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9.責任取ってよ
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レグルスに口を塞がれる瞬間まで、俺はこの世界を作り物のように考えていたのだと思う。
出会う人間はキャラクター。
国は物語が起きる舞台で、襲って来る敵軍や魔物はギミック。
流星槍も地鳴剣も、凄まじい力を持っているが、それはそういうもので。
各所に効率良く配置されたアイテムと、認識的には変わらない。
だってこの世界はゲームなんだから。
これから何が起きるかだって、俺は全部知ってる。
だから助けられると、当然のように考えていた。
俺が事前に槍を見つけてレグルスに渡しただけで、一国丸ごと生き延びた。
幸い死者もなく、レグルスからは感謝され、王様という支援者を得た。
この世界に来てから俺は、何をすれば『それ』を食い止められるか、一生懸命考えた。
隣国の野心やそれを上回る闇の魔女の思惑を回避して、勇者が誰を不幸にする事もなく、皆が平和で幸せに暮らしていく為に。
でもそれは勘違いで、ただの自己満足だったのかもしれない。
『良い事をした』という、手っ取り早い満足感が欲しくて、俺はキャラへの接し方を間違えた。
リウィアは序盤のお助けキャラだから、利用すればいいなんて、道具のように考えていた。
実際レグルスに話を聞くまで、俺は彼女と知り合うのも悪くないと思っていたのだ。
ドルシアは商人の娘で、思考の裏をかく賢さがある。
ドルシアルートでは主人公の現代の知識を元に大ヒット商品を連発、彼女と商会の名が大陸に轟く──というエンディングを迎える。
俺の正体を知られたら、彼女に利用されるのではと、そんな事を考え距離を取った。
一度も話した事はないのに、一方的なイメージのみで行動してしまった。
サビアは奔放なイメージがあって、深く考えもせずあんな酷い事を言ってしまった。
自分の思った通りに動くだろうと……画面に出た選択肢を選ぶ程度の軽い気持ちだった。
断られるとか、嫌われるなんて考えてもいなかった。
だってサビアは町の住人の習慣で、どうせ外の男を選ぶ。
俺への興味も、作中でのレグルスへとの一夜も違いはないように思え、目の前のトラブルを回避する事を優先した。本当に自分勝手な都合で。最低だ。
彼女に殴られ怒られて。
一部始終を聞いていたレグルスに、問い質された後口を塞がれてからやっと、俺は初めて自分がとんでもない勘違いをしていると気付いた。
「まてっ、ちが」
違う。
キャラクターじゃない。
こいつらは人間だ。意思を持つ一人が、目の前にいる。
「う、く……」
作中一の美形で勇者、力も強く体格も見事な『男』。
そうだよっ、お前男じゃねーか!
どうすれば男の俺を襲うなんていう選択肢が生まれるんだ!? 一体お前に何があった!
「おおお落ち着けレグルス、間違えるな、俺だぞ」
「はあ、ユウキ殿……」
わかってんのかーい!
妙にイイ声で切なげに人の名前を呼ぶんじゃありません!
俺が上嶋悠生と承知の上での狼藉とあらばお前……
「ど、どうしよう」
「……くっ」
「ってアレだ、流星槍使用の副作用な! えーとえーと」
男相手に発情するなんて聞いてねえぞ!
その辺どうなってますかメーカー? ○○ソフトさーん!
しかし万物を作りし筈の老舗エロゲーメーカーから返答はなく、俺は隙あらば口と口をくっ付けようとする勇者様から逃げるのに必死で、考えがまとまらない。
「うう、うわ、わあ……」
何度も繰り返すうちに疲れてきて、『キスぐらい良いか、口と口がくっついてるだけだし』などとおかしな思考になってきた。
だって力じゃ敵わないし……逃げようとすると抱え込まれてもっとヤバい体勢に持ち込まれるしで、段々諦めがついてきた。
ほぼ無抵抗でレグルスの好きなようにさせていると、ふとある事に気付く。
「っ、んお……?」
口だの舌だの、どこか一部が触れていると相手は楽になるようで、動きが止まる。
でも俺が抵抗すると押さえつけてでもそれを続けようとする。
そう、必要なのは粘膜接触。
「はあ、ふう」
でもレグルスはキスばかり繰り返していて、先へ進もうとはしない。
考えるだけで恐ろしいが、こいつがその気になったら二秒でぶち込まれてると思うんだよな。基本即断即決の男なので。
しっかり口合わせてる割に俺の舌を遠慮がちにつついたり、押し返すと慌ててしっこむのは、何かイメージと違う。
慣れた様子でガンガン攻めて来られても困るけど、このむずがゆい接触は一体……?
「な、なあレグルス」
「……はい」
「苦しいんだよな? 分かってる。体が熱くてどうしようもないんだろ?」
「そう、です」
フーッ、フーッと耳元に零される荒い呼吸。
歯を食いしばって耐えるその顔が、俺を見てふにゃりと崩れる。
自身の変化に困惑し、大人に縋る子供のように。
「どうしたら楽になるか、分かるか?」
「……っ」
完全に体を倒さないのは、知られたくないからか。
ゲームをプレイ済みな俺には薄々察せられる事態だが、レグルスにしてみれば未知の事態だろう。
「先程その……仰っていた行為を……」
「……うん」
双方微妙に視線をずらす。
このいたたまれなさよ。なんも言えねえ。
「ええっと……お前が楽になる為に、と。これからも流星槍を使い続けて行くにはさ、しょ、処女の女の子と、そういう事をしなきゃいけないっていう……」
「無理です」
「早ぇよ!」
即断即決そういう使い方じゃないから!
「諦めんな! お前のこの顔ならいけるって! 出会った女に片っ端から声かけていけば」
そうやって、ゲームのレグルスは完成した。
実際そういう事なんだろう。
やむにやまれず、引くに引けずに女の子の処女を食い散らかして、あの結末。
ゲームのレグルスは全然嬉しそうじゃなかった。
抱いた女──ヒロイン達と再会しても、誰一人覚えてなかったし気にしてもいなかった。
ただ冷たい目をして……それだけ。
目の前の敵にだけ憎しみを向けていた。
「そういう問題ではありません」
「そ、そうだよな……」
「女と床を共にした事がないので」
「ええええええっ!?」
レグルス、まさかの童貞宣言っ!?
衝撃に叫んだ俺に、真っ赤になった男が『なんですか、いけませんか』と睨んでくる。
「いいいいけなくはないけど、だって、ええ……?」
「だって、何です」
「だってレグルスだし」
あのヤリチン勇者がまさか童貞とは思うまい。
相当発育良かったらしいし、この顔であの功績、地位、名誉。
絶対女が放っておかない。
初体験十二とか言われても納得する。
「この顔で生きてきてよく今まで無事だったな」
「私がその気にならなければ、流れる話ではありますよ」
「え? ああ、そう……か?」
ふいと顔を背けてしまったレグルスの、表情はそれ以上読めない。
でも確かに、男がその気じゃなければ回避可能イベント……か?
「美人とかスタイルいい子とかえっちなおねえさんに迫られて何も反応しなかったの?」
「なんといいますか……色々と折悪く」
戦で疲労困憊、指一本動かすのも億劫というタイミングで裸の女に跨がられても、そもそも戦場に居る女は怪しすぎて刺客にしか見えない。
即拘束して上官に突き出せば、なんとその上官の娘だったりして、その場で壮絶な親子喧嘩が始まった。
更に愛娘を誘惑した男として憎まれ、理不尽な目に遭ったという。
「屋敷に来た女もいましたが、いずれも会った事も話した事もない他人ですし……」
『あなたが好きなの』と言われても、どちら様ですかとしか言えない。
許可もアポもないまま自室に忍んで来られたら、それは立派な家宅侵入罪。
通報すれば『またですかぁ』と呆れられ、恥ずかしい思いを何度もした。
「な、なるほど……?」
「困ったものです」
さりげなく演出される出会いの場も、その殆どが仕事中。
農民上がりがと蔑まれ、油断するとすぐに足元を掬われる王都にて、女を見る余裕など無い。
そもそも罠もしくは王の騎士の妻目当ての女ではないか、と思ってしまうレグルスは、立派な人間不信だった。
庶民の女もレグルスを前にすると、態度がおかしくなり要らぬ争いが起きる。
妻を持つ者からは警戒され、独身者には文句を言われ。
トラブルになると『お前のせいだろ、なんとかしろ』。
関わってもろくな事がなく、そのうち女性そのものが苦手になってしまった。
「まさかあのレグルスが童貞だと……」
言われてみればぎこちなく、初々しいキスだった……ような?
なんだか不慣れな初心者にお伺いを立てられてるみたいで、違和感はあったのだ。
でもレグルスに限ってまさかという思いが、目を曇らせていたみたい。
「レグルスは童貞……」
「繰り返さずとも。それより貴方はどうなんです?」
「だっだだだ誰が童貞だってぇ!? ちちちがちがい違いますけどぉ? どどど童貞ちゃうわ!」
あ、しまった。
勢いに任せて嘘ついちゃった。
だって馬鹿にされたくなくてぇ!
一個とはいえ俺のが年上だしぃ……ああそうだよっ、見栄張っただけっ!
「……ほう。経験者であれば、これの対処法もご存じでしょう」
「そ、そうだよぉ?」
「あの槍を使ってから、おかしなものが見えるのです。人の体を光がこう、ぐるりと……」
「ああそれ、生命エネルギーね」
基本薄緑が生命エネルギーで、薄紫が魔力だったはず。
ちなみに人によって色の濃淡や光の強度あり。
「あなたの光は他の者より強く、触れているとほっとして……楽になるような気がする」
「おおおお俺!?」
「ええ。ずっと触れていたい」
非処女との接触は、レグルスにとっては不快、また酷い反発がある。
闇の魔女がそれを利用してレグルスを痛めつけていたんですよ。
やっぱ千年以上生きてるビッ○はモノが違うわ。いわゆる逆レってやつだな。
「え、え? そういうこと?」
逆に処女の力や魔力は心地よく感じて癒やされると。
あまり考えたくはないけれど、厳密に言えば俺も『未通』ではある。
え、ガチで処女カウントされてんの?
なんだそのミラクル要らねえええ!
「そ、そうね……」
ヤバい、話変わってきたわ。
俺と接触すれば少し収まっているようで、だからレグルスはあんなことをしたと。
……理由はわかったが納得はできない。
でも地鳴剣使用後の主人公も『体が、熱い……!』なんて言って即えっちイベントに突入していた。
レグルスも槍を使った直後にこの症状。
そして使わせたのは俺。
なんというか……罪悪感が、あるよね……!
「ちょ、ちょっと待って」
触れるだけならギリいけるか。
いけるか? 本当にいけんのかっ?
レグルスだぞ? どんなに綺麗でも美形でもレグルスは、男!
「だからって放っておくわけには……ああああ」
「はあ、ユウキ……っ」
「こんなタイミングで呼び捨て解禁すなー! 雰囲気出すなあああ!」
出会う人間はキャラクター。
国は物語が起きる舞台で、襲って来る敵軍や魔物はギミック。
流星槍も地鳴剣も、凄まじい力を持っているが、それはそういうもので。
各所に効率良く配置されたアイテムと、認識的には変わらない。
だってこの世界はゲームなんだから。
これから何が起きるかだって、俺は全部知ってる。
だから助けられると、当然のように考えていた。
俺が事前に槍を見つけてレグルスに渡しただけで、一国丸ごと生き延びた。
幸い死者もなく、レグルスからは感謝され、王様という支援者を得た。
この世界に来てから俺は、何をすれば『それ』を食い止められるか、一生懸命考えた。
隣国の野心やそれを上回る闇の魔女の思惑を回避して、勇者が誰を不幸にする事もなく、皆が平和で幸せに暮らしていく為に。
でもそれは勘違いで、ただの自己満足だったのかもしれない。
『良い事をした』という、手っ取り早い満足感が欲しくて、俺はキャラへの接し方を間違えた。
リウィアは序盤のお助けキャラだから、利用すればいいなんて、道具のように考えていた。
実際レグルスに話を聞くまで、俺は彼女と知り合うのも悪くないと思っていたのだ。
ドルシアは商人の娘で、思考の裏をかく賢さがある。
ドルシアルートでは主人公の現代の知識を元に大ヒット商品を連発、彼女と商会の名が大陸に轟く──というエンディングを迎える。
俺の正体を知られたら、彼女に利用されるのではと、そんな事を考え距離を取った。
一度も話した事はないのに、一方的なイメージのみで行動してしまった。
サビアは奔放なイメージがあって、深く考えもせずあんな酷い事を言ってしまった。
自分の思った通りに動くだろうと……画面に出た選択肢を選ぶ程度の軽い気持ちだった。
断られるとか、嫌われるなんて考えてもいなかった。
だってサビアは町の住人の習慣で、どうせ外の男を選ぶ。
俺への興味も、作中でのレグルスへとの一夜も違いはないように思え、目の前のトラブルを回避する事を優先した。本当に自分勝手な都合で。最低だ。
彼女に殴られ怒られて。
一部始終を聞いていたレグルスに、問い質された後口を塞がれてからやっと、俺は初めて自分がとんでもない勘違いをしていると気付いた。
「まてっ、ちが」
違う。
キャラクターじゃない。
こいつらは人間だ。意思を持つ一人が、目の前にいる。
「う、く……」
作中一の美形で勇者、力も強く体格も見事な『男』。
そうだよっ、お前男じゃねーか!
どうすれば男の俺を襲うなんていう選択肢が生まれるんだ!? 一体お前に何があった!
「おおお落ち着けレグルス、間違えるな、俺だぞ」
「はあ、ユウキ殿……」
わかってんのかーい!
妙にイイ声で切なげに人の名前を呼ぶんじゃありません!
俺が上嶋悠生と承知の上での狼藉とあらばお前……
「ど、どうしよう」
「……くっ」
「ってアレだ、流星槍使用の副作用な! えーとえーと」
男相手に発情するなんて聞いてねえぞ!
その辺どうなってますかメーカー? ○○ソフトさーん!
しかし万物を作りし筈の老舗エロゲーメーカーから返答はなく、俺は隙あらば口と口をくっ付けようとする勇者様から逃げるのに必死で、考えがまとまらない。
「うう、うわ、わあ……」
何度も繰り返すうちに疲れてきて、『キスぐらい良いか、口と口がくっついてるだけだし』などとおかしな思考になってきた。
だって力じゃ敵わないし……逃げようとすると抱え込まれてもっとヤバい体勢に持ち込まれるしで、段々諦めがついてきた。
ほぼ無抵抗でレグルスの好きなようにさせていると、ふとある事に気付く。
「っ、んお……?」
口だの舌だの、どこか一部が触れていると相手は楽になるようで、動きが止まる。
でも俺が抵抗すると押さえつけてでもそれを続けようとする。
そう、必要なのは粘膜接触。
「はあ、ふう」
でもレグルスはキスばかり繰り返していて、先へ進もうとはしない。
考えるだけで恐ろしいが、こいつがその気になったら二秒でぶち込まれてると思うんだよな。基本即断即決の男なので。
しっかり口合わせてる割に俺の舌を遠慮がちにつついたり、押し返すと慌ててしっこむのは、何かイメージと違う。
慣れた様子でガンガン攻めて来られても困るけど、このむずがゆい接触は一体……?
「な、なあレグルス」
「……はい」
「苦しいんだよな? 分かってる。体が熱くてどうしようもないんだろ?」
「そう、です」
フーッ、フーッと耳元に零される荒い呼吸。
歯を食いしばって耐えるその顔が、俺を見てふにゃりと崩れる。
自身の変化に困惑し、大人に縋る子供のように。
「どうしたら楽になるか、分かるか?」
「……っ」
完全に体を倒さないのは、知られたくないからか。
ゲームをプレイ済みな俺には薄々察せられる事態だが、レグルスにしてみれば未知の事態だろう。
「先程その……仰っていた行為を……」
「……うん」
双方微妙に視線をずらす。
このいたたまれなさよ。なんも言えねえ。
「ええっと……お前が楽になる為に、と。これからも流星槍を使い続けて行くにはさ、しょ、処女の女の子と、そういう事をしなきゃいけないっていう……」
「無理です」
「早ぇよ!」
即断即決そういう使い方じゃないから!
「諦めんな! お前のこの顔ならいけるって! 出会った女に片っ端から声かけていけば」
そうやって、ゲームのレグルスは完成した。
実際そういう事なんだろう。
やむにやまれず、引くに引けずに女の子の処女を食い散らかして、あの結末。
ゲームのレグルスは全然嬉しそうじゃなかった。
抱いた女──ヒロイン達と再会しても、誰一人覚えてなかったし気にしてもいなかった。
ただ冷たい目をして……それだけ。
目の前の敵にだけ憎しみを向けていた。
「そういう問題ではありません」
「そ、そうだよな……」
「女と床を共にした事がないので」
「ええええええっ!?」
レグルス、まさかの童貞宣言っ!?
衝撃に叫んだ俺に、真っ赤になった男が『なんですか、いけませんか』と睨んでくる。
「いいいいけなくはないけど、だって、ええ……?」
「だって、何です」
「だってレグルスだし」
あのヤリチン勇者がまさか童貞とは思うまい。
相当発育良かったらしいし、この顔であの功績、地位、名誉。
絶対女が放っておかない。
初体験十二とか言われても納得する。
「この顔で生きてきてよく今まで無事だったな」
「私がその気にならなければ、流れる話ではありますよ」
「え? ああ、そう……か?」
ふいと顔を背けてしまったレグルスの、表情はそれ以上読めない。
でも確かに、男がその気じゃなければ回避可能イベント……か?
「美人とかスタイルいい子とかえっちなおねえさんに迫られて何も反応しなかったの?」
「なんといいますか……色々と折悪く」
戦で疲労困憊、指一本動かすのも億劫というタイミングで裸の女に跨がられても、そもそも戦場に居る女は怪しすぎて刺客にしか見えない。
即拘束して上官に突き出せば、なんとその上官の娘だったりして、その場で壮絶な親子喧嘩が始まった。
更に愛娘を誘惑した男として憎まれ、理不尽な目に遭ったという。
「屋敷に来た女もいましたが、いずれも会った事も話した事もない他人ですし……」
『あなたが好きなの』と言われても、どちら様ですかとしか言えない。
許可もアポもないまま自室に忍んで来られたら、それは立派な家宅侵入罪。
通報すれば『またですかぁ』と呆れられ、恥ずかしい思いを何度もした。
「な、なるほど……?」
「困ったものです」
さりげなく演出される出会いの場も、その殆どが仕事中。
農民上がりがと蔑まれ、油断するとすぐに足元を掬われる王都にて、女を見る余裕など無い。
そもそも罠もしくは王の騎士の妻目当ての女ではないか、と思ってしまうレグルスは、立派な人間不信だった。
庶民の女もレグルスを前にすると、態度がおかしくなり要らぬ争いが起きる。
妻を持つ者からは警戒され、独身者には文句を言われ。
トラブルになると『お前のせいだろ、なんとかしろ』。
関わってもろくな事がなく、そのうち女性そのものが苦手になってしまった。
「まさかあのレグルスが童貞だと……」
言われてみればぎこちなく、初々しいキスだった……ような?
なんだか不慣れな初心者にお伺いを立てられてるみたいで、違和感はあったのだ。
でもレグルスに限ってまさかという思いが、目を曇らせていたみたい。
「レグルスは童貞……」
「繰り返さずとも。それより貴方はどうなんです?」
「だっだだだ誰が童貞だってぇ!? ちちちがちがい違いますけどぉ? どどど童貞ちゃうわ!」
あ、しまった。
勢いに任せて嘘ついちゃった。
だって馬鹿にされたくなくてぇ!
一個とはいえ俺のが年上だしぃ……ああそうだよっ、見栄張っただけっ!
「……ほう。経験者であれば、これの対処法もご存じでしょう」
「そ、そうだよぉ?」
「あの槍を使ってから、おかしなものが見えるのです。人の体を光がこう、ぐるりと……」
「ああそれ、生命エネルギーね」
基本薄緑が生命エネルギーで、薄紫が魔力だったはず。
ちなみに人によって色の濃淡や光の強度あり。
「あなたの光は他の者より強く、触れているとほっとして……楽になるような気がする」
「おおおお俺!?」
「ええ。ずっと触れていたい」
非処女との接触は、レグルスにとっては不快、また酷い反発がある。
闇の魔女がそれを利用してレグルスを痛めつけていたんですよ。
やっぱ千年以上生きてるビッ○はモノが違うわ。いわゆる逆レってやつだな。
「え、え? そういうこと?」
逆に処女の力や魔力は心地よく感じて癒やされると。
あまり考えたくはないけれど、厳密に言えば俺も『未通』ではある。
え、ガチで処女カウントされてんの?
なんだそのミラクル要らねえええ!
「そ、そうね……」
ヤバい、話変わってきたわ。
俺と接触すれば少し収まっているようで、だからレグルスはあんなことをしたと。
……理由はわかったが納得はできない。
でも地鳴剣使用後の主人公も『体が、熱い……!』なんて言って即えっちイベントに突入していた。
レグルスも槍を使った直後にこの症状。
そして使わせたのは俺。
なんというか……罪悪感が、あるよね……!
「ちょ、ちょっと待って」
触れるだけならギリいけるか。
いけるか? 本当にいけんのかっ?
レグルスだぞ? どんなに綺麗でも美形でもレグルスは、男!
「だからって放っておくわけには……ああああ」
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