ですよね」
そう言われたけれど性分なので仕方がない。
それに、助けてもらったのならお礼を伝えるのは当然だと思う。
「だからあんな奴にいいように騙されちゃうんですよ。本当、あんな奴にはもったいない」
「え?」
ボソボソっと呟かれて、何と言ったのか分からなかった私は聞き返した。
「何でもありません。とにかく、お礼はちゃんといただきましたので、昨日のことはこれ以上気にしないでください」
「わかったわ。あなたがそう言うなら」
しかしそうなると彼は何を話したかったのだろうか。
性格的に会社の外でわざわざ職場の相手に会うタイプではないと思うのだけど。
そんな私の疑問に気づいたのか、黒川くんが新たな話題を振ってきた。
「先輩に一つお願いがあるんです」
『お願い』
もちろん、後輩が困っているならできる範囲で助けてあげたいと思う。
ましてや昨日お世話になった相手だ。
しかし何事もそつなくこなせそうな彼が、いったい私にどんなお願いがあるというのだろう。
「私にできることであれば」
「先輩にしかお願いできないんですよ」
「どういうこと?」
「しばらくの間でいいので、僕とつき合ってくれませんか?」
つき合う?
つき合うって、どこに?
いや違う。
この場合のつき合うはきっと男女のおつき合いという意味よね。
「ええ⁉︎」
驚いて、私は黒川くんをまじまじと見た。
本人が常にローテンション気味だから今ではあまり騒がれてはいないけれど、黒川くんは入社してきた時はしばらく噂の的になっていた。
なぜかといえば、彼の容姿がとても整っていたからだ。
下手したらそこら辺の芸能人よりも格好良いのでは? と噂にもなったものだ。
会社勤めということもあり、染めていない黒髪はサラサラで切れ長の瞳は長いまつ毛に覆われている。
左右対称といえるパーツ配分に左目の下の泣き黒子が色気を添えていた。
その上身長は高く、人とのコミュニケーションを取るのが上手くて周りがよく見えているのか気遣いもできる。
そして何か運動でもしているのか引き締まった体躯をしていた。
簡単に言ってしまえば周りが放っておかないような人物なのである。
仕事覚えも早いし、社内でも今後の期待の星なのよね。
唯一の難点といえば、ローテンションのせいでやる気が見えにくいところくらいだろうか。
「ええっと……理由を聞いても?」
ふざけてこういったことを言うタイプではないし、『しばらく』というのが気になった。
「頭ごなしに拒否はしないんですね」
「だって、私のことが好きで言っているわけではないでしょう? 何か理由があって困ってるのなら、力になりたいという気持ちはあるのよ」
「ありがとうございます」
私の返事になぜかお礼を返して、彼はその理由を話し始めた。
「実はある人にしつこく付きまとわれているんです」
「それは……大変ね」
見た目の良い人の苦労ということだろうか。
しかし芸能人でもないのに付きまとわれるのは嫌よね。
いや、芸能人だったとしてもプライベートの時に付きまとわれるのは勘弁してほしいだろう。
「つき合って欲しいとずっと言われているんですけど、何度断っても諦めてくれなくて……」
そう言ってため息をつく様は困っているし疲れているように見えた。
「だから、つき合っている人がいるから無理だと、今度こそ諦めてもらうためにもはっきりと言いたいんです」
それで彼女役が必要ってことね。
「確認なんだけど、私に頼むということは今は彼女はいないのね?」
この容姿にこの性格でいないなんて信じられないけれど。
「いたらこんな無茶なお願いなんてしません」
困り顔で言われて、それはたしかにそうかと思う。
彼女役かぁ。
昨日のお礼もしたいし困ってるなら助けてあげたいけど、私に務まるものなの?
何と言ってもつい昨日婚約破棄されたばかりの女なのに。
「先輩さえ嫌でなければ、ぜひお願いしたいです」
重ねて頼まれて、今の私でも役に立てるならいいか、という気持ちになる。
「……わかったわ。どれくらいの期間続ければいいのかしら?」
「相手が諦めてくれるかどうかによりますが……先輩さえ嫌でなければ当面の間、期限は切らずにお願いできればと」
「了解。まぁ、私は誤解をされたら困る相手も今はいないしね」
半ば自虐的にそう言うと彼の方が辛そうな顔をする。
「ごめん、もうこういう言い方をするのは止めるわ」
彼の表情は下手に何か言われたり慰められるよりもよほど堪えた。
「もうこれ以上自分で自分を卑下しないでください」
懇願するかのように言われて、たしかにそうだなと思う。
元婚約者が浮気に走った原因が自分にもあったのではないかと、その考えがどうしても拭えなかった。
でも浮気をしたのはあっちだ。
もし私に不満があったとして、話し合うこともなく直接的な原因を作った結果の婚約破棄なのだから。
私が私を否定しちゃダメよね。
そう気づかせてくれた彼に感謝する。
「そういえば、つきまとっているというのは社内の人なの? それとも社外?」
相手がどんな立場の人なのかによって対応が変わるかも、そう思って聞いた質問だったけど。
「相手は……同期のあの人ですよ」
元婚約者の浮気相手の名前がここで出てくるとは、まったくの予想外だった。
合流する前に購入したホットカフェラテを手に店内を探せば、少し奥まった席に彼の背中が見える。
「早かったのね」
「誘った側が遅れるわけにはいきませんので」
背の高い二脚のスツールの間に小ぶりのテーブルがあり、黒川くんはその一方に姿勢良く腰掛けていた。
声をかければそう淡々と答えられたが、ほんの少し口角が上がったのがわかる。
彼の大きな手に包まれればコーヒーカップさえも小さく見えて、改めて黒川くんが大柄な青年なのだと感じた。
「これ、ありがとう」
「何か余分に入ってますが?」
小さなショップ袋を渡せば中を覗き込んだ彼が言う。
「お礼よ。休憩時間にでもどうぞ」
袋の中には洗ってアイロンをかけたあのハンカチと、ショップで購入したクッキーを入れてある。
「気にしなくても、それこそそのまま返してもらってもよかったんですが」
「そういう訳にはいかないでしょう?」
案外こだわりが少ないのかそう言った彼に呆れつつも答える。
自分の涙が染み込んだハンカチをそのまま返すだなんて、できるわけがない。
「せっかくなのでありがたくいただきますけど」
そしてそう言った彼の前の席に私は腰を下ろした。
「いずれにしても、昨日はお世話になりました」
昨日の彼の行動で助かったのはたしかだから、私は彼に向かってきちんとお礼を言う。
「本当に、真面目ですよね」
そう言われたけれど性分なので仕方がない。
それに、助けてもらったのならお礼を伝えるのは当然だと思う。
「だからあんな奴にいいように騙されちゃうんですよ。本当、あんな奴にはもったいない」
「え?」
ボソボソっと呟かれて、何と言ったのか分からなかった私は聞き返した。
「何でもありません。とにかく、お礼はちゃんといただきましたので、昨日のことはこれ以上気にしないでください」
「わかったわ。あなたがそう言うなら」
しかしそうなると彼は何を話したかったのだろうか。
性格的に会社の外でわざわざ職場の相手に会うタイプではないと思うのだけど。
そんな私の疑問に気づいたのか、黒川くんが新たな話題を振ってきた。
「先輩に一つお願いがあるんです」
『お願い』
もちろん、後輩が困っているならできる範囲で助けてあげたいと思う。
ましてや昨日お世話になった相手だ。
しかし何事もそつなくこなせそうな彼が、いったい私にどんなお願いがあるというのだろう。
「私にできることであれば」
「先輩にしかお願いできないんですよ」
「どういうこと?」
「しばらくの間でいいので、僕とつき合ってくれませんか?」
つき合う?
つき合うって、どこに?
いや違う。
この場合のつき合うはきっと男女のおつき合いという意味よね。
「ええ⁉︎」
驚いて、私は黒川くんをまじまじと見た。
本人が常にローテンション気味だから今ではあまり騒がれてはいないけれど、黒川くんは入社してきた時はしばらく噂の的になっていた。
なぜかといえば、彼の容姿がとても整っていたからだ。
下手したらそこら辺の芸能人よりも格好良いのでは? と噂にもなったものだ。
会社勤めということもあり、染めていない黒髪はサラサラで切れ長の瞳は長いまつ毛に覆われている。
左右対称といえるパーツ配分に左目の下の泣き黒子が色気を添えていた。
その上身長は高く、人とのコミュニケーションを取るのが上手くて周りがよく見えているのか気遣いもできる。
そして何か運動でもしているのか引き締まった体躯をしていた。
簡単に言ってしまえば周りが放っておかないような人物なのである。
仕事覚えも早いし、社内でも今後の期待の星なのよね。
唯一の難点といえば、ローテンションのせいでやる気が見えにくいところくらいだろうか。
「ええっと……理由を聞いても?」
ふざけてこういったことを言うタイプではないし、『しばらく』というのが気になった。
「頭ごなしに拒否はしないんですね」
「だって、私のことが好きで言っているわけではないでしょう? 何か理由があって困ってるのなら、力になりたいという気持ちはあるのよ」
「ありがとうございます」
私の返事になぜかお礼を返して、彼はその理由を話し始めた。
「実はある人にしつこく付きまとわれているんです」
「それは……大変ね」
見た目の良い人の苦労ということだろうか。
しかし芸能人でもないのに付きまとわれるのは嫌よね。
いや、芸能人だったとしてもプライベートの時に付きまとわれるのは勘弁してほしいだろう。
「つき合って欲しいとずっと言われているんですけど、何度断っても諦めてくれなくて……」
そう言ってため息をつく様は困っているし疲れているように見えた。
「だから、つき合っている人がいるから無理だと、今度こそ諦めてもらうためにもはっきりと言いたいんです」
それで彼女役が必要ってことね。
「確認なんだけど、私に頼むということは今は彼女はいないのね?」
この容姿にこの性格でいないなんて信じられないけれど。
「いたらこんな無茶なお願いなんてしません」
困り顔で言われて、それはたしかにそうかと思う。
彼女役かぁ。
昨日のお礼もしたいし困ってるなら助けてあげたいけど、私に務まるものなの?
何と言ってもつい昨日婚約破棄されたばかりの女なのに。
「先輩さえ嫌でなければ、ぜひお願いしたいです」
重ねて頼まれて、今の私でも役に立てるならいいか、という気持ちになる。
「……わかったわ。どれくらいの期間続ければいいのかしら?」
「相手が諦めてくれるかどうかによりますが……先輩さえ嫌でなければ当面の間、期限は切らずにお願いできればと」
「了解。まぁ、私は誤解をされたら困る相手も今はいないしね」
半ば自虐的にそう言うと彼の方が辛そうな顔をする。
「ごめん、もうこういう言い方をするのは止めるわ」
彼の表情は下手に何か言われたり慰められるよりもよほど堪えた。
「もうこれ以上自分で自分を卑下しないでください」
懇願するかのように言われて、たしかにそうだなと思う。
元婚約者が浮気に走った原因が自分にもあったのではないかと、その考えがどうしても拭えなかった。
でも浮気をしたのはあっちだ。
もし私に不満があったとして、話し合うこともなく直接的な原因を作った結果の婚約破棄なのだから。
私が私を否定しちゃダメよね。
そう気づかせてくれた彼に感謝する。
「そういえば、つきまとっているというのは社内の人なの? それとも社外?」
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