短編集

天川 古雨

文字の大きさ
10 / 14

モノクロの思い出

しおりを挟む


7月…

俺は地元に帰ってきた…

セミの鳴き声が鬱陶しい

じわじわと暑い道を進む

昔通っていた学校が見えてきた

ジジッ…と昔の事がまるで
モノクロ映画のような
鮮明的ではない思い出が蘇る

----------------------

「やっちゃーーーん!!!!」

そう呼ぶのは光志(みつし)、俺の当時の友達だ

「ミツシどうしたんだよ」

「やっちゃん!やっちゃん!!!」

「俺の名前を言うだけじゃわからねーよ
ほら、落ち着け、俺の水あげるからさ」

キュポンと水筒をあげる

ミツシは受け取ったあとごくごくごくと飲み

「ぷっは!つっめてぇえええ!!!」

と笑顔でいった

「結構飲んだなお前」

水筒はもう半分だ

「ありがとう!あっ!やっちゃん!あのね!あのね!」

「どういたしまして、で?」

「あのね!俺、山の中ででっけ~カブトムシ捕まえたの!!!!見て見て!!!!」

ミツシはよく見ると後ろに大きな網と
虫かごを持っていた

「カブトムシ!?見せてみろよ!」

ミツシはハイ!と虫かごを見せてくれる

中にはでかいカブトムシ…

「すっげぇ~!ミツシ、お前よく取れたな!どんくせぇのに!」

「どんくさいは余計だ!あーあ、やっちゃんにカブトムシ触らせてあげよーと思ってたけど悪口言うんなら触らせてあげなーい!」

「ごめんて~!触らせてくれよ~!」

「しょうがないなぁ、やっちゃんはぁ~」

それからは
数分間カブトムシで
わちゃわちゃと話していた

「このでっけぇカブトムシどうすんの?
ミツシのかーちゃん、虫苦手じゃなかった?」

ミツシの母さんは虫嫌いなのは
昔から知っている。

前に虫を捕まえて見せた時
ものすごい顔をしていたからだ

「うーん、大丈夫!隠して育てる!」

「やばかったら俺の家にもってこいよ
俺が育ててやる」

「うん!」

翌日…

「ミツシどうしたんだ?」

「…カブトムシしんじゃってた…」

「は?一日でしぬもんなのか?カブトムシ…」

起きた時にミツシが隠していたカブトムシはしんでしまっていたらしい

潰された状態で

「お前、かーちゃんに見られたんじゃ…」

「そ、そんなことはないもん!
お、俺はちゃんと…!!!!うぐっ…
えぐっ…」

ミツシは泣き始めた

「…はぁ、あれよりでっけーカブトムシ、見つけに行こうぜ!ミツシ!!!!ほら行くぞ!!!!!」

「…!やっちゃん…!うん!見つけに行こ!!!!!」

俺達ふたりは山の中へと入り
カブトムシを探し始めた…

-------------------

リュックにいれた冷たい水を飲む…

じーわじーわと視界が暑さで滲む

「ふぅ…」

俺は歩き始めた

目的の場所へ

----------------------

「ミツシってさ、兄弟がいていいよな~」

俺は一人っ子だった
ミツシには弟がいた

「兄弟なんていてもいなくてもあれだよ…」

今日のミツシは落ち込んでいた

「ミツシどうしたんだ…?そんなに落ち込んでさ」

「…ママが言ってたんだ…習い事を増やすって…やっちゃんと遊ぶ時間が無くなっちゃうよ…」

「なんの習い事なの?」

「えっと…習字…」

「習字かぁ~だるいよなぁ~…」

「習字始めたらやっちゃんと遊ぶ日が
1週間で…えーっと…」

ミツシは手で数えている

ミツシの家庭は結構裕福で
習い事を何個かミツシに抱えさせていた

「5つ目だろ?水泳、英語、ピアノ、サッカー…そこに習字か」

そう言うと

「そうそう!5つ目!あー!どうしよう!
やっちゃん習い事一緒にしない!?」

ミツシはそう言うが俺の家は…

「無理だなぁ、俺のかーちゃんが
認めてくんねぇ、すぐやめるでしょ!って」

「俺がいても!?」

「あきしょーってんの?それだからなぁ」

「えぇ~っ!!!!だったら習字やめとく!!!別に学校でも習えるしさ!」

…飽き性でも俺はなんでもない

ミツシが行くとこややる事は全て
行きたかったし、やりたかった
親友として、仲のいい友達として

でも俺の家は習い事にすら通えないほど

俺に対して親が興味なかったから…

「じゃ、今日ママに言うよ!俺、やっちゃんが行かないから行かないっ!って!!!!」

「…ミツシ…習字習ってこいよ」

「えっ?」

「俺より上手くなれよ、そして学校で
賞とか取ったりしたらもっとお前のかーちゃん褒めてくれるだろ」

「うーん…そうだけど…でもいいの?
遊べる日、毎週2日になっちゃうよ…?
そ、それにもうすぐ夏休みだしさ…」

「俺、お前に教えて欲しいな」

「…わ、分かった…!俺上手くなって
やっちゃんに教えれるようになるよ!」

…それから数日後

「明日から夏休み…か」

「…やっちゃん!」

隣のクラスからミツシが
俺のクラスの扉を開けて俺を呼ぶ

「どうしたんだよ、ミツシ」

「あのね…俺、夏休み遊べなくなっちゃった…!」

「!?」

「ママが、勝手に僕の…宿題もやらないといけないし…ご、ごめんねやっちゃん…!」

ガラッと扉を閉めたあとミツシが居なくなった

その夏はあまり楽しくなかった事を覚えている…

-------------------

「…お前!やっちゃんじゃん!久しぶり~!今日もあっち~な!里帰りか!」

俺の同級生だ

農家になったんだよ~!って笑いながら
俺に話しかけてくる

「久しぶり…お前、結構筋肉ついたな」

「おっ!分かるか!やっちゃん、ちょっと元気ないんじゃねーの?スイカ食うか?
うめぇぞ、俺が作ったやつだから!」

「いや、目的地に行くんだ」

「そうか…やっちゃん…気をつけていけよ!あ、道の駅寄ってけよ!俺の家のスイカ売ってっから!うめぇから!!!!」

同級生は手を振る

俺は手を振り返して目的地へと進む

-------------------------

そこからあまりミツシと遊ばなくなった

学校で見かけても

帰りで見かけても

ミツシは俺に話しかけてこなくなったし
俺もミツシに話しかけることはなくなって
いった…

それから数年後

俺たちは中学生になった

別クラスだがミツシをたまに見かける

ミツシの顔は少し…変わっていた…

「な、なぁミツシ…」

俺はやっとミツシに話しかけた

数年ぶりだ

「…やっちゃん…?」

メガネをかけたミツシは
なよっとした感じであまり元気がなさそうだった

「やっちゃん!ほんとにごめん!!!!
あれから…何も話せれなくてっ!!!!俺っ…!俺っ!!!!」

ミツシは涙を流していた

俺は

「大丈夫だよ、ミツシ、何があったか聞かせてくれねーか?」



ミツシはあの時の事を話してくれた

ミツシの母親は俺と遊ぶなと言ってきたこと

もし遊んだら習い事を増やし
勉強が終わるまで外に出さないことを

やばい母親だとは思っていたが…

「…ミツシ…」

「やっちゃん…なぁまた俺と遊んでくれる?」

「勿論だよミツシ、俺たち親友じゃん」

「…!やっちゃん!」



俺は家に帰ると

お小遣いが置いてある

興味がないとは言っても

いつも俺の夜ご飯代と朝飯代

それに遊び代を置いておいてくれた

5000円を財布の中に入れ

ミツシとの約束の場所へといく

「…!やっちゃーーーん!」

ニコニコとミツシは俺の所へ駆け寄ってきた

「おう、ミツシ、なんか食べたいもんある?」

「えっ?食べたいもの…?あ、えっと、ママから…外で食べちゃダメって…」



「じゃあゲーセンは?」

「それも…」

「どこならいけんの?」

「俺たちの思い出の場所…」

「あー、あの高台か、いいじゃん、
久々に行こうぜ」

夕焼けの高台…

「風が気持ちいい~!!!!」

そういうミツシの顔はまだ元気がなかった

「…そうだな…」

「ねぇ、やっちゃん…」

「どうしたんだ?」

「自由になるにはどうしたらいいの?」

「分からねぇ…大人になったらできるんじゃねーの?」

「そっか…大人にっていつからなのかな?」



「俺たちが中学卒業して、高校卒業して
就職か大学入るかぐらいでしょ」



「そっか…先は長いなぁ~」

「先生はあっという間っていってたけどな」

「ほんとに…そうなのかな…」

「ミツシ…辛かったら俺に言えよ?」

「ありがとう…やっちゃん…」

--------------------

カチッ…カチッ…バス停の前のベンチで

休憩をしている

タバコをつけて一服…

「ふぅ…」

モクモクと煙が上がる

まだ目的地にはつかない…

--------------------

雨の中、ミツシは泣いていた

ずっと泣いていた

俺は…何もしてやれなかった…

--------------------

救急車とパトカーの音が近所で鳴り響く

俺の家にチャイムが鳴り響く

「やっちゃん!!!!やっちゃん!!!!」

ドアを開けると同級生がたっていた…

「なんだよ…」

「ミツシが…!ミツシが…!!!!!」



野次馬がすごい…

高台の下…

「あのお宅の子よね」

「ミツシ君…」

「凄かったね…ぐちゃぐちゃだった…」



「ミツシ…ミツシ…」

警察の人がミツシの母親を慰めていた

ミツシの弟は泣いていた



数日後でた新聞



ミツシは母親から虐待を…そして
学校ではいじめを受けていたらしい

俺は何も知らなかった…もし俺が
早くに話しかけていたら…

ミツシの弟も母親から虐待を受けていたらしく保護された

彼の元に遺書があったらしくその事を書いていたらしい…

連日のニュースにはミツシの事が流れていた

-----------------------

はぁ…はぁ…汗がすごい…

目的地はもうすぐ…

階段を上る…

俺は高校の受験は
逃げるように他の場所にした

大学も他の場所

親は俺に興味がなく勝手な場所に
行かせてもらったし、家にも帰っていない

たまに形だけ俺から連絡をとっていた

途中の階段で水を飲む

そしてまた進む

「はぁ…」

大人になり社会に出て

俺は色々と経験してきた

しかし、色々なことを知るにつれて

ミツシは…と思ってしまう…

登ってるうちに涼しくなってきた

目の前には夕焼け…

高台…アイツの最後の場所

「はぁ…」

ベンチに座る、目の前には花束がある

「なぁ、ミツシ、久しぶりだな
俺さ、お前のことが忘れられねーんだわ…」

リュックの中に入れてた冷たい酒を取る

「ミツシ、お前、多分酒飲めねーだろうけど、お前が生きてたら同じ27…
仕事も安定してきた頃で飲み会とかやってたかもな…」

酒の蓋を開ける

ゴックゴックと一気飲みする

「ぷっは!つっめてぇえええ!!!」

体に酒が染み込む

「………俺さぁ…社会にあってなかったみたいなんだわ…会社でパワハラ受けてさ…
見事に精神やられちまって…」

よいしょっと俺は立ち上がる

「………お前の最後もこんな景色だったんだな……」

柵から見下ろす真下…

風が気持ちいい…

グッと俺は踏み出す…

「ミツシ、俺もお前のとこに…」

真下からぐちゃぐちゃになってしまった

ミツシが俺の顔を覗き込む

『やっちゃん…!』

ぐちゃぐちゃの中にミツシの笑顔が見える

「…ふっ」

すっと降りようとしたその時

空に声が響いた

「やめろォぉぉおおおおお!!!!!」

ダダダダと走ってくる男に
俺は体をぐいっと掴まれた

「…!!!!!!!」


「…はぁっ!!!!!はぁっ…!!!!!はぁ…!!!!!!まにあっで…よかっ…はぁ…!だぁあああ…!!!!!」

ミツシによく似る男は汗だくで
涙を流しながら俺を抱きしめていた

「…?ミツシ…?」

「俺はムツオ!ミツシ兄の弟だよ!
やっちゃん!!!!」

「八津 知(やづ しらべ)…俺のあだ名呼ぶのは例え親友の弟でも受け入れられんな」

「八津さん!とにかく良かった!!!!」

ムツオは俺の体から離れる

「なんで分かったんだ?俺が高台から飛び降りるって…」

パッ…パッと体の土をはらう

「農家のお兄さんからだよ
連絡が来てさ八津さんの顔色が悪いって
あれ絶対にミツシ兄に誘われてるって!」

「誘われてるって…なんか…」

「よくみて!」

ムツオは他のとこを指さす

また花束などがあり近くには慰霊碑があった

「…?」

「ミツシ兄がここから飛び降りたあと
飛び降りる人が後を絶たないんだ、
と言ってもたまにだけど…下には相談場の連絡所まで出来るぐらいに…」

「…そうか…」

「…見えた?ミツシ兄」

「………」

俺は頷いた

モノクロ映画のように
色鮮やかな記憶ではないが…

確かにミツシが見えた…

彼の顔はスッキリとした
しかし涙を流してる顔だった



ムツオにリュックを持ってもらいながら

下に降りる…

降りる前に振り返るとそこには

夏の陽炎が見させたのだろうか…

笑うミツシが立っていた



「また会おうね」


  

涼しい風が汗を吹き飛ばす

ムツオと話しながら降りていく

昔の記憶に色がつきはじめた


--------------------

END

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

処理中です...