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「チェスシリーズ」

「ルーク」2

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錬金術師ゲルと神聖ローマ皇帝のフリードリヒ2世が、出会った事でカステル・デル・モンテの完成された。
ゲルは、この地の地下で神に仕える天使を捕えてはその研究をしていた。
20年後にカステル・デル・モンテを建てたのも、水の神がそれを救いに来たのも、この研究が関係している。
だからと言って、この研究を止めた所で神による制裁が止まるわけではなかった。
この世界の神にとって人はペットや家畜のようなもの…
既に動き出した歯車を止めるとすれば、人類自体を滅ぼすか、さらに過去に戻り人類自体の誕生を阻止するか、この世界の神を総て倒すか…
最後の不可能だろう…この世界の神は、全部で5体。五行思想を元に火の神・水の神・木の神・金の神・土の神の5体…そのうち、水の神は「ナイト」で倒され、火の神と木の神は「VANE」で負傷した…金の神も「ルーク」で、水の神とともに力を削がれている…が、そこまでだ…土の神に関しては姿すら設定されていない上、能力は、単純に土の操作ではなく土=地球と解釈した上で他の総ての神の能力を扱うことができる。五行をモチーフとしながら、五行から外れた存在だ…
これには理由がある。元々倒すつもりのキャラクターではなかったのだ。言ってしまえばボツ…「GAME」時点で人を守る側の神と裏設定され、世界の地形を動かした神として名前のみ登場したが、「VANE」まで登場することがなかった。「ルーク」でゲルとフリードリヒ2世の会話から総ての神は人を家畜として見ている事が判明し、そのシリーズと同一世界になってしまっていたため、絶対に倒せない神が敵になってしまった。
とはいえ、人類を消すという手段はシリーズのオチとして面白味がないし、海波洋一みなみよういちも協力しないだろう。ここは仕方なく、総ての神を倒す算段を立てるとしよう。
「おい!この場所に一体何がある?何故、この時間でなくてはならなかった?」
海波洋一が背中の妖刀村正を抜き、私の首に向ける。
「待て!誰か来る!」
海波を水本耕二みずもとこうじが止める。
水本耕二の能力は、鏡や水面に写ったものを感知することができる。
「そりゃあ、何も無い丘ばかりとはいえ、人ぐらい通るだろ!」
海波が邪魔をした水本の胸ぐらをつかむ。
「いや、それが…姿形は人だというのに、異常な速さなんだ…時速90キロいや100キロは超えている。」
私はそれを聞くなり、地面に伏せた。
この時代、そんな能力を持つ人間はゲルぐらいだった。
ゲルは、捕らえた天使から八角形のプレートを取り出しその能力を使用できる。
天使の能力を持つプレートは、一度使用されると破損してしまうが、後に神から能力を奪い、半永久的に使えるプレートを作り出した。
ゲルがもの凄いスピードでここにたどり着くとともに、体内に刺さったプレートは半壊した。
ゲルの格好は、最初は、舞台となった13世紀頃の錬金術師であるマイケル・スコットやアルベルトゥス・マグヌスなどをモデルにしてデザインしていたがイメージと合わず、結局、錬金術師を当時の科学者と解釈した上の白衣姿のようになった。
青い瞳と金色の長い髪をした白衣の女性…1200年頃としては異色・異端ではあったかもしれないが、主人公としてフリードリヒ2世や神を相手に立ち回るためには、これぐらい異色ではなくてはならなかった。
幸いなことに、「ルーク」連載を開始した2011年当時は、「空白」「GAME」の頃と違いそういった主人公を出しやすい時代でもあった。
「せっかく異常を知り、貴重なプレートを使い、直ぐ様戻ったのに、神ではないのか…」
とでも言っているのだろう…実際に話しているのが、イタリア語はわからないが、最初に会ったフリードリヒ2世に対し同様の台詞を言っていた。
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