短編集

天川 古雨

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怪異探索

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カチカチカチ…タバコに火をつけるライターの音が聞こえる。

「片場さぁん、原稿受け取りましたよぉ~
今回もいい感じですねぇ~」

タバコを吸う目の前の人から
柔らかな声が聞こえる

私はほっとした

「あ、そいえば片場さぁん、新しい企画始めたくないですかぁ~?」

スパーとモクを吐く
目の前の私の担当者さん

「あ、片場さんもタバコ吸いましょうよぉ~」

灰皿をコトンとこちらに寄せてくる

「あ、はい…」

私はあまり吸わないが別に吸っても
目の前で吸われても構わない喫煙者だ

さっきまで緊張していたし、
こういう場なので遠慮していた

カチカチカチとライターをつける

シュボッと音が鳴る同時に
担当者さんは話を始めた

「んでぇ、まぁ新しい企画の話なんですが~片場さん、リアルなものが欲しいです」

…タバコを落としそうになった

リアルなもの…?

私はしがないホラー小説家だが

「作り話」である。ほとんどの人が
そうだろうが…


「はぁ…リアルなもの…ですか?」


「そう!リアルなもの!実体験をしたら君ももっと成長するかと思って!!!!」


「………あぢっ!!!!!!」

実体験…!?驚きすぎて私はタバコを落としてしまいそうになり急いで取ろうとした時に手を少し焼いてしまった

「大丈夫ですかぁ!?片場さーん!!!!」

その後ちゃんとした処置をしてもらった

---------------------

担当者さんが言うにはこうだ

「実際の怪異が出るとこにいって
実体験を元に書いて欲しい」

…?

私は頭を抱えた

何故、体験募集をしないのか

そもそもほんとに怪異なんて実際に出るのか

いや、私は極度の怖がりなのだ…

ホラー小説を書いてる時も
震えながら電気増し増しで
書いているぐらいなのだが

人は怖いもの見たさゆえなのか
毛布完全装備でホラー映画や
番組などを見てしまう私がいた

そのおかげもあってかホラー小説家となり
ヒット作品をちょこちょこ出してはいるのだ

しかしまだ映画やドラマなどにはなってはいない...

担当者さんは私の才能を埋もれさせまい!
としてこの企画をもちかけたのだという

私はまぁとりあえずその企画を受けてしまい
現在頭を抱えながら家の前へと帰ってくる

ピンポーン…ピンポーン…

目の前にけだるげそうに
チャイムを鳴らしてるヤツがいた

「あっ、今帰ってきたんすか片場さぁん~」

ヘラヘラ笑いながらこっちに手を振るヤツは

オカルトライターの旗芽

「今日も新鮮なネタあるっすよ~」

私の親友であり
私の小説のネタ提供者でもある

そういえば…?

「旗芽、君、確かさ、」

ガチャっと鍵を開けて先に入る

「おじゃましまー、なんすか?片場さん」

「確か霊感…あったんだよね…?」

「…そうっすけど…」

2人で靴を脱ぎ捨てると

リビングへと入りソファへ座る

「急にどうしたんすか、片場さん」

私の対面に胡座をかいてクッションの上に
座る旗芽は首を傾げてカバンの中に入った資料を取りだしていた

「えっとね…担当者さんに新しい企画を始めてみないかって…」

企画が書かれた紙をそっと旗芽に渡す

旗芽はその企画書をじっくりと見た後に
こういった

「...ほんとにいいんすか?これ、」



私は悩みながらもコクコクと頷くと

「そうっすか...わかった、明日行きましょう!男2人旅!心霊スポットツアー始めるっすよ!!!!」

「あ、あっ、明日ぅ!!!!?」

軽快な提案に驚いた後
旗芽は冷蔵庫からビールを取りだし

「乾杯!乾杯!」

と言いながら飲み始めた

私は【怖さ】を和らげるために
彼の【楽しげ】な顔を見ながら
流されるまま飲み始めたのだった

----------------------

幽霊というのは元々は人間である
人間は死ぬと魂になると信じている人は
この国には多いのだ

この現世に留まっている人間の魂は

何らかの未練が残っている

そのほとんどは恨みから

それか自分が死んだのが分かっていない

それは地縛霊と言われている

私はそれらが何故怖いのか
よく考えては

「自分が苦痛を与えられるかもしれないから」

「自分が死ぬかもしれないから」

という自己防衛からであるもので
恐怖を身の底から感じるのかもしれない
のだと

触らぬ神に祟りなしという言葉があれば

触らぬ霊に祟りなしという言葉があるかもしれないと思いにいつも至るのであった

---------------------

ゆさゆさと誰かが私をゆする

「はっ...!」

私は涎を垂らしながら眠っていたようだ

「おはよーっす、片場さん、朝風呂湧いてるっすよ」

「あぁ...旗芽...ありがとう...」

起きたての目を擦りながら風呂へとはいる

あぁ、今日は初めて心霊スポットに向かうのか...と

旗芽は慣れているから守ってはくれるはずだが、風呂はどうしようか...夜のトイレはどうしようか...シャワーを浴びながら黙々と考え込んだ...

「怖い」

その感情が私の頭の中に巻きついていた

-----------------------

車に揺られて1時間

まだ真昼間

「旗芽、まだ昼間だぞ?」

サービスエリアで私は旗芽とうどんを食べている

「昼間の方がいいんすよ、夜だと
結構危険っすから」

ずるずるとそう旗芽はうどんをすする

「で、でも...」

夜の方が出やすいのでは?と言おうと思うと
旗芽が先にこう言う

「...片場さん、夜の方が出やすいんじゃないかとか言うんすか?いいっすよ、俺はいつも見えてんで、ここまで来る時にさっ」

うっ、旗芽は鋭い...

「あ、えっとそういう事じゃなくて...!」

私は必死に言葉を考えた
もし出なかったらとか理由をとにかくつけて

行きたくないから...

「...ビビりっすねぇ...大丈夫っすよ
片場さん、今から行くとこいきゃ
貴方も見えるようになるっすよ」

「えっ...???」

私は冷や汗が止まらなかった...
え?見えるように...?私も...?

「ほら、いくっすよーだから昼間の方がいいんす」

と旗芽はいい返却口へと空になった器を運ぶ

「ごちそうさまっしたー」

とすたすたと旗芽は先に車に戻ってしまった

「......うぅ...!」

震える手を誤魔化しながらうどんを食べ切り
返却口へと返したあと

「ごちそうさまでした...」

とか細い声で車へと戻ったのであった

---------------

車は森林の中にある道路を突っ切っていく

がたがたと揺れるあまり整備されてない土の道も越えていく

越えて言った先には不気味な白い廃墟があった

「ここっす、さぁ入りましょうや」

車を止めて旗芽は先に出た

「おーい」

助手席の私に旗芽は呼びかける

ガチャッ

車のドアが空く

「おーい、聞こえてるっすか~?
うおっ!硬っ!!!!!」

旗芽が揺らすが私の体は固まってる

「地蔵になっちまわないでくださいよ~
ほら、酒もあるっすよ、これで一杯やって
廃墟入りましょうや~それとも笠あげないといけないっすか~?」

「笠地蔵じゃないよぉ...!あと酒飲んだら酔ってしまって取材とかにもならないよぉ...!!!!」

ボロボロ涙が出てくる
怖すぎるのだ、見えるようになると言われて

「見えてしまった方が怖くないですって、さぁ、さぁ」

私は情けなくぶんぶん顔を振る

心霊スポットの廃墟の前で
2人の男性がこんなことしてるとか
夜で有名スポットだったりしたら
別の人に見かけられて困惑されるだろう…

「しゃーなしですねぇ、よいしょ」

「え?」

旗芽はよいしょとなにかの箱を持ってくる

それは私の大切な

「仕事道具のパソコンッ!!!!!
なんでこんなとこに!!?」

「これを今から廃墟の中に」

「行くから!!!!!行く"がら"!!!!」

「うぃ~じゃ、いきましょー」

旗芽こいつ…っ!!!!!!

-------------------

あれから色々とあった…

目がかっぴらいた女の子の霊に追われて
涙と鼻水をだらしなく流しながら
2人で逃げ

この家にあった事件をなんとかして
解決に導き女の子の霊を成仏させたり…

「今回は運悪かったすね、いつもはこんな感じじゃなかったんすが…もしや不幸体質発動しちまったですか?」

旗芽は笑いながらそういう

「旗芽、君はよくこんなことが…?」

「あぁ、あるっすよ~、助けてもらいたい幽霊がこっち閉じ込めてきて追っかけっ子したりとかバトルしたりとか…まさかここの霊もそうなっちまったとは、色んな人が来るからですかいね~?」

「そ、そうか…」

今日はもう疲れた…外はもう夕方

車が家へと走る…

「あ、家へ帰れると思ってるっす?」

えっ?

私は運転席の旗芽の顔を見る

「ほら、仕事道具のパソコン持ってきてっでしょ、執筆期間、俺、知ってるんすよ?」

「えっ…?は、話してないけど…」

「兄から頼まれたんで、心霊ツアー案内してあげてくれって!」

「………!!!!!!」

「あれ?担当の苗字聞いてないんすか?は」

「嫌だァァああああああああぁぁぁっ!!!!!!!!!」

車の中に私の声は響き渡った

-------------

終わり
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