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第二章 本部編
24 いざ本部へ!
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それから数日経ちついに遠征訓練も終わり、王都に帰る日になった。兵士達はテキパキと帰る準備を進めている。
俺もアルのテントを片づけようとしたのだが、片付け方がさっぱり分からず四苦八苦している。
「あの手伝おうか?」
「え? ってフィルか!」
後ろから声をかけられ振り返るとそこにいたのは、つい最近友達になったばかりの兵士のフィルだった。
あれからもたまに話すようになった俺達、フィルはずっと俺に敬語で話し続けて来たのでタメ口でいいと伝えると困った顔をしていた。なんでも癖で誰にでも敬語で話してしまうらしい。しかし、数日経ち敬語が抜けてきて普通に話すことができるようになってきていた。
フィルには他にやることがあるだろうし、悩む俺だったが多分一人だと一生終わりそうに無いので素直に頼むことにした。
「じゃあ頼むわ」
「うん、任せて」
俺たちはたわいもない話をしながらテントを片付け始めた。ほぼフィルが片付けたようなもんだが。前世でキャンプでもやっておけばよかったと少し後悔する。
◇◇◇
荷物を荷馬車に乗せ終わると皆が自分の荷物を担ぎ、荷馬車の方へ集まる。俺もそちらの方へ向かうとギルが俺を呼んだ。
「サタロー、こっちへ来い」
俺はギルのいる方へ歩いていくとそこには芦毛の馬が一頭いた。馬をこんな間近で見るのは初めてで近づくのを躊躇うが、ギルは俺の脇を掴みそのまま持ち上げると俺を馬に乗せた。乗せられたことにも驚くが、17歳の男を軽々と持ち上げてしまう力にも驚きだ。
「おわっ、な、何?」
「王都までは距離があるからな、お前体力ないだろうから馬に乗ってろ」
「えぇ、でも……」
「気にするな、お前を乗せて帰るためにアルが置いてった馬だからな」
皆んなが荷物を持ちながら歩いているのはなんだか申し訳ないので降りようとするが「軍人なんだから当たり前だ」と言われてしまった。
アルが置いていったと言っていたが、そういえば彼が王都に戻る時に馬がいるのになぜ乗らないのだろうかと思っていたが、俺を乗せて帰らせるためだったのか。そんなことまで考えているなんて、アルの紳士さに舌を巻く。
大人しく馬に乗っていた俺のところにパスカルがトコトコと歩いて来た。
「あ、ずるいわしも乗りたいー」
「お前も軍人だろ歩け」
ギルが鬱陶しそうにあしらうが、パスカルはふくれっ面で文句を言い始める。
「なんでー! わしは500歳以上の老人だぞー! 誰がお前のおねしょして汚れたパンツを変えてやったと思っておるんだー」
「ばっか! でかい声でんなこと言うんじゃねー!」
ギャーギャーと喧嘩を始める二人、まるで親子みたいだ。話の内容は聞かないであげた方が良さそうだ。
ギルが父親でパスカルが子どもかな。でも、俺からしたらパスカルは母親みたいなものだから、ギルはおじいちゃんか……。堅物だけど孫にはついつい優しくしちゃうみたいな感じかな。
アルもパスカルとは親そうにしていたが、ギルとパスカルはそれ以上に仲がいいというか、アルとはまた違った関係性な気がする。
微笑ましく二人の喧嘩を見ていたが、どうやら決着がついたようでギルが俺と同じようにパスカルの脇を掴むと持ち上げて俺の隣に座らせた。パスカルの顔を見るとご満悦のようで外見に見合った表情をしていた。
結局俺とパスカルが馬に乗ることになった。
ギルバードの合図で皆が歩き始め、クロノス王国、王都アダマスにある魔法軍の本部に向かう。
特にすることもないので、パスカルとたわいもない話をする。
「魔法で瞬間移動とかできないのか?なんか思ったより日常的に魔法とか使わないんだなー」
魔法が使える世界なんだから瞬間移動で一瞬で好きなところへ行けたり、空を飛んだりできると思っていたが兵士達と共に暮らしていた時もあまり魔法を使っている姿を見ることがなかった。
戦闘訓練の時なんかは使っていたが、日常生活ではほとんど目にしていない。
もっと魔法使いまくりでファンタジーな世界を想像していたので、なんだか拍子抜けしてしまった。
俺の言葉にパスカルはため息を吐く。
「瞬間移動なんて高度な魔法使える者は限られてる、それに使えたとしても自分を移動させるだけで精一杯だ」
「……そうなのか、なんか残念」
「どんなのを想像していたんだお前は、魔力は皆持っているが高度な魔法を使える者はごくわずかなんだよ」
「へー、魔法も簡単に使えるわけじゃないんだな」
これがもし魔法でなんでもかんでも解決してしまう世界だったら、魔法が使えない俺は無能なのがもっと際立ってしまっていたのかもしれない。このぐらいの世界がちょうどいいのかもしれない。
「本部に行ったら他の兵士達にも会えるんだよな」
「どうだろうな、あいつらも忙しいから魔獣討伐なんかに行ってるかもしれん」
「魔獣討伐! なんかかっこいいな」
「……そうか? 普通だろ、ていうかむしろ地味任務だからぶつくさ言うやつも多いぞ」
「えーそうなのか?」
魔獣が出るのが結構当たり前なのかな。そういえば悪魔は敵対関係とか言っていたし、実際戦ったりしてるのかな。だとしたらとても危険な仕事なのかもしれない。兵士ってのはそういうものなんだろうけど。
「実際に戦ったりとかするのか?ほら悪魔とかと」
「うーんそうだなー、今はないがあいつらは気まぐれだから、いつ襲いかかってくるかわからんしな」
「悪魔ってそんな感じなんだ……」
やっぱどの世界でも悪魔ってのは気まぐれで悪さばかりするものらしい。俺が生きている間には、争いごとが起こらないよう祈るばかりである。
パスカルは500年以上も生きているわけだから、いろんなことを経験して来たんだろう。
本部に着くまで俺とパスカルはたわいもない話をしながら馬に揺られていた。
俺もアルのテントを片づけようとしたのだが、片付け方がさっぱり分からず四苦八苦している。
「あの手伝おうか?」
「え? ってフィルか!」
後ろから声をかけられ振り返るとそこにいたのは、つい最近友達になったばかりの兵士のフィルだった。
あれからもたまに話すようになった俺達、フィルはずっと俺に敬語で話し続けて来たのでタメ口でいいと伝えると困った顔をしていた。なんでも癖で誰にでも敬語で話してしまうらしい。しかし、数日経ち敬語が抜けてきて普通に話すことができるようになってきていた。
フィルには他にやることがあるだろうし、悩む俺だったが多分一人だと一生終わりそうに無いので素直に頼むことにした。
「じゃあ頼むわ」
「うん、任せて」
俺たちはたわいもない話をしながらテントを片付け始めた。ほぼフィルが片付けたようなもんだが。前世でキャンプでもやっておけばよかったと少し後悔する。
◇◇◇
荷物を荷馬車に乗せ終わると皆が自分の荷物を担ぎ、荷馬車の方へ集まる。俺もそちらの方へ向かうとギルが俺を呼んだ。
「サタロー、こっちへ来い」
俺はギルのいる方へ歩いていくとそこには芦毛の馬が一頭いた。馬をこんな間近で見るのは初めてで近づくのを躊躇うが、ギルは俺の脇を掴みそのまま持ち上げると俺を馬に乗せた。乗せられたことにも驚くが、17歳の男を軽々と持ち上げてしまう力にも驚きだ。
「おわっ、な、何?」
「王都までは距離があるからな、お前体力ないだろうから馬に乗ってろ」
「えぇ、でも……」
「気にするな、お前を乗せて帰るためにアルが置いてった馬だからな」
皆んなが荷物を持ちながら歩いているのはなんだか申し訳ないので降りようとするが「軍人なんだから当たり前だ」と言われてしまった。
アルが置いていったと言っていたが、そういえば彼が王都に戻る時に馬がいるのになぜ乗らないのだろうかと思っていたが、俺を乗せて帰らせるためだったのか。そんなことまで考えているなんて、アルの紳士さに舌を巻く。
大人しく馬に乗っていた俺のところにパスカルがトコトコと歩いて来た。
「あ、ずるいわしも乗りたいー」
「お前も軍人だろ歩け」
ギルが鬱陶しそうにあしらうが、パスカルはふくれっ面で文句を言い始める。
「なんでー! わしは500歳以上の老人だぞー! 誰がお前のおねしょして汚れたパンツを変えてやったと思っておるんだー」
「ばっか! でかい声でんなこと言うんじゃねー!」
ギャーギャーと喧嘩を始める二人、まるで親子みたいだ。話の内容は聞かないであげた方が良さそうだ。
ギルが父親でパスカルが子どもかな。でも、俺からしたらパスカルは母親みたいなものだから、ギルはおじいちゃんか……。堅物だけど孫にはついつい優しくしちゃうみたいな感じかな。
アルもパスカルとは親そうにしていたが、ギルとパスカルはそれ以上に仲がいいというか、アルとはまた違った関係性な気がする。
微笑ましく二人の喧嘩を見ていたが、どうやら決着がついたようでギルが俺と同じようにパスカルの脇を掴むと持ち上げて俺の隣に座らせた。パスカルの顔を見るとご満悦のようで外見に見合った表情をしていた。
結局俺とパスカルが馬に乗ることになった。
ギルバードの合図で皆が歩き始め、クロノス王国、王都アダマスにある魔法軍の本部に向かう。
特にすることもないので、パスカルとたわいもない話をする。
「魔法で瞬間移動とかできないのか?なんか思ったより日常的に魔法とか使わないんだなー」
魔法が使える世界なんだから瞬間移動で一瞬で好きなところへ行けたり、空を飛んだりできると思っていたが兵士達と共に暮らしていた時もあまり魔法を使っている姿を見ることがなかった。
戦闘訓練の時なんかは使っていたが、日常生活ではほとんど目にしていない。
もっと魔法使いまくりでファンタジーな世界を想像していたので、なんだか拍子抜けしてしまった。
俺の言葉にパスカルはため息を吐く。
「瞬間移動なんて高度な魔法使える者は限られてる、それに使えたとしても自分を移動させるだけで精一杯だ」
「……そうなのか、なんか残念」
「どんなのを想像していたんだお前は、魔力は皆持っているが高度な魔法を使える者はごくわずかなんだよ」
「へー、魔法も簡単に使えるわけじゃないんだな」
これがもし魔法でなんでもかんでも解決してしまう世界だったら、魔法が使えない俺は無能なのがもっと際立ってしまっていたのかもしれない。このぐらいの世界がちょうどいいのかもしれない。
「本部に行ったら他の兵士達にも会えるんだよな」
「どうだろうな、あいつらも忙しいから魔獣討伐なんかに行ってるかもしれん」
「魔獣討伐! なんかかっこいいな」
「……そうか? 普通だろ、ていうかむしろ地味任務だからぶつくさ言うやつも多いぞ」
「えーそうなのか?」
魔獣が出るのが結構当たり前なのかな。そういえば悪魔は敵対関係とか言っていたし、実際戦ったりしてるのかな。だとしたらとても危険な仕事なのかもしれない。兵士ってのはそういうものなんだろうけど。
「実際に戦ったりとかするのか?ほら悪魔とかと」
「うーんそうだなー、今はないがあいつらは気まぐれだから、いつ襲いかかってくるかわからんしな」
「悪魔ってそんな感じなんだ……」
やっぱどの世界でも悪魔ってのは気まぐれで悪さばかりするものらしい。俺が生きている間には、争いごとが起こらないよう祈るばかりである。
パスカルは500年以上も生きているわけだから、いろんなことを経験して来たんだろう。
本部に着くまで俺とパスカルはたわいもない話をしながら馬に揺られていた。
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