この異世界は、かつて私が創造した世界
2027年、かつて漫画家だった私は、その集大成となる作品の連載を目前としていた。
それは、大きく3つに分けられるシリーズを1つにまとめあげるというもの。
1つ目は、「空白」「鬼火」からなる「悪川シリーズ」と呼ばれる和風ファンタジーシリーズ…このシリーズは、古代や戦国時代の日本をモデルにした架空の土地を舞台に、魔族と人の争いを描き、最終的に人の勝利で終わった…他の2シリーズと比べると短命ではあったが、一番自由に描くことのできた作品だったと思っている。
2つ目は、「ナイト」「キング」「ルーク」という3作品からなるタイムトラベルもの。私は、シリーズ名を名付けていないが、ファンの間では「チェスシリーズ」と呼ばれている。神に抗う人を描いた作品で、雑誌掲載時は、人が神に勝利できる可能性を描いたが、単行本収録時に、この新作のために神に敗れたラストに変更した。
そして、
3つ目は、「GAME」「SAME」「VANE」からなるファンタジーシリーズ…元々、「GAME」「SAME」という作品は「空白」から連なる作品として構想されていて、古代に出現した魔物と神の争いを描くつもりであったが、「鬼火」で魔物との戦いの集結を描いたため、矛盾が生じてしまい、それを補完するために「VANE」を作り上げた。
そのために、いくつかの用語は、「悪川シリーズ」と共通している。神と魔物との戦いは、人と手を結んだ魔物たちに対し、神が手を引くところで終わっている。
そういった繋がりを好意的に思ってくれるファンは、多かったが、私としては、この「VANE」でも埋まることができなかった矛盾をどうしても埋めたかった。
そのために着想を開始したのが、この新連載「ポーン(兵士)」だった。
世界観を繋げるためのアイデアや、矛盾点を解消する方法は既に浮かんでいた…
しかし…しかしだ、肝心の主人公のアイデアが浮かんでいなかった。
この作品では、8作品の主人公全ての主人公と出会う必要があるというのに、どう考えても、これまでの主人公の性格や能力に似通ったものになってしまう。
悩んだ私は、家の裏にある堤防の道を散歩した。
深夜だというのに、慣れた道だからと懐中電灯どころかスマホすら持たずに歩いていた私は、散歩の道中、あるアイデアを思い付いた。
それをメモしようと、スマホを取り出そうとして、やっと自分が何も持たずに家を出た事に気が付いた。
アイデアを忘れる前に帰ろうと走ったのが悪かったらしい。私は、足がもつれてそのまま川へと堕ちてしまった。
気が付くと、私は自分が想像した「ポーン」の世界にいた。
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