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17 部室
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時間は過ぎて放課後になった。
今日こそは映画研究部に顔を出さなければと思ったが、日向に場所を聞くのを忘れていた。
探すのもめんどくさいし、帰ろうと思ったがスマホを返してもらったことを思い出し、日向に電話をかける。
「もしもーし、どうしたの?」
なかなか出ないから諦めようとした時、日向の声が聞こえた。
「映画研究部の部室ってどこだ?」
「あー、そういえば言ってなかったね」
普通に会話をしている日向の声の後ろの方から何やら聞き覚えのある喘ぎ声が聞こえる。
「あっ……ひな、た、そこ……だめぇ」
間違いない凛の声だ。
「しー、正義に聞こえちゃうよ」
聞こえてますよー。コイツら電話しながら何やってんだよ。
「おい! さっさと答えろや」
「あー、ごめんごめん、校舎の裏に部室棟があるからその一階の隅だよ。看板が出てるからわかると思う」
「イク……ひ、なた、イッちゃうか、ら」
「いいよ、イッ──」
俺はそこで通話を切った。
今のは聞かなかったことにしよう。俺は日向が言っていた部室棟へ向かった。
言われた通り校舎裏に向かうと立派な部室棟が建っていた。部室棟と言ったらボロいイメージをするだろうが、この学園の部室棟はめちゃくちゃ綺麗だ。下手したらヤバキタの校舎よりも綺麗ででかい。
中に入り一階の隅の扉へ歩いていくと映画研究部と書かれた看板が立てられてあった。
ドアノブを捻りそっと扉を開けて中を見ると部室には誰もいなかった。
「んだよ、誰もいねーじゃねーか」
少し緊張していたのに誰もいない部屋に拍子抜けしてしまう。
部室の中に入ると、プロジェクターとスクリーン、座り心地の良さそうなソファが置いてあった。
壁一面には映画のポスターが貼ってあり、見回しているとホワイトボードがかけられており、御子柴日向と書かれたマグネットプレートが貼ってあった。
おそらく部活に来たかのチェックをするためのものだろう。部員のマグネットプレートを見ていると、まさかの人物の名前が書いてあることに気づく。
「はあー!! 久住竜二だと!?」
何度も確認するがそこには久住と間違いなく書かれている。
まさかあいつも日向と同じ映画研究部なのかよ、俺と久住の他にも部員はおり全員で十名ほど所属しているようだ。
参加した日を見るとここ一週間は部活に来てないらしい。しかしまさかの今日の日付の欄には出席欄に丸がつけられていた。他の部員も出席欄に丸がついているのにどこにも見当たらない。
これは待った方がいいのだろうか……でも、久住と遭遇するのは避けたい。今日のところは出席欄に丸だけつけて帰ろうとした時、部室の扉が開いた。
久住以外であってくれと願った俺の思いも虚しく、部室に現れたのは久住と久住の腕を掴んで一緒に入って来た俺たちと同じ制服を着た男子生徒だった。
「あ? んだよ、お前も来てたのか」
「あれれ~もしかしてー、御子柴日向くん?」
「え? そうですけど」
久住は四時間目にあった時の表情ではなく、素知らぬ顔で俺に話しかけて来た。男の方は俺のことを見つけて興味津々でみてくる。可愛い系の顔をした男で、ぶりっ子みたいな喋り方でいけすかねぇ。日向の方が絶対可愛いと思う。
「噂通り可愛い~、僕は3年の江古田渚だよ、よろしくねー、でもなんかアルファって感じしないね」
「は? そうですかねー」
まさか久住よりも年上だったとは驚きだ。それに俺がアルファじゃないことを感じているようで非常にまずい。
俺はテキトーに反応をして誤魔化す。この男、見た目は可愛いがおそらくアルファだ。
江古田は笑顔で俺に近づき俺の顔をじっと見る。
「な、なんですか?」
「いやー、お肌綺麗だなと思って、若いってうらやましぃ」
若いって2歳しか変わらないだろ……そんなツッコミを心の中でする。
すると江古田は俺の耳元に口を寄せる。
「残念だけど、竜二は僕のものだからね。ちょっと学園のアイドルとかチヤホヤされて調子乗るなよ。君みたいな一般家庭の底辺アルファなんて僕なら一瞬で潰せんだからな……ほんとお肌もちもちだねー」
「……っ」
耳元から口を話すとぶりっ子の話し方に戻り、俺の頬をぷにぷにと触ってきた。
こいつ相当性格ヤベェ奴だ。久住よりも遥かにやばい感じがする。俺の中の本能が危険だと訴えてきている。
江古田は俺から顔を離すと先ほどの可愛らしい笑顔で、久住の腕に引っ付いている。
そういえばホワイトボードの部員名の欄には江古田の名前はなかった。ならこいつらこんなところで何する気なんだよ。
「ねー日向くんさぁ~、空気読んでよね」
「えっ」
考えごとをしていた俺は、部室の入り口で固まってしまっていた。
「まぁ、見たいって言うんだったら別にいいけどさー」
江古田は俺の方をみてニヤニヤとほくそ笑んでいる。一方の久住は俺を睨み
「さっさと出てけ」
と、どすの利いた声でそう一言言った。
なんだかいつもの久住の雰囲気と違うことに気づき、これ以上江古田と関わるのはまずいと思い、今回は久住のいうことを素直に聞き部室を出て行った。そんな俺を江古田はクスクスと笑って見ていた。
結局その日はそのまま家に帰った。
◇◇◇
「あー、部室に久住先輩来たんだ」
「聞いてねーぞ、久住と同じ部活だなんて」
帰ってきた俺は日向の部屋に向かい、今日の出来事を話し同じ部活だったことについて問いただしていた。
「ごめんごめん、久住先輩ほとんど部室にこないからすっかり忘れてたよ」
「それに江古田って先輩を連れ込んでたぞ」
「あー、江古田先輩かー、また厄介な先輩に出くわしたね。久住先輩が部室にくるときは大体やる為だからねー」
「やる為って何を」
「そんなのセックスに決まってんじゃん」
「セッ……だってあいつらアルファ同士だろ」
「関係ないでしょ、第一僕と凛だってアルファ同士だよ」
「そうだけど……でもあいつらのはなんかキモい」
じゃあまさか俺が出てったあとあの江古田とエッチしてたのかよ。多分久住が攻めで江古田が受けだよな。
て! 違う違う! そんなことはどうでもいい!
みんなが使う部室を私物化しやがって、おまけに如何わしいことに使うとは許せない。
だがあの時の久住はなんだか様子が違った気がしたが、特に気にしなかった。
今日こそは映画研究部に顔を出さなければと思ったが、日向に場所を聞くのを忘れていた。
探すのもめんどくさいし、帰ろうと思ったがスマホを返してもらったことを思い出し、日向に電話をかける。
「もしもーし、どうしたの?」
なかなか出ないから諦めようとした時、日向の声が聞こえた。
「映画研究部の部室ってどこだ?」
「あー、そういえば言ってなかったね」
普通に会話をしている日向の声の後ろの方から何やら聞き覚えのある喘ぎ声が聞こえる。
「あっ……ひな、た、そこ……だめぇ」
間違いない凛の声だ。
「しー、正義に聞こえちゃうよ」
聞こえてますよー。コイツら電話しながら何やってんだよ。
「おい! さっさと答えろや」
「あー、ごめんごめん、校舎の裏に部室棟があるからその一階の隅だよ。看板が出てるからわかると思う」
「イク……ひ、なた、イッちゃうか、ら」
「いいよ、イッ──」
俺はそこで通話を切った。
今のは聞かなかったことにしよう。俺は日向が言っていた部室棟へ向かった。
言われた通り校舎裏に向かうと立派な部室棟が建っていた。部室棟と言ったらボロいイメージをするだろうが、この学園の部室棟はめちゃくちゃ綺麗だ。下手したらヤバキタの校舎よりも綺麗ででかい。
中に入り一階の隅の扉へ歩いていくと映画研究部と書かれた看板が立てられてあった。
ドアノブを捻りそっと扉を開けて中を見ると部室には誰もいなかった。
「んだよ、誰もいねーじゃねーか」
少し緊張していたのに誰もいない部屋に拍子抜けしてしまう。
部室の中に入ると、プロジェクターとスクリーン、座り心地の良さそうなソファが置いてあった。
壁一面には映画のポスターが貼ってあり、見回しているとホワイトボードがかけられており、御子柴日向と書かれたマグネットプレートが貼ってあった。
おそらく部活に来たかのチェックをするためのものだろう。部員のマグネットプレートを見ていると、まさかの人物の名前が書いてあることに気づく。
「はあー!! 久住竜二だと!?」
何度も確認するがそこには久住と間違いなく書かれている。
まさかあいつも日向と同じ映画研究部なのかよ、俺と久住の他にも部員はおり全員で十名ほど所属しているようだ。
参加した日を見るとここ一週間は部活に来てないらしい。しかしまさかの今日の日付の欄には出席欄に丸がつけられていた。他の部員も出席欄に丸がついているのにどこにも見当たらない。
これは待った方がいいのだろうか……でも、久住と遭遇するのは避けたい。今日のところは出席欄に丸だけつけて帰ろうとした時、部室の扉が開いた。
久住以外であってくれと願った俺の思いも虚しく、部室に現れたのは久住と久住の腕を掴んで一緒に入って来た俺たちと同じ制服を着た男子生徒だった。
「あ? んだよ、お前も来てたのか」
「あれれ~もしかしてー、御子柴日向くん?」
「え? そうですけど」
久住は四時間目にあった時の表情ではなく、素知らぬ顔で俺に話しかけて来た。男の方は俺のことを見つけて興味津々でみてくる。可愛い系の顔をした男で、ぶりっ子みたいな喋り方でいけすかねぇ。日向の方が絶対可愛いと思う。
「噂通り可愛い~、僕は3年の江古田渚だよ、よろしくねー、でもなんかアルファって感じしないね」
「は? そうですかねー」
まさか久住よりも年上だったとは驚きだ。それに俺がアルファじゃないことを感じているようで非常にまずい。
俺はテキトーに反応をして誤魔化す。この男、見た目は可愛いがおそらくアルファだ。
江古田は笑顔で俺に近づき俺の顔をじっと見る。
「な、なんですか?」
「いやー、お肌綺麗だなと思って、若いってうらやましぃ」
若いって2歳しか変わらないだろ……そんなツッコミを心の中でする。
すると江古田は俺の耳元に口を寄せる。
「残念だけど、竜二は僕のものだからね。ちょっと学園のアイドルとかチヤホヤされて調子乗るなよ。君みたいな一般家庭の底辺アルファなんて僕なら一瞬で潰せんだからな……ほんとお肌もちもちだねー」
「……っ」
耳元から口を話すとぶりっ子の話し方に戻り、俺の頬をぷにぷにと触ってきた。
こいつ相当性格ヤベェ奴だ。久住よりも遥かにやばい感じがする。俺の中の本能が危険だと訴えてきている。
江古田は俺から顔を離すと先ほどの可愛らしい笑顔で、久住の腕に引っ付いている。
そういえばホワイトボードの部員名の欄には江古田の名前はなかった。ならこいつらこんなところで何する気なんだよ。
「ねー日向くんさぁ~、空気読んでよね」
「えっ」
考えごとをしていた俺は、部室の入り口で固まってしまっていた。
「まぁ、見たいって言うんだったら別にいいけどさー」
江古田は俺の方をみてニヤニヤとほくそ笑んでいる。一方の久住は俺を睨み
「さっさと出てけ」
と、どすの利いた声でそう一言言った。
なんだかいつもの久住の雰囲気と違うことに気づき、これ以上江古田と関わるのはまずいと思い、今回は久住のいうことを素直に聞き部室を出て行った。そんな俺を江古田はクスクスと笑って見ていた。
結局その日はそのまま家に帰った。
◇◇◇
「あー、部室に久住先輩来たんだ」
「聞いてねーぞ、久住と同じ部活だなんて」
帰ってきた俺は日向の部屋に向かい、今日の出来事を話し同じ部活だったことについて問いただしていた。
「ごめんごめん、久住先輩ほとんど部室にこないからすっかり忘れてたよ」
「それに江古田って先輩を連れ込んでたぞ」
「あー、江古田先輩かー、また厄介な先輩に出くわしたね。久住先輩が部室にくるときは大体やる為だからねー」
「やる為って何を」
「そんなのセックスに決まってんじゃん」
「セッ……だってあいつらアルファ同士だろ」
「関係ないでしょ、第一僕と凛だってアルファ同士だよ」
「そうだけど……でもあいつらのはなんかキモい」
じゃあまさか俺が出てったあとあの江古田とエッチしてたのかよ。多分久住が攻めで江古田が受けだよな。
て! 違う違う! そんなことはどうでもいい!
みんなが使う部室を私物化しやがって、おまけに如何わしいことに使うとは許せない。
だがあの時の久住はなんだか様子が違った気がしたが、特に気にしなかった。
応援ありがとうございます!
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