異世界では総受けになりました。

西胡瓜

文字の大きさ
65 / 127
第二章 本部編

63 天使登場

しおりを挟む
「おはようございまーす」

 次の日、俺は朝食を食べた後、研究所へ行き実験室の扉を開けた。

「おはようございます! サタローくん」
「……」
「ロキくんあいさつは大切ですよ!」
「わかったから! 触るな!……はよ」
 
 相変わらず思春期丸出しのロキとそんなロキに説教するラケルさんが俺を出迎えた。
 昨日は爆発を見ただけでこれといったことはしていないが、今日からは本格的に手伝いをすることとなるわけだ。朝からウッキウキだった。

「それで今日は何をすればいいんですか?」
「今日はポーションを作ってもらいます!」

 そう言ったラケルさんはポーションの役割と作り方を説明してくれた。

 この世界におけるポーションとは、主に体力回復や治癒薬として使われているらしい。

「作り方はとても簡単です。薬草と聖水を鍋に入れて混ぜながらほんの少し魔力を加えるだけです!」

「魔力を入れる量とその人物が持つ魔力の質で、出来上がるポーションの質も変わってくる」

「質?」
「ポーションの質は大きく分けて3段階あります。簡単な傷を治せるC級ポーション、体力回復と治癒薬を兼ね備えるB級ポーション、そして骨折なんかの重症な怪我も治せるA級ポーションですね」

 ラケルさんの説明に前世でのRPGのゲーム解説を聞いているような気分になり、俺の心はワクワクしていた。
 しかし、ロキの魔力という言葉にハッとなる。

「でも、俺魔力ないんだけど……」
「? 何言ってんだよお前にはちゃんと魔力が流れているだろ」
「そうですよ?」

 俺の言葉にロキとラケルさんは首を傾げている。
 そっかギルとアルにもらった魔力があるからその魔力を使えばいいのか。二人はハーフエルフと獣人だから、俺の魔力も敏感に感じ取れるようだ。

 でも、せっかくもらった魔力をポーション作りに使ったら俺の寿命が縮んでしまうのではと心配になる。なぜパスカルは俺にこの役割を与えたのか疑問に思った。

 不安が浮かび上がる俺の気持ちとは裏腹にラケルさんがポーション作りの準備に取り掛かる。

「それじゃあ早速ポーション作り……あぁぁぁ!!」
「どうしたんですか!?」

 ラケルさんが薬草と書かれた箱を開けるや否や大きな悲鳴声をあげた。
 驚いて俺がラケルさんに近づき箱の中を見ると中身はすっからかんだった。

「こっちも空っぽだ……」

 実験室の別の場所からロキの声が聞こえて、そちらを振り返ると棚の中にあった空っぽの瓶を持っていた。おそらくその中にポーションに使われる聖水が保管されていたのだろう。

「昨日で使い切っちゃったですね」
「はぁ、とりに行かないとな……」

 どうやら昨日の実験で薬草とポーションを使い切ってしまったらしい。二人は大きなため息をついている。
 採りに行くだけなら簡単なのではと嫌そうな顔をしている二人の姿を不思議に見ている俺。

 すると実験室の扉が開きパスカルが入ってきた。

「どうだ? ポーション作りははかどっているか……って何を項垂れているんだ?」

 二人の姿を俺と同じように不思議そうに見ているパスカルだが、俺が事情を話すとパスカルも二人の姿に納得した。

「なら、わしがとってきてやろう。ついでにサタローも連れて行こう」
「本当ですか!? パスカルさん、サタローくん!」
「まじかよ、いいのか!?」

 パスカルの言葉に目を輝かせて俺に詰め寄る二人。別に薬草と聖水を採ってくるぐらい俺にでもできるし、ポーションの作り方を教えてもらうんだから俺が取ってくるのが礼儀だろう。

「べ、べつにいいですけど」

 俺の返答にいつも喧嘩している二人が手を取り合って感動している。あまりの大袈裟な反応に怖くなる俺。パスカルの方を見るとニヤニヤしている。

 ──やばいな、なんか嫌な予感がする……

 パスカルがこんな反応する時は大抵俺にとって良くないことがことしか起きないのが定番だ。
 でも、いいって言っちゃったしこれからきっと採りに行くこともあるだろうから今更やめるなんていえなかった。

「で、薬草と聖水ってどこにあるんだよ?」

 ロキとラケルさんを実験室に残して研究所の外に出たら俺とパスカル。

「ここから少し離れた森にあるが、薬草と聖水の場所は少し離れているから薬草採りと聖水汲みでそれぞれ人手が必要だ。だからこいつらを呼んでおいた」

 そう言ったパスカルの言葉を合図に遠くから小さい子どもが三人俺のところへ駆け寄ってきた。
 というか、「呼んでおいた」ってこうなることがわかっていたかのような物言いに眉間にしわをよせ怪しむ俺。
 しかし目の前からくる三人のうちの一人にはだいぶ見覚えのある天使がいたものだから、そんな気持ちはすぐに吹き飛んでしまった。

「サタローにいちゃーん!」
「マオ!」

 可愛い猫耳としっぽをゆらゆら揺らしながら俺の胸に飛び込んできたのは猫の獣人のマオだった。
 こう見えても魔法軍の第一連隊の隊員だ。

 そしてマオとは別に青い髪と赤い髪をした男女のちびっ子が俺の近くまで駆け寄ると不思議そうに俺の顔を見上げていた。

 マオを抱っこしたまま二人を見下ろすと二人の額からは白いツノが2本生えていることに気づく。

「もしかして! マオが言ってたサタロー?!」
「おねぇちゃん、目上の人にはさん付けしないと失礼だよ……」

 俺のことをまんまるなお目目でジーッと見つめているのは赤髪のポニーテールの女の子。そしてその女の子をお姉ちゃんと呼んでいるのは青髪の男の子だった。

「えーっと、だれかな?」

しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

処理中です...