異世界では総受けになりました。

西胡瓜

文字の大きさ
11 / 127
第一章 転移編

9 アルフレッド

しおりを挟む
 テントから抜け出して1時間ほど経っただろうか。あいにく時計がないので時間の感覚がいまいちわからない。
 日が沈みかけているのを見ると、俺が死んだのが学校への通学中だったから、異世界転移をしてきて10時間ほど経っているだろう。

 テントの外に出ると数人の男たちがおり、俺のことを不思議そうに見ていたが俺は気にすることなく走り続けた。
 後ろの方から「サタロー」と心配するアルフレッドの声が聞こえた気がするが、俺は足を止めなかった。

 幸いなことに転移してきた戦場は、テントの設置してある場所から離れており戦いに巻き込まれることはなかった。
 右も左もわからない状態でがむしゃらに森の中を走り続けた為、今から自分でテントの場所に戻ることは困難である。

「あーあ、俺なにしてるんだろう」

 転移してから半日も経たない間に怒涛の展開を迎え、何が何だかさっぱりだ。ただ一つ言えるのは俺がこの世界を救う英雄になる存在では無いことは間違いなく理解できた。
 むしろみんなに迷惑をかけている。

 テントの外の男たちの服装を見てアルフレッドもギルバードもかなり位の高い兵士なのかもと思った。外にいる男たちの服装と比べてもかなり豪華な服装だったからだ。

 そんなお偉いさんたちが凡人の俺一人のために、あそこまで悩んでくれたこと自体が光栄なことなのだ。

 日が沈んだら森の中にいる俺を探し出すのはより困難になるだろう。そもそも俺のことなんてどうでもいいと思って、探していないかもしれない。

 俺が死ぬまで残り5時間ほど、とりあえずギルバードというイケメンに助けられ、アルフレッドというもう一人のイケメンにキスされただけでも前世の初告白の返事「キモっ、引くわー」よりはよっぽどいい思い出だ。

 転移してきた半日のほうが、前世の17年間よりよっぽど充実していた。それはそれで悲しいけど。

 終活の準備とでも言うように色々思いを巡らせる俺だった。



◇◇◇



 森の中で一人しょげ始めてから数時間経った。よくもまぁこんなに落ち込めるもんだと自分でも驚いているが、あたりはもう真っ暗でまるで俺の心を体現したかのようだ。

 俺の余命も残り3、4時間ほどだろうか……。
 今からこの森の中を抜け出して、男に精液くれなんてとてもじゃないけど言えない。
 パスカルみたいに可愛い顔ならワンチャンありそうだけど、平凡な俺には無謀としか言いようがない。

 なんだか体もだるくなり始めてきた。そろそろ本当に死が迫っているようだと、どんどんネガティブになっていく。
 覚悟を決めたはずなのにそれでも死ぬのは怖かった。

「ぐす、うー死にたくないよ……」

 一人だからかあまりにも情けない声で泣き出す俺の声が誰もいない静かな森に響き渡る。

 その時誰もいないはずの茂みからガサガサと音が聞こえた。俺は泣くのをやめ身構える。

「だ、だれ?」

 こんな真夜中に森にいるのなんて、俺以外だと野生の動物だろうか。魔力が尽きる前に猛獣にガブリと喰われて死亡なんてパターンもあるわけか。

 俺の声にさらに茂みが大きく揺れる。俺は座っていた腰を少しあげ、直ぐにでも逃げられる準備をする。
 茂みからの音はどんどん大きくなり、大きな黒い影が見える。バサッと言う今までで一番大きな音がして出てきたのは、

「アル……フレッドさん」

 ランプを片手に持ったアルフレッドだった。

 猛獣でないことに安心した俺は、気が抜けて浮かせていた腰を地面に戻した。
 
「サタロー良かった、見つかって……」

 アルフレッドは少し息が上がっていた。顔を見るととても焦っている様子だ。もしかして俺を探しにきてくれたのだろうか、淡い期待を抱いてしまう。

「どうして、ここに?」
「サタローを探してきたんだよ。急に出て行くから驚いた。さぁ戻ろう」

 本当にアルフレッドは俺を探しに来てくれたようだ。俺は嬉しくて近づいて俺に手を差し伸べるアルフレッドの手を取る。
 アルフレッドは俺の手を握りしめると軽々と俺を起こした。が、立ち上がった俺は頭がズキリと痛みうまく足に力が入らずそのまま前に倒れ込んでしまう。
 アルフレッドはすぐに俺を支えてくれたので転ぶことはなかった。

「はぁ、はぁ……くるしぃ」

 先ほどの少しのだるさからは一変して息が苦しくなり始め、体調がどんどん悪くなっていくのが自分でわかる。死が近づいているようだ。
 俺の異変に気づいたアルフレッドは、心配そうに俺を見る。

「サタロー、大丈夫かい!?」
「だ、いじょうぶ……」

 大丈夫ではないが、これ以上アルフレッドに迷惑をかけるわけにはいかないと彼に笑顔を向け強がりを言う。
 俺の顔を見てアルフレッドは、険しい顔をする。嘘はバレバレのようだが、これでいいと自分に言い聞かせた。

「サタロー顔を上げて……」

 朦朧とする意識の中でアルフレッドの声に無意識に顔を上げた。その瞬間アルフレッドの顔が近づき俺の唇と重なり合った。

「んっ──はぁ……アルっ」

 先程のテントよりも少し荒っぽくて、紳士的な彼のキスとは思えない焦りを感じた。驚いた俺は足に力が入らずへたり込んでしまいそうになる。
 しかし、アルフレッドは俺の腰を逞しい腕で支える。

「んっ、ん」

 クチュクチュといやらしい音が静かな森に響く。アルフレッドから注がれる唾液を飲み込むたびに、だんだんと体に力が入ってくるのを感じる。

「はぁ……アルフレッド、さん……もう、大丈夫で、す」
「はぁはぁ、そうか」

 俺はアルフレッドの肩を押し唇を離すともう大丈夫だと伝える。ランプの光のせいかアルフレッドの顔がほんのりと赤くなっている気がした。テントの中でのキスの後の余裕そうな表情はないように見えた。

 俺はアルフレッドから離れようと一歩下がろうとするが、腰を支えていた彼の腕がそれを阻止してきた。

「アルフレッドさん?」

 俺は不思議に思いアルフレッドの顔を見る。彼は何も言わずに黙っていると、急に顔を上げて

「サタロー、私とセックスしようか」

と、真剣な顔で俺にそう言った。









しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話

あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」 トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。 お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。 攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。 兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。 攻め:水瀬真広 受け:神崎彼方 ⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。 途中でモブおじが出てきます。 義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。 初投稿です。 初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

処理中です...