異世界では総受けになりました。

西胡瓜

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第二章 本部編

29 寝落ち

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 朝、目を覚ました俺の隣にはギルの姿はなかった。起き上がり時計を見ると朝食の時間にしてはまだ随分と早い時間だった。
 部屋の中を見渡すとギルが机に向かってペンを走らせている後ろ姿が目に入った。ぼーっとする頭を動かして邪魔をしてはいけないと、俺は服を着てギルに一言告げると部屋を出ていった。

 音が出ないようにゆっくりと扉を閉めた俺は、扉にもたれかかり盛大にため息を一つ漏らす。皆はまだ寝ている時間なため、出来るだけ足音を立てないように自室に戻った。

 キスの後の彼の言葉に期待してしまっていた俺なんだが、期待とは裏腹に行為はかなりあっさりしたものだった。
 自室までの道中俺は昨日のことを思い返した。



◇◇◇



「あっ、んん……あ」

 初めて抱かれた時とは違いお互いの顔が見える形で行為をする。時折キスをしながら甘々な空間が部屋中に漂っていた。

「はぁ、はぁ」

 この時からギルの様子が変というかいつもよりも全ての行為が早いというか、普段はいつもそんなに上がらないのにギルの息遣いがやけに大きく聞こえたと思った後、彼が達したのが分かった。

「んっ、ん、あっ──」

「っ……!」

 ギルの精液が俺の中に広がっていくのがわかり、全身が震え気持ちよさに浸っていると、ドサッと俺の上にギルが倒れ込んできた。

「ゔぅ、重い……」

 ふざけているのかと思って、ギルの身体を押し返そうとすると反応がない。まさかと思いギルの顔を見るとスヤスヤと気持ちよさそうに眠っていた。

「マジか……どうすんだよコレ」

 気持ちよさそうに寝ているギルを起こすのはなんだか忍びない。だが、このままだと窒息死しそうだ。同じ男だがギルは軍人で俺はただの一般人、筋肉量が全然違う。密着している身体に無駄な脂肪は全くついておらず、正直言って痛いと重いしか感じない。

 俺は自分の身体の火照りが治り力が入るのを待ったあと、ギルの身体を横に転がし俺の上から退かした。その際にずっと俺の中に入っていたギルの性器が抜けるのがわかり、一人で感じてしまった。

「ん゛ん゛……お、もい゛ー、っん!」

 仰向けのギルの顔を覗くとやはり気持ちよさそうに寝ていた。普段のギルバードだったら絶対こんな無様な姿を他人には見せないだろう。
 疲れているのも知っていたし、魔力はしっかり貰えたのだからギルに感謝すべきなのはわかっている。だが期待していたのがこんな結果なのは不満がないといえば嘘になる。
 自分のわがままで起こすわけにはいかないし、何しろ物足りないなんて恥ずかしくて言えたもんじゃない。

 気持ちよさそうに寝息を立てている目の前の男のほっぺを指で強めに押すが、起きる様子は全くない。

「はぁー、寝よ」

 抜ける時に少し感じて中途半端に勃ってしまった自身を無視して、俺もそのままギルのベッドで寝た。



◇◇◇



 これが昨日の出来事である。
 ギルは何も悪くないし、問題ない。

 ただ、なぜか満たされない俺の身体。これはなんなんだ、欲求不満ってやつなのか、もっとシてほしいかったとか思ってるのか!? 変態じゃないか!
 身体だけでなく心まで変態になってしまったとでもいうのか!

「あり得ない、それだけはない」

 俺のこの状態がなんなのか知りたいと思ったが、パスカルに話したら絶対にからかわれる。

 一人ぶつぶつと呟きながら誰もいない静かな廊下を歩き、自身の部屋に着いた。
 モヤモヤする頭とうずうずする身体を抑えるために部屋に戻った俺は、自分のベッドで朝食の時間までまた寝ることにした。




◇◇◇




 目が覚めると時計の針は正午を少し過ぎたところだった。朝食まで軽く寝るはずが、がっつりと熟睡してしまったことに気づき飛び起きる。体の疼きはもうとっくに治まっていて、モヤモヤだけが頭の中に残ったままだった。

 窓の外を見ると、兵士達が大きな声を出して走り込みや腕立て伏せなどのトレーニングを行っていた。自分のだらしなさに罪悪感を抱きながら、服を着替え遅すぎる朝食兼昼食を食べるために重い足取りで食堂に向かった。

「よー、サタロー今日は随分と寝坊助じゃねーか」

「あ、デニスさんおはようじゃなくて……こんにちは」

 食堂に着いた俺に話しかけてきたのは、俺が初めて食堂に訪れた時に俺が作ったオムライスを食した料理人のデニスさんだった。
 俺が見てきた魔法軍にいるどの男よりも軍人に見えるムキムキマッチョで髭面この男が料理人だと知った時にはとても驚いたが、とても優しく気さくな男だったのですぐ打ち解けることができた。
 俺の作ったオムライスの味に感動したらしく、たまにレシピを教えてあげていたが、この男の得意料理が肉の丸焼きだったものだから、かなりゆっくりなペースで教えてあげている。

 昼食の時間はとっくに過ぎていたため、料理はきれいに残っていなかった。デニスさんや他の料理人がこれから食事らしかったので、俺の特製チャーハンを伝授しがてら昼食を作り、出来上がったチャーハンをみんなでいただいた。

 俺の作ったチャーハンに感動してくれた料理人たちのいる食堂を後にした俺に相変わらずすることはなく、いつもの定位置である裏庭のベンチに腰を下ろしていた。

 本当にすることがなくて困る、前世だったらスマホや漫画、テレビ、ゲームなどの娯楽がたくさんあり暇を持て余すこともなかったのだが、この世界に生憎そのような物は存在しなかった。漫画ではないが本ならあったのだが、歴史書や魔導書など難し過ぎて何が書いてあるのかさっぱりわからなかったので読むのを諦めた。

 何か手伝えることがあればいいのだが、兵士ではない俺に出来ることなんてないし、アルの許可が無くてはダメだとパスカルに言われてしまった。

「はぁー、アルさっさと帰ってきてくれ~」

 誰もいないことをいいことに空を見上げながら裏庭に響き渡るほどの声で愚痴をこぼした。

「なになに、アルに早く帰ってきてほしい理由でもあるのー?」

「……うおぉ!」

 上を向いていた俺の前に急に美少女の顔が現れた。俺は驚きベンチから立ち上がり少女から咄嗟に離れる。
 
 改めて少女の顔をしっかりと見ると、どこかで会ったことのある顔だった。

「エ、エリザベス様?」

「ごきげんよう、サタロー」

 俺の疑問に笑顔で応えたのは本部に戻ってきて以来のクロノス王国第一王女であるエリザベス王女だった。
 

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