異世界では総受けになりました。

西胡瓜

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第二章 本部編

37 獣のキス

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「ゔぅ……」

 頭がガンガンして割れそうだ。あまりの痛さで意識が覚醒する。

「お! 起きた起きた、おはよーさんサタロー」
「あれ? 俺どうなったんだ……」

 確かレオと裏庭で話をしていてそしたら倒れたんだ。そして今目を開けると笑顔のレオが目の前にいた。ここはどこなのかとかなんで倒れたのかとか、最後にレオが言った言葉とか色々気になることはあるのだが、頭は痛いし身体はだるいしで喋るのも苦痛だ。

 この痛みと怠さを治す方法を俺は知っている……そうキスだ。正確に言えば唾液を貰うことだ。リズには体液で回復するのは伝えてあるが、唾液でも回復することをレオに話したのかはわからない。アルやギルなら俺の状態を察して何も言わずにキスしてくれるのだが、レオには伝わっていないようで、ニコニコと俺の顔を見ているだけだった。
 ここにはレオしかいないので彼に頼むしかないのだが、やっぱり自分から求めるのは恥ずかしい。行為の最中ならキスの要求を恥ずかしげもなくしているのに、素の状態でできるほどのメンタルは持ち合わせていない。

「水飲む?」

 水を取りに立ち上がったレオの腕を反射的に掴んでしまった。

 ──違う、そうじゃない、水ではこの渇きを癒せない。

 レオはこちらを向き不思議そうに俺のことを見ている。言わないと、恥ずかしがっている暇はない。

「どした?」
「あの、えっと、み、水じゃなくて……」
「ジュースの方がいい?」
「違う……そうじゃなくて、キ、キ」
「キ?」
「キ、キスして欲しい」
「どったの? さっきは今日するのは嫌だって言ってたのに?」

 そうだけど、でも今は状況が違う。アルやギルだったらすぐわかってくれるのに歯がゆい気持ちになる。

「うー、なんでもいいからしてよ──」
「はは、なにそれかわい……」

 伝わらないもどかしさに苛立ち不機嫌になりながらキスを要求する。他人に頼む態度としてはよろしくないが、どうやらレオは要求を受け入れてくれたようだ。ベットの近くに膝立ちになるとそのまま俺にチュっとリップ音のする触れるだけのキスをした。

「これでいいの?」
「違う……」
「どう違うのよ」
「もっと、深いの……」
「へー、こういう感じ?」

 そう笑いながら言ったレオは今度はベットに乗り上げて寝ている俺に覆いかぶさった。もう一度顔を近づけて今度は深くまさにライオンのごとく噛み付くような荒々しいキスをする。絡み合う舌が人間と違い少しザラザラしていていつもより刺激的だ。

「ッ……ん、ん゛ぅ──」

 レオのキスによって俺の頭痛と倦怠感が和らいでいき意識がはっきりとしてうまく回らなかった頭が動き出す。とりあえず話し合うことが先だと考えた俺はキスを中断させようと、レオの胸元を手で押し離れるように合図する。
 しかし気づいていないのか無視しているのかはわからないがキスが終わる気配はなく、むしろ激しさを増していく。

「ん゛ッ……んん!」

 なんだこいつ離れねー! ちょっとマジで苦しいから離れてほしいんだけど! 鼻で息はできるけど鼻呼吸だけだと苦しい。
 もはや気持ちよさなんか感じない俺は必死にレオの胸を叩きやめるよう訴える。
 さすがのレオも俺の動きが鬱陶しかったのか唇を離した。

「んっ……ぐはっ…はぁはぁ──」
「ふー、何よせっかくいい気分だったのに」

 レオは俺に初めて笑顔以外の不満そうな顔をして、口の端に垂れるどちらの唾液ともわからないものをペロッと舌なめずりと手で拭った。

「いや、マジで……ほんと……ちょっと、待った」

 文句を言おうとした俺だが、足りていない酸素を取り込むことに必死でそれどころではない。一方のレオは全く息が上がっておらず何事もなかったようにギラギラと獲物を見るかのような目で俺の顔を見下ろしている。

 さすがのアルやギルもキスの後は息を上げていたのに、これが獣人の体力なのだろうか。恐ろしいキスだけで窒息死するところだった。命を救われたはずがそのまま殺されるところだったぞ。
 もしかしたらこれ以上のことしたらマジで殺されるんじゃないかと頼む相手を間違えたかもと今更不安になる。

 パスカルもリズも、もっと反対してくれればよかったのにと恨めしく思ったが、二人にレオの性事情を知っているはずがなかった。獣という時点で性に奔放だと思うべきだったのだろうか。

 後悔しているうちに俺の呼吸も整ってきた。この状態だとまたいつキスされるかわかったものではないので、覆いかぶさっているレオに退くよう伝える。すごく不満そうにしながらも言うことを聞いてくれた。

 上半身を起こし辺りを見渡すがやはり知らない部屋だった。聞きたいことが色々あるが布団のかかった自分の下半身を見ると幸いなことに自身は反応していなかった。いつもだったらキスで反応してしまうのだが、今回は気持ちよさよりも苦しさが勝ったようだ。これなら気にすることなく思う存分話ができる。

 レオの方を見るとむすーッと頬を膨らませ不機嫌なのは明らかで尻尾をバシバシと布団に叩きつけている。感情とリンクしてしているのだろうか不機嫌なのになんか可愛い。

「とりあえず今の状況を説明してくれないか」

「えーさっきまで、キスしてぇ~って甘えてたのにさー、冷静すぎるっしょ」
 
 そんな語尾にハートがつきそうな甘えた言い方をした覚えはない……たぶん。意識が朦朧としていたのではっきりとは覚えていないが俺がそんな言い方するわけがない!

「そんな言い方してない!そんなことよりここはどこでなんで俺は倒れたのか説明してくれ」
「はぁ、仕方ないな、なーんにも知らないサタローちゃんに教えてあげますか」

 いちいち鼻につく言い方する。パスカルの言ってた弄ぶの意味がわかってきた気がする。

「まずここは第一連隊の兵舎にある俺の部屋」

 なるほどね、わざわざ部屋まで運んできてくれたのか、それにしても随分と綺麗な部屋だ。ギルよりは生活感がある部屋で物も多いがどれも整理整頓されている。会ったばかりでレオの性格を知っているわけではないがこいつが綺麗好きとはとても思えない。

「ほんとにお前の部屋か?それにしては綺麗すぎるような」

 俺は仕返しとばかりに嫌味を込めて言ってやる。そんな俺の言葉にレオはニヤリと笑い楽しそうに言い返してくる。

「あらー言うじゃないの、今は任務から帰って来たばっかりだから綺麗なだけ、いつもはサタローの予想通りもっと散らかってるよー」

 そんな誇らしげに言うことではないのだが、俺の嫌味はレオには全く効果がないようだ。出会って間もないがだいぶレオンハルトという人物がどんなやつなのか分かってきた気がする、フィルが言っていた元気すぎるの意味も。

「それでなんで俺は倒れたんだ、なんか俺が倒れるのわかってたみたいだったけど」
「うん、わかってたよ。だってギルの魔力が全然感じられなかったから」
「はっ?そんなはずないだろ!だって昨日ギルから魔力貰ったばかりなのに……」

 レオの信じ難い言葉にあからさまに動揺する。今の言い方だとレオにも魔力の量を知ることがどうやらできるようだ。

「サタロー、ギルが疲れてるって言ったよな、知ってるだろ魔力は三大欲求が満たされてないとそれを補うように消費されるって、多分ギルは睡眠と食事をまともに摂ってなかったんだろうな。性欲だけはサタローで満たされてたみたいだけど」

 レオの言っていることはすごく納得のいく回答だった。ただ最後の一言はいらない言葉だ。

「つまりさ、魔力の質が悪くなってて自分の欲を補うので精一杯の人間が他人に良質な魔力なんて与えられるわけないだろ……ギルの魔力見たけどほぼスッカラカンだったぞ、今頃あいつもぶっ倒れてんじゃねーかな」
「なんで、そんなことわかるんだよ」
「俺たち獣人はエルフや悪魔のように魔力の識別は得意なの、パスカルから聞いてないのか?」

 確かに昨日、王族やエルフ、悪魔が魔力の識別に長けているのは聞いたが、その中には獣人は入っていなかった。ただ単にパスカルが言い忘れていただけなのか、それともこうなることがわかっていて意図して言わなかったのかは知らないが、これは後で問いただす必要がありそうだ。
 何が「わしよりサタローを弄ぶ」だ。アイツのやり方のがよっぽど鬼畜じゃないかと悪態をついた。


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感想 37

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