異世界では総受けになりました。

西胡瓜

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第一章 転移編

8 逃亡

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 パスカルが、アルフレッドとギルバードを連れてテントの中に入ってきた。
 俺はアルフレッドと目が会い先程のキスを思い出し、顔が熱くなるのを感じた。
 アルフレッドは、少し照れながらも優しく笑みを浮かべてくれた。なんて優しい男なんだろう……。

「おい、もう体調は大丈夫なのか?」

 仏頂面のギルバードもなんやかんやで俺の体調を気にかけてくれていたようだ。
 確かにパスカルの言った通りなんやかんやで優しい男なんだろう。ツンデレってやつか男のツンデレって俺はけっこう好きだよなんてどうでも良いことを考える。

「今は、大丈夫なんですけど……」
 
 ギルバートの問いに歯切れの悪い返答をする。
 アルフレッドのおかげで今は元気モリモリなのだが、結局寿命を伸ばしただけで死が迫っていることには変わりがない。
 元気よくもう大丈夫だと言えないのが申し訳なかった。

「なんだその曖昧な答え方は」

 俺の返答がどうも引っかかるようでギルバードの顔が険しくなる。
 これは、俺が説明しなくてはいけないのだろうが……恥ずかしくてとてもじゃないけどできない。
 俺は助けを求めるようにパスカルの顔を見た。

 パスカルは俺の視線に気づき、一つ盛大にため息をする。

「はぁー、ここからはわしが話そう」

 そう言ったパスカルは先程俺とパスカルが話したことを簡潔に二人に話した。もちろん俺が異世界から来たことは伏せて。
 魔力のことについては知っている二人だから、俺なんかよりよっぽど理解が早かったが、精液の単語が出てきてからは、二人とも目を白黒させながら聞いていた。



◇◇◇



「というわけで、どっちでも良いからサタローとセックスしろ」

 あああああーーーー!!!
 何言ってんだよ!パスカルの馬鹿ヤロー!
 そんな直接言うなや!もう少しオブラートに包んで「サタローに魔力を注ぎ込んであげてくれ」ぐらいに言えよ!

 俺は二人の反応を見るのが怖いのとあまりの恥ずかしさから、手で顔を覆い俯いて悶えていた。

「はぁ、まじかとんでもないやつを拾ってきちまったな」

 何ともいえない空気が流れている中で、最初に話し始めたのは俺のことを助けてくれたギルバードだった。深いため息の後に自分の行いを悔やんでいるようだ。

 そりゃそうだよな、体調が悪いやつなら良くなるまで介抱して元気になればもう安心なのに、俺の場合そうはいかない。
 人を助けると言う善の行いをしたのに、セックスしろなんてどんな罰だよ。
 俺はゲイだからいいけど、この世界には女性もいるだろうしイケメンの二人は女なんて選びたい放題だろう。
 何が悲しくてこんな可愛くもない男の為に自分の身を削って生かそうと思うだろうか。

 ギルバードの反応は至極真っ当で、俺も痛いほどわかるのだが、それでも俺のせいでこんな思いをさせてしまっていることにかなり罪悪感が募る。

「ギルお前が拾ってきたんだから、お前が面倒見るのがわしは一番だと思うぞ」
「はぁ! なんでだよアルがさっきキスしたんだから続きもこいつにさせればいいだろ」
「私がかい?」

 パスカルの言葉にすぐさま反論したギルバードは、アルフレッドを指差してそう言った。
 アルフレッドは、ギルバードのようにあからさまに嫌な反応はしなかったが、優しい男だから声や表情に出さないだけで内心は心底嫌がっているかもしれない……嫌そうに違いない。

「……そうだね、ギルが嫌なら私がするしかないのかな」

 喜んで引き受けている感じではない。正直に嫌がるギルバードの反応も傷つくがアルフレッドのあの反応は申し訳なさがひどく俺を襲う。

 なにが原因でこんな空気になっているのかといえば、間違いなく俺のせいである。まるで罰ゲームをどちらが受けるかの話し合いになっている。
 まじ泣きそうだ。

 そもそも、俺がこのまま魔力を貰わずに死ぬことを選べば済む話なのではなかろうか。
 そりゃ死にたくはないが、これから二人のどちらかに嫌な行いをさせるぐらいなら潔く死を選ぶのが男だろう。それにたまたま、さっき助けてくれただけの人間にそこまでする義理は全くと言っていいほどないのだから。

 俺は今までずっと座っていたベッドから飛び降りる。できるだけ明るい表情で話し合っている三人の方に近づく。

「あの、俺! もう大丈夫なんで帰りますね。ごめんなさい迷惑かけて」

 無論帰るところなんてないし、ここがどこなのかもわからない。一歩外に出ればまたあの戦場かもしれないが、どうせ死ぬんなら死に方なんてどうでもいい。
 俺は溢れそうな涙を必死に堪えて笑顔でそう言った。

 アルフレッドもギルバードも俺の言葉に驚いて困惑した表情だったが、パスカルはただただ真顔で俺のことを見ていた。

 この居心地の悪い空間からどうしても逃げ出したくて、抑えきれない涙を懸命に隠してテントの外に出て、行き先もわからないまま走り続けた。



 






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