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第三章 建国祭編
82 わがまま
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「楽しかったー」
あれから色々周っているうちに太陽は西へ傾き始める時間になっていた。俺たちは人気の少ない高台へ登り賑やかな街の景色を眺めていた。
まだまだ前日祭は終わらないが俺たちのデートはそろそろお開きの時間だ。夜の街の姿も見てみたい気もするが、忙しいアルに無理してあけてもらった予定、我儘を言える立場ではない。今日は十分楽しむことができて満足だった。
「今日はありがとう。すっごく楽しかったよ!」
この世界に来てから、否ここ数年の出来事の中でも一番にいい思い出となる日を過ごすことができた。それはきっとアルが相手だったということも関係しているのだと思う。俺のことからかって遊んでこないし、呆れたりもしない。別にそれが心の底から嫌だと思っているわけではないが、たまにはそういうのが全くない素敵な一日があってもいいと思う。何よりアルが俺以上に楽しそうなのが嬉しかった。
「私の方こそ、人生でこれほど楽しかったことはないよ。きっとサタローと一緒だったからだと思うよ」
「はは、さすがに大袈裟すぎない?」
このイケメンの人生の中で今日が今までで一番楽しかったと言うのは流石に大袈裟だと思う。俺は笑いながら受け流し、アルの方に顔を向けると真面目な顔でこちらを向いており俺は少しドキッとする。
「大袈裟じゃないよ。サタローは私にとって癒しの存在であり、本気で守りたいと思っている存在なんだよ!」
———癒し?
俺のどこら辺に癒し系要素があるのだろう? それに守りたいと言われても俺は誰かに守られるほどの価値はないと思う。守ってもらわないといけないぐらいにひ弱であることは否定できないが……
アルの発言は全てが大袈裟だけどすごく真面目でなんて言葉を返せば良いかわからず戸惑う。彼が冗談でこんな事を言うはずがない、即ち本気で言っているのだろうが、何故俺がアルにとってそんな存在になったのか疑問でしかない。
「魔力も自分で作れない俺だよ? 団長に守ってもらうほどの価値はないと思うけどなぁ」
自嘲気味にそう言った。
するとアルは悲しそうに俺を見つめる。なにか彼を悲しませるような事を言ってしまっただろうか、少し心配になる。
アルの燃えるような赤い瞳になんだか吸い込まれそうになり、目を離すことができない。
「サタローは、自分のこと過小評価しすぎてるよね」
「え? そうかな……だって俺は誰かがいないと生きられない身体なんだよ。皆んな優しいから助けてくれるけど、迷惑かけてるなって思うから」
俺的にはしっかり自分を分析したうえでの自己評価だ。"魔力が無くて他人がいないと生きられない"と言う体質は魔力が当たり前の世界では、かなり足を引っ張る存在。このくらいの評価が妥当だと判断したまでである。
転移前の俺の評価も低かった。クラスでキモがられてたし。フラれたらどうなるかとかもっとしっかり考えて行動すべきだったと今更ながら反省している。だから今は、その場の勢いというか、もしかしたらワンチャンみたいな確信のない自分に都合のいい考え方はしないようにしている。
一人でも生きていけるようになろうと思っていた矢先に転移して一人じゃ生きていけない身体になっていた。自己評価が低いのは当然だろう。俺にいいとこなんてちょっと背が高くて顔が整っているぐらいだ。ただこの目の前の男、アルフレッドに比べたら月とスッポン、俺が学校でそれなりに人気があるぐらいの顔だとすればアルは国を代表するイケメンと言ったところだ。おまけに性格もいいときた。
なんでこんなに完璧な人とデートしてんだ俺。と、ふと我に返る。そしていつのまにかアルに抱き締められていることに気がついた。
「え、えぇ? どうしたのア、アル?!」
「サタロー、もっと我儘になっていいんだよ。私たちに気を遣いすぎだよ」
アルの言葉に俺は戸惑うが、抱き締められている為身動きが取れず彼の顔も見られない。見えるのは綺麗な夕日と前日祭を楽しむ大勢の人々だけだ。
「だって、みんな忙しいのに俺のこと気にかけてくれて、変な体質のせいで迷惑かけてるのに我儘なんて言えないよ」
「いいんだよ言って、初めて会った日君は自分が死にそうなのに笑ってテントを出ていった。すごいと思ったよ、優しい子なんだって、守ってあげたいと思った。知らない場所から来て不安だろう、もっと頼ってくれ我儘言ってくれ」
アルの辛そうな声に泣きそうになった。知らない世界に来てずっと気を張っていたのかもしれない。前の世界に未練なんてないと言えば嘘になるが、戻りたいとも思わない。もう同じような過ちはしたくない。
大好きだった親友に避けられるようになって、毎日辛かったんだよな。クラスのみんなから、学校中から避けられてキモがられて平気でいられるほど俺は強くない。それでも家族に心配かけたくないから毎日学校には行っていた。
そんな生活のせいで人の顔色ばかり伺って生きるようになっていたのかもしれない。異世界に来ても癖でそういう風に振る舞ってしまっていたのかもしれない。
アルにそう言われて初めて気づくなんて、癖ってのはなかなかやめられないものだ。
「ありがとうアル。俺知らない場所で気を張っていたのかもしれない。これからはもう少しみんなに頼るようにするよ」
「少しじゃなくて、一杯頼ってくれ」
抱き寄せていた手を緩め、身体を離したアルは今度は肩に手を置き真剣な顔で俺のことを見つめていた。
「……えっと、頑張ります」
「サタローの頼みなら私は喜んで答えるからね。愛してるよサタロー」
アルは笑顔で俺の頭を撫でながらそう言った。真剣だった顔からいつもの優しいアルの顔に戻りホッと安心した。美しすぎるこの顔に見つめられると本当に心臓に悪い。ニコニコと笑っているこの男は自分の美しすぎる顔面をわかっているのだろうか。
「う、うん……ありがと」
お礼の言葉を一応言っておいた。俺も年の離れた弟に良く頭を撫でて褒めてやったものだ。きっとこの行為もそういう感覚なのだろう。アルはお兄ちゃんって感じするし、弟とかいないのかな。
相変わらずニコニコと笑っている。この表情の時のアルはやはりどこか犬のようで、言うならばお金持ちが飼っているゴールデンレトリバーってところだろうか。
「ところでサタローそろそろ魔力が無くなる頃じゃないかい?」
「え?」
アルは笑顔のままそう言った。そういえば今日で5日目である。しかし訓練のおかげ+5日になった俺の身体はまだ魔力をもらう時期ではなかった。てっきりパスカルが伝えてくれていると思っていたのが違うらしい。
なぜそんなに笑顔で言っているのかわからないが、本日の俺はアルに魔力をもらう予定ではない。早めにもらうに越したことはないが、それでも少し早すぎる気がする。
恋人ならデートの後にとかあるんだろうけど、そういう関係では無いわけだし流されてとかよくは無いだろう。
「あのさアル、俺実はあの日の後研究所で特訓して寿命が5日間から+5日の10日間に増えたんだ」
「え? ええ!? そうなの…………それは、よかったね」
言葉とは裏腹にさっきまでのアルの笑顔は消え、なぜか全然嬉しそうで無い。とても喜ばしい事なのにアルの心情がよくわからない。
「だから今日じゃなくて大丈夫だから。心配してくれてありがとう」
今度は俺が笑顔でそう言った。するとアルも笑ったが何だか笑顔がぎこちなかった。
気づけば夕日は完全に沈みきり辺りは暗くなっていた。街頭に明かりがつき、魔法だろうかランタンがふわふわと頭上に浮いている。夜の部が始まるようだが、俺たちのデートはここまでだ。
アルは明日の式典の準備の為にそろそろ帰らなければいけないはず、パスカルによれば式典は昼かららしい。
「今日はありがとう本当に楽しかったよ」
「う、うん。そうだね」
最後は何だが変な雰囲気でお開きとなってしまったが、それでも俺はとても楽しい一日を過ごすことができ大満足であった。
あれから色々周っているうちに太陽は西へ傾き始める時間になっていた。俺たちは人気の少ない高台へ登り賑やかな街の景色を眺めていた。
まだまだ前日祭は終わらないが俺たちのデートはそろそろお開きの時間だ。夜の街の姿も見てみたい気もするが、忙しいアルに無理してあけてもらった予定、我儘を言える立場ではない。今日は十分楽しむことができて満足だった。
「今日はありがとう。すっごく楽しかったよ!」
この世界に来てから、否ここ数年の出来事の中でも一番にいい思い出となる日を過ごすことができた。それはきっとアルが相手だったということも関係しているのだと思う。俺のことからかって遊んでこないし、呆れたりもしない。別にそれが心の底から嫌だと思っているわけではないが、たまにはそういうのが全くない素敵な一日があってもいいと思う。何よりアルが俺以上に楽しそうなのが嬉しかった。
「私の方こそ、人生でこれほど楽しかったことはないよ。きっとサタローと一緒だったからだと思うよ」
「はは、さすがに大袈裟すぎない?」
このイケメンの人生の中で今日が今までで一番楽しかったと言うのは流石に大袈裟だと思う。俺は笑いながら受け流し、アルの方に顔を向けると真面目な顔でこちらを向いており俺は少しドキッとする。
「大袈裟じゃないよ。サタローは私にとって癒しの存在であり、本気で守りたいと思っている存在なんだよ!」
———癒し?
俺のどこら辺に癒し系要素があるのだろう? それに守りたいと言われても俺は誰かに守られるほどの価値はないと思う。守ってもらわないといけないぐらいにひ弱であることは否定できないが……
アルの発言は全てが大袈裟だけどすごく真面目でなんて言葉を返せば良いかわからず戸惑う。彼が冗談でこんな事を言うはずがない、即ち本気で言っているのだろうが、何故俺がアルにとってそんな存在になったのか疑問でしかない。
「魔力も自分で作れない俺だよ? 団長に守ってもらうほどの価値はないと思うけどなぁ」
自嘲気味にそう言った。
するとアルは悲しそうに俺を見つめる。なにか彼を悲しませるような事を言ってしまっただろうか、少し心配になる。
アルの燃えるような赤い瞳になんだか吸い込まれそうになり、目を離すことができない。
「サタローは、自分のこと過小評価しすぎてるよね」
「え? そうかな……だって俺は誰かがいないと生きられない身体なんだよ。皆んな優しいから助けてくれるけど、迷惑かけてるなって思うから」
俺的にはしっかり自分を分析したうえでの自己評価だ。"魔力が無くて他人がいないと生きられない"と言う体質は魔力が当たり前の世界では、かなり足を引っ張る存在。このくらいの評価が妥当だと判断したまでである。
転移前の俺の評価も低かった。クラスでキモがられてたし。フラれたらどうなるかとかもっとしっかり考えて行動すべきだったと今更ながら反省している。だから今は、その場の勢いというか、もしかしたらワンチャンみたいな確信のない自分に都合のいい考え方はしないようにしている。
一人でも生きていけるようになろうと思っていた矢先に転移して一人じゃ生きていけない身体になっていた。自己評価が低いのは当然だろう。俺にいいとこなんてちょっと背が高くて顔が整っているぐらいだ。ただこの目の前の男、アルフレッドに比べたら月とスッポン、俺が学校でそれなりに人気があるぐらいの顔だとすればアルは国を代表するイケメンと言ったところだ。おまけに性格もいいときた。
なんでこんなに完璧な人とデートしてんだ俺。と、ふと我に返る。そしていつのまにかアルに抱き締められていることに気がついた。
「え、えぇ? どうしたのア、アル?!」
「サタロー、もっと我儘になっていいんだよ。私たちに気を遣いすぎだよ」
アルの言葉に俺は戸惑うが、抱き締められている為身動きが取れず彼の顔も見られない。見えるのは綺麗な夕日と前日祭を楽しむ大勢の人々だけだ。
「だって、みんな忙しいのに俺のこと気にかけてくれて、変な体質のせいで迷惑かけてるのに我儘なんて言えないよ」
「いいんだよ言って、初めて会った日君は自分が死にそうなのに笑ってテントを出ていった。すごいと思ったよ、優しい子なんだって、守ってあげたいと思った。知らない場所から来て不安だろう、もっと頼ってくれ我儘言ってくれ」
アルの辛そうな声に泣きそうになった。知らない世界に来てずっと気を張っていたのかもしれない。前の世界に未練なんてないと言えば嘘になるが、戻りたいとも思わない。もう同じような過ちはしたくない。
大好きだった親友に避けられるようになって、毎日辛かったんだよな。クラスのみんなから、学校中から避けられてキモがられて平気でいられるほど俺は強くない。それでも家族に心配かけたくないから毎日学校には行っていた。
そんな生活のせいで人の顔色ばかり伺って生きるようになっていたのかもしれない。異世界に来ても癖でそういう風に振る舞ってしまっていたのかもしれない。
アルにそう言われて初めて気づくなんて、癖ってのはなかなかやめられないものだ。
「ありがとうアル。俺知らない場所で気を張っていたのかもしれない。これからはもう少しみんなに頼るようにするよ」
「少しじゃなくて、一杯頼ってくれ」
抱き寄せていた手を緩め、身体を離したアルは今度は肩に手を置き真剣な顔で俺のことを見つめていた。
「……えっと、頑張ります」
「サタローの頼みなら私は喜んで答えるからね。愛してるよサタロー」
アルは笑顔で俺の頭を撫でながらそう言った。真剣だった顔からいつもの優しいアルの顔に戻りホッと安心した。美しすぎるこの顔に見つめられると本当に心臓に悪い。ニコニコと笑っているこの男は自分の美しすぎる顔面をわかっているのだろうか。
「う、うん……ありがと」
お礼の言葉を一応言っておいた。俺も年の離れた弟に良く頭を撫でて褒めてやったものだ。きっとこの行為もそういう感覚なのだろう。アルはお兄ちゃんって感じするし、弟とかいないのかな。
相変わらずニコニコと笑っている。この表情の時のアルはやはりどこか犬のようで、言うならばお金持ちが飼っているゴールデンレトリバーってところだろうか。
「ところでサタローそろそろ魔力が無くなる頃じゃないかい?」
「え?」
アルは笑顔のままそう言った。そういえば今日で5日目である。しかし訓練のおかげ+5日になった俺の身体はまだ魔力をもらう時期ではなかった。てっきりパスカルが伝えてくれていると思っていたのが違うらしい。
なぜそんなに笑顔で言っているのかわからないが、本日の俺はアルに魔力をもらう予定ではない。早めにもらうに越したことはないが、それでも少し早すぎる気がする。
恋人ならデートの後にとかあるんだろうけど、そういう関係では無いわけだし流されてとかよくは無いだろう。
「あのさアル、俺実はあの日の後研究所で特訓して寿命が5日間から+5日の10日間に増えたんだ」
「え? ええ!? そうなの…………それは、よかったね」
言葉とは裏腹にさっきまでのアルの笑顔は消え、なぜか全然嬉しそうで無い。とても喜ばしい事なのにアルの心情がよくわからない。
「だから今日じゃなくて大丈夫だから。心配してくれてありがとう」
今度は俺が笑顔でそう言った。するとアルも笑ったが何だか笑顔がぎこちなかった。
気づけば夕日は完全に沈みきり辺りは暗くなっていた。街頭に明かりがつき、魔法だろうかランタンがふわふわと頭上に浮いている。夜の部が始まるようだが、俺たちのデートはここまでだ。
アルは明日の式典の準備の為にそろそろ帰らなければいけないはず、パスカルによれば式典は昼かららしい。
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