異世界では総受けになりました。

西胡瓜

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第一章 転移編

1 転生

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 死んだはずの俺、尾瀬佐太郎おぜさたろう、17歳はなぜか生きていた。

 だが今にも死にそうな状況下にあった。目覚めた場所は戦争真っ只中の戦場だったからだ。

 ただその戦い方は戦車や戦闘機などを使用しておらず、銃や剣などを使用しているのだが俺の知っている戦争とは違っていた。
 突然手から水や炎などを放ったり、手をかざし攻撃を防いだり傷ついた人々を淡い光で癒したりしていた。
 
 それはまるで魔法が使える漫画の世界のような戦い方だ。

 服装からしても、ヘルメットや防弾チョッキを着ておらず迷彩柄はどこを探しても見当たらない。
 着ている服と言えば中世のヨーロッパの貴族が着ていそうな格好だ。

 俺は戦いに巻き込まれないよう急いで森の茂みの中に身を潜めた。とりあえず避難したものの、いつ俺に気づいて兵士たちが襲ってくるかわからない状況には変わりない。

 確実に今までいた世界とは別の世界に来てしまった俺は、どうしてこんなことになったのか思い返す。



◇◇◇



 今日の朝も気だるい体を起こし、制服を着て学校に向かった。その気だるさは夜更かしをしたからとか嫌な授業があるからという理由ではなく、単純にイジメを受けている精神的なものからだった。

 もちろんイジメをする方が悪いのだが、俺にも非があった。そもそも俺のとった言動がこのイジメを生み出してしまったのだから。そうなるかもとは思っていたし、自業自得な部分もあるので仕方ない。

 友人の男にある日俺は告白をした。俺は元々恋愛対象が男の世間一般で言われるところのゲイだ。しかし、小学校や中学ではリスクを冒してまで告白するほどの男には巡り合えていなかった。

 高校に入り友人に出会い本気で恋をした。自分でもあの時なぜ告白しようと思ったのかはわからない。気持ちが抑えられなかったなんて小恥ずかしい理由からなのかもしれない。

 意を決して告白した。

 結果、断る返事はもらっていない……ただ盛大に友人として、一人の人間として拒絶された。

 次の日学校に行くと俺が男に告白したことがクラス中に広がっていた。そしてキモいという単純な理由でイジメられるようになった。
 同性同士の恋愛が受け入れられつつある世の中でも、高校生という大人になりきれていない者にとっては俺はキモい奴でしかなかった。

 それでも大学に進学するつもりだった俺は、登校拒否になることはなくイジメに耐えつつ学校に通い続けていた。

 今日の朝は特に気怠かった。
 月曜日ということもあり、二日間の休みを挟んでの学校だったから特に憂鬱だったのだろう。
 無気力なまま駅のホームで列の先頭に立ち電車を待っていた。俺の後ろで朝から元気にふざけ合っている男子生徒がいた。まるで告白する前の俺と友人のような……

 その一人が俺の方に勢いよくぶつかってきて、無気力だった俺は足の踏ん張りが効かずそのままホームから突き飛ばされる形となった。

 タイミング悪く電車が通過し、俺はそのまま跳ねられてしまったわけだ。



◇◇◇
 


 という感じで今この場にいるわけだが、つまりこれは、

「異世界転移ってやつか……」

と、一人茂みの中でつぶやいた。

 戦場化だと言うのに至って冷静な俺。何故かって学校に行かずに済んだからだ。
 あと半年学校生活を送るのは正直言ってしんどかったし、自分のこと狙ってるやつが同じ学校にいるって相手から結構辛いだろう。
 俺がその立場だったらしんどいだろうし……

「あ"ぁぁー」

 俺は頭を無造作にかいた。やるせない感情が出てきた。思い出すだけで後悔する。
 言わなきゃよかったとしか思わない。

 後悔するぐらいならとか言うけど、言った方が後悔した。女の子にモテるのと男にモテるのは全然違うことなのに、何でわからなかったのだろう。
 俺はもう誰かを好きになったりなんかしないだろうなと思う。

 そんな過去の過ちを憂いている時間は一瞬で、せっかく異世界に来たので新たな世界を楽しむことに決めた。ポジティブ否強がりをかましてみよう。

 まず、行く当てもないためどうしようかと頭を悩ませる。
 途方に暮れていると、少しくらっとして頭を抑えた。目眩だろうか冷静を装っていたが、今までとはあまりにもかけ離れた世界で脳が処理できないでいるのかもしれない。

 俺は落ち着いて大きく深呼吸をした。

「誰だ! そこにいるのは!」

 突然聞こえてきた男の声、森の中にはおそらく俺しかいない。つまり誰かに俺が隠れているのが見つかってしまったわけだ。
 足音がだんだんと近づいてくる。

 俺は逃げるため立ち上がろうとするが、体に全く力が入ず立ち上がることができないでいた。おまけに息も苦しくなり呼吸が荒くなる。

 何もできないでいる俺に近づき茂みから姿を現したのは、深い青色の短髪の男だった。腰には剣を差しており彼も先ほどの戦場にいた兵士の一人だろう。

「何者だ、おまえ?」

 俺の格好は電車にはねられた時の高校の制服のままだった。敵国の兵士には見えないだろうが、味方にも見えないだろう。

 男は俺の奇妙な格好に顔をしかめながら更に俺に近づいて来る。

「あっ、俺は……怪しい、ものじゃ……」

 必死に誤解を解こうとする俺だが、うまく言葉が発せられない。息苦しさはどんどんと強まり、視界もぼやけ男の顔が歪んで見え始める。

「おい? 大丈夫か?」

 流石に男も俺の異様な状態に気づいたようで、心配するようにしゃがみ込み顔を覗かせる。

「はぁ、はぁ、くっ……」

 息は苦しくなる一方で頭もガンガンと痛くなり始め、俺はそのまま男に何も伝えられずに気を失ってしまった。
 
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