10 / 35
9 初体験
しおりを挟む
──くそ、朝の電車ってこんなに混んでるのかよ
俺は今、人生初めてとなる満員電車を経験していた。前も後ろも右も左も人だらけでうざすぎる。
日向はこんな目に遭いながら毎日学校に行っていたのかと思うとシンプルに尊敬する。
それにしても同じ星学の制服を着た生徒が全然見当たらない。そういえば日向はいつも俺たちが学校へ行く時間よりも、1時間ほど早く家を出ていたような気がする。時間を間違えているわけでは無いはずだが少し心配になる。
いつもだったら学校に遅刻することなんて普通だし、時間通りに学校に着く方が珍しい。
星学の制服を着ているだけでなんだか、優等生にならなくてはと思ってしまう。
一駅止まるごとに電車から人が降りて行くのだがそれと同じぐらいに人が入ってきて、永遠に続くこの窮屈な空間にうんざりしている時、お尻に変な感触を感じた。
──ん? これはもしかして人の手か?
まさかと思い、顔を下げて後ろをチラリと見るとスーツを着た中年男が俺のお尻に手の甲を当てていた。
俺は、男が男に痴漢とか有り得ない。
昨日の出来事のせいで男同士ということに敏感になってしまっているだけだろう。満員電車だし偶然かと思いとりあえず放っておくことにした。
一駅分様子を見ていたが、これは認めたくは無いがおそらく俺は今痴漢に遭っている。手の甲だったのがいつのまにか手のひらでナチュラルに俺の尻を揉んできている。
殴りたい、殴りたいのだが……俺は今星宮学園の制服を着た優等生なのだ。不祥事を起こすわけには行かないし、男が痴漢に遭ったなんて知られたら一生の恥だ。
必死で殴りたい気持ちを抑え、降りる駅まで我慢をする。
あと一駅っというところで痴漢野郎は俺の耳元で何かを囁き始める。
「君、星宮学園の生徒でしょ? 可愛いね、学校サボっておじさんと楽しいことしな」
──殴りたい、我慢、殴りたい、我慢
痴漢野郎の声を聞かないようにとにかく殴りたい気持ちと、我慢しなければという気持ちが俺の脳を埋め尽くし、葛藤している。
反抗しない俺をいいことに痴漢野郎の手が大胆にも前の方に移動して、俺の大事なムスコを触り始める。
「……っ、くそっ、やめろ」
「ふふ、可愛いねぇ」
その時ちょうど俺の降りる駅に電車が到着して扉が開いた。ホッとした俺は急いで電車を降りようとしたが、そのまま降りるのもシャクなので痴漢野郎の足の先を思いっきり踏んで出て行ってやった。
痴漢野郎はあまりの痛さにうずくまっていた。本当は殴ってやりたいところをあれだけで済ませてやったんだ感謝してほしい。
なんとか大事には至らずに安心した俺だが、まさか男に痴漢されるとはと今更ながらショックである。
日向のフリをしているが見た目は俺なわけで、痴漢に遭ったのも俺なのだ。ヤバキタの御子柴と恐れられている俺がまさか男に痴漢されるなんて情けなさすぎる。
オメガじゃあるまいし……まぁ、オメガなんだけどさ。
落ち込みながら駅を出て、目的地である星宮学園に向かった。
◇◇◇
駅を出てからは無事に学校に着いた。
日向から教えてもらった教室へ向かうと教室内には俺以外のクラスメイトが全員おり、5分前にも関わらずきっちり席に着いていた。
まじか……5分前に着くとか俺優等生じゃね、とか思ってたのにこいつら化け物かよと不良と喧嘩する時よりも怖かった。
一つだけ空いている席を見つけた俺は、おそらくそこが日向の席だろうと迷わずに席に座った。
「おはよう日向くん! 今日は遅かったね」
「あ、うん、ちょっとね」
「休みかと思って心配したよ」
「今日も可愛いね」
「あ、ありがとう」
なんか俺が席に着いた途端にクラスメイト達が続々と朝の挨拶をしてくる。平気で可愛いとか言ってきて、本当に怖いんだけど……
これを毎日、日向はしているのかと思うとやはり尊敬する。
俺、一週間持つかなと心配になった。
俺は今、人生初めてとなる満員電車を経験していた。前も後ろも右も左も人だらけでうざすぎる。
日向はこんな目に遭いながら毎日学校に行っていたのかと思うとシンプルに尊敬する。
それにしても同じ星学の制服を着た生徒が全然見当たらない。そういえば日向はいつも俺たちが学校へ行く時間よりも、1時間ほど早く家を出ていたような気がする。時間を間違えているわけでは無いはずだが少し心配になる。
いつもだったら学校に遅刻することなんて普通だし、時間通りに学校に着く方が珍しい。
星学の制服を着ているだけでなんだか、優等生にならなくてはと思ってしまう。
一駅止まるごとに電車から人が降りて行くのだがそれと同じぐらいに人が入ってきて、永遠に続くこの窮屈な空間にうんざりしている時、お尻に変な感触を感じた。
──ん? これはもしかして人の手か?
まさかと思い、顔を下げて後ろをチラリと見るとスーツを着た中年男が俺のお尻に手の甲を当てていた。
俺は、男が男に痴漢とか有り得ない。
昨日の出来事のせいで男同士ということに敏感になってしまっているだけだろう。満員電車だし偶然かと思いとりあえず放っておくことにした。
一駅分様子を見ていたが、これは認めたくは無いがおそらく俺は今痴漢に遭っている。手の甲だったのがいつのまにか手のひらでナチュラルに俺の尻を揉んできている。
殴りたい、殴りたいのだが……俺は今星宮学園の制服を着た優等生なのだ。不祥事を起こすわけには行かないし、男が痴漢に遭ったなんて知られたら一生の恥だ。
必死で殴りたい気持ちを抑え、降りる駅まで我慢をする。
あと一駅っというところで痴漢野郎は俺の耳元で何かを囁き始める。
「君、星宮学園の生徒でしょ? 可愛いね、学校サボっておじさんと楽しいことしな」
──殴りたい、我慢、殴りたい、我慢
痴漢野郎の声を聞かないようにとにかく殴りたい気持ちと、我慢しなければという気持ちが俺の脳を埋め尽くし、葛藤している。
反抗しない俺をいいことに痴漢野郎の手が大胆にも前の方に移動して、俺の大事なムスコを触り始める。
「……っ、くそっ、やめろ」
「ふふ、可愛いねぇ」
その時ちょうど俺の降りる駅に電車が到着して扉が開いた。ホッとした俺は急いで電車を降りようとしたが、そのまま降りるのもシャクなので痴漢野郎の足の先を思いっきり踏んで出て行ってやった。
痴漢野郎はあまりの痛さにうずくまっていた。本当は殴ってやりたいところをあれだけで済ませてやったんだ感謝してほしい。
なんとか大事には至らずに安心した俺だが、まさか男に痴漢されるとはと今更ながらショックである。
日向のフリをしているが見た目は俺なわけで、痴漢に遭ったのも俺なのだ。ヤバキタの御子柴と恐れられている俺がまさか男に痴漢されるなんて情けなさすぎる。
オメガじゃあるまいし……まぁ、オメガなんだけどさ。
落ち込みながら駅を出て、目的地である星宮学園に向かった。
◇◇◇
駅を出てからは無事に学校に着いた。
日向から教えてもらった教室へ向かうと教室内には俺以外のクラスメイトが全員おり、5分前にも関わらずきっちり席に着いていた。
まじか……5分前に着くとか俺優等生じゃね、とか思ってたのにこいつら化け物かよと不良と喧嘩する時よりも怖かった。
一つだけ空いている席を見つけた俺は、おそらくそこが日向の席だろうと迷わずに席に座った。
「おはよう日向くん! 今日は遅かったね」
「あ、うん、ちょっとね」
「休みかと思って心配したよ」
「今日も可愛いね」
「あ、ありがとう」
なんか俺が席に着いた途端にクラスメイト達が続々と朝の挨拶をしてくる。平気で可愛いとか言ってきて、本当に怖いんだけど……
これを毎日、日向はしているのかと思うとやはり尊敬する。
俺、一週間持つかなと心配になった。
0
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
アルファのアイツが勃起不全だって言ったの誰だよ!?
モト
BL
中学の頃から一緒のアルファが勃起不全だと噂が流れた。おいおい。それって本当かよ。あんな完璧なアルファが勃起不全とかありえねぇって。
平凡モブのオメガが油断して美味しくいただかれる話。ラブコメ。
ムーンライトノベルズにも掲載しております。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学で逃げ出して後悔したのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞に応募しましたので、見て頂けると嬉しいです!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
【本編完結】完璧アルファの寮長が、僕に本気でパートナー申請なんてするわけない
中村梅雨(ナカムラツユ)
BL
海軍士官を目指す志高き若者たちが集う、王立海軍大学。エリートが集まり日々切磋琢磨するこの全寮制の学舎には、オメガ候補生のヒート管理のため“登録パートナー”による処理行為を認めるという、通称『登録済みパートナー制度』が存在した。
二年生になったばかりのオメガ候補生:リース・ハーストは、この大学の中で唯一誰ともパートナー契約を結ばなかったオメガとして孤独に過ごしてきた。しかしある日届いた申請書の相手は、完璧な上級生アルファ:アーサー・ケイン。絶対にパートナーなんて作るものかと思っていたのに、気付いたら承認してしまっていて……??制度と欲望に揺れる二人の距離は、じりじりと変わっていく──。
夢を追う若者たちが織り成す、青春ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる