紳士転生~異世界奮闘記~

アケミナミ

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第二章

入会

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「すみませんでした!」

 だいぶ落ち着きを取り戻したギルドのロビーに、子供の声が響く。
 今私達……というか主に私が、鉱石モグラの面々に頭を下げていた。ノーニャと精霊達も頭を下げてはいるが、はっきり言って悪いのは私なので、一番前で謝っていた。

「謝って済むことかよ……」

 目を覚ましたカイルが腕を組んで不機嫌そうに私を見下ろす。

「あのタングライト鉱石を掘り当てるのにどれだけ苦労したか……。競りにかければ、いったい幾らになったかわからない物だったんだぞ!」
「本当にすみません!」

 モレロから聞いた話では金貨百枚は堅いらしいので、競りにかければ確かに幾らになるかわからない代物だろう。
 だからというわけではないが、私はカイル始め鉱石モグラの人達に平身低頭謝り続けた。
 カイルの小言が三周した辺りで、モレロがそれを止めに入ってきた。

「カイル、お前の気持ちもわかるが、こうして謝って金を払うと言っているし、これから一緒に仕事をすることもあるかもしれないんだから、そろそろ許してやったらどうだ?」
「金は払って当然でしょう? それと、こんな奴等と一緒に仕事なんか出来ませんよ」

 カイルは相当頭にきているようで、鉱石の賠償をすることで手打ちにすることにしたとは言え、感情的にはとてもじゃないが許せないといった様子だ。

「はぁ……ったく、こんな子供にいきなり襲い掛かった挙句返り討ちにあって、それで臍曲げてるなんて大人気ないとは思わんのか」
「な! 別に、臍を曲げてるわけじゃ……」
「いつもの心の広い太っ腹なカイルは何処行ったんだ?」
「……わかりましたよ。タガヤとか言ったか? お前等もういいから、向こうへ行ってくれ」

 カイルはモレロの言葉に「ぐぬぬ……」と言った様子で頷くと、シッシッと手を振ってきた。
 私達は最後に一度謝って、カウンターの方へと下がる。
 後ろを見ると、モレロとカイルが何やら肩を組んで話していたが、カイルがびっくりして此方を見ようとしたところで後ろから声を掛けられた。

「君達、ちょっといい?」
「あ、はい」

 声を掛けてきたのは、ミレーヌと同じ服を着ているものの真逆の印象を受けるキリッとした人だ。カウンターの向こう側から、書類片手に此方へ向かって手招きしている。

「何でしょうか?」
「取り敢えず、はい、これ読んで」

 二番と書かれたカウンターへ近づいて行くと、書類を渡される。
 書類に目を落とすと、規則やら何やらが箇条書きにされており、その一番上には『冒険者ギルド入会申込』と書かれていた。

(あ、ここ、冒険者ギルドなんだ)

 正直、冒険者ギルドと言われなければそうは見えない。
 受付に併設している酒場も無ければ、依頼が張り出されている掲示板も見当たらないのだ。
 私はざっと一通り目を通した後に、そのことについて聞いてみることにした。

「あ、読み終わりました。ところで、冒険者ギルドって酒場とか依頼の掲示板とかあるイメージだったのですが……」
「はい、ここ、サインして」

 受付のお姉さんは、私の言葉を聞き流して、淡々と事務処理だけをこなしていく。
 仕方がないので、言われた通り書類の一番下のところへサインをする。

「他の人は? 入会する人はいる?」
「えーっと……」

 振り返ると、精霊達は首を振っている。
 ルチアがへちゃむくれになってるのを宥めながらノーニャに視線を向けると、彼女は暫し考えた後「私も入会する」と言った。

「そう、じゃあ貴方もこれ読んで。終わったらここにサインして」

 ノーニャが申込書と羽ペンを渡され、読み始めるのを見ていると、肩をちょいちょいと突付かれた。

「さっき君が言っていた事だけど、以前はあったのよ。酒場も依頼ボードも。けど、酔って暴れる人のせいで業務に差支えが出たり、冒険者以外の人が依頼を見て色々問題を起こしたから無くなったらしいの」

 さっきは無視されていたのではないとわかって少しほっとする。

「へぇー。冒険者以外の人が依頼を見て問題を起こすって、どんなことがあったんですか?」

 ノーニャが書類を読んでる間は話してくれるようなので、もう少し聞いてみると、お姉さんの表情が曇る。

「初めは商人とかが情報収集のために眺めていく程度だったそうだけど、それが段々エスカレートして商売敵の依頼を剥がしてしまったりするようになって……。しかも、それを私怨でやる人まで出たものだから、依頼ボードは無くなってしまったのよ」

 おそらくそういった悪意ある行動が許せない性質なのだろう、次第に彼女の表情は忌々しげに歪んでいった。

「そうなんですか……残念ですね」
「ええ。今ではわざわざカウンターで確認しなきゃいけないから、朝なんかは大行列ができて他の仕事が滞ってしまうの」

 そんな話をしていると、ノーニャが読み終わって横でサインし始めた。
 何の気なしにそれを見ていた私は、思わず「え?」っと呟いてしまう。

「ん、どうかした?」
「あ、いえ、なんでもないです」

 受付のお姉さんが小首を傾げて書類の確認に戻るのを横目に、ノーニャにそっと耳打ちをする。

「(ノーニャ、あれはちょっと不味くない?)」
「(え、そう? よくある名前よ?)」

 ノーニャは「何で?」と言った様子で全くわかっておらず、先が思いやられる。

「はい、確認しました。ではタガヤ君とターニャさん、これからよろしくお願いしますね」
「よろしくお願いします、えーっと……」
「ああ、名前ならここに書いてあるわ。私はリリアよ、よろしくね」

 そう言って彼女がカウンターの上にあるプレートを指す。

「あ、はい、よろしくお願いします、リリアさん」
「よろしくお願いします」

 ノーニャと二人で挨拶をした後、私達は仕事の受け方などのギルドの仕組みについて話を聞いたのだった。

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