85 / 127
第三章 建国祭編
83 獣人
しおりを挟む
次の日俺はいつもよりかなり遅い時間に起きた。
昨日はあの後、アルと一緒に帰り門の前で別れた。アルはどこか寂しそうにしている様に見えたがきっと気のせいだろう。
俺は朝の身支度を整えると食堂へ遅めの朝食兼早めの昼食を食べに向かった。いつもならちらほらと兵士の姿が見えているのだが今日は食堂に兵士たちの姿を見られなかった。不思議に思い厨房を覗くと料理人も一人もいない。
辺りをキョロキョロと見回すと張り紙が一枚貼ってあるのに気がついた。張り紙には何か文字が書いてあったが生憎この国の文字は読めない。しかし張り紙が貼ってある場合は大体やっていないということだ。数字だけは何となく読めるので、恐らくだが建国祭の影響で営業時間がいつもより早まっていたと思われる。
式典の後はパーティーがあると聞いた。その食事の準備をしているのだろう。そう言えばこの5日間でデニスさんが色々と俺にレシピを聞いてきていた。この日のために聞いてきたのかもしれない。俺の教えた味が来訪者に喜んでもらえるかと考えると少し緊張してしまう。
———って、それは大袈裟だよな。
妄想で一人盛り上がってしまった。それにしても本当に一人きりで、何だが世界に俺しかいないみたいだ。本日の予定はない。王都は今日も出店で賑わっているだろう。ロキとラケルさんは今日、王都へ行くと言っていた。一人で行ってばったり出会したら気まずいし、ここで大人しくしていたほうがいいだろう。暇すぎるので、式典を行う城の方へ行ってみようと思う。聞くところによると一般向けの参列席も用意されているらしい、昨日アルに我儘上等と言われたので自由にやらせてもらうことに決めた。
とりあえず食べ逃した朝食を食べてから行くことにしよう。厨房に入り何かないか探し朝食を作ることにした。勝手に使って大丈夫かと思うかもしれないが、デニスさんに自由に使っていいと言われているのでそこは問題ない。
俺はちゃちゃっと朝食を作り腹を満たし、式典が行われる城へ向かった。
城門が見えてくると兵士の姿も見えてきた。城門の前は長く大きな橋になっており、等間隔で兵士達が立っている。来訪者はここで馬車を降り城に入るのだろう。ちらほらと豪華な正装に身を包んだ者たちが門をくぐり城の中に入っていくのが見える。一般参加の入城時間は決められておりまだ30分も時間がある。流石に中に入ることはできないので門の外に知っている兵士がいなかと眺めていると見知った顔を見つけた。
「おーいマオ!」
「あれ? サタローにいちゃんだ!」
俺の天使マオだ。いつもの可愛い洋服とは違いアルやギルが来ている軍の制服を着ている。本当に兵士だったようだ。こんなに小さな男の子が国のために働いているというのに俺は呑気に祭りを楽しんでいたことに少し情けなくなる。
それにしてもマオ以外の獣人は見当たらない。マオだけここを任されているのだろうか。可愛いからみんなに見せびらかす為かもしれない。その気持ちはすごくわかる。
俺の登場に大層喜んでいるマオの姿に俺は癒されていると知った声が聞こえた。
「おい、マオ! こんなところにいたのかよ!」
「あ! ルディにいだ!」
焦った様子のルディは俺の姿を見て驚いた様子だったが、すぐにマオの方に視線を向けるとマオの腕を掴んだ。
「俺たちの警備区域はここじゃない! 移動するぞ!」
「あれそうだったっけ?」
どうやら警備する場所を間違えていたようだ。呑気に笑っているマオとは違い、焦っているルディ。何か急ぎの用事でもあるのだろうか。他に知り合いもいないのでルディの後に俺もついて行くことにした。
「痛っ、ご、ごめんなさい!」
「「大丈夫か!」」
門へ向かって行く客人を避けて小走りで進んでいくとマオが男の人とぶつかり尻餅をついた。俺とルディはマオの側に駆け寄る。すぐにマオは謝ったが俺が見た感じだと男はわざと当たったように見えた。正装に身を包んだ男はどこかの国のお偉いさんだろうか、美形が多いと感じるこの世界だがそいつはでっぷりと太ったいかにも性格が捻じ曲がったような見た目の男であった。
「なぜ貴様ら獣人がそのような格好をしている?」
太った男は尻餅をついているマオに謝りもせず冷たい口調でそう言った。
「この国では人として扱われているようです」
男の少し後ろを歩いていた使用人であろう男が太った男の問いに答える。
「奴隷ごときが人間と同じ扱いとはいい気なものだな? 我が国に生まれたのなら私が存分に可愛がってやったのに、特に狼は珍しいからな」
舐めるようにルディを見ている。いつもならすぐに言い返すルディはじっと黙ったまま真っ青な顔をしていた。マオは怯えて俺の服を掴んで震えていた。
「陛下、そんな奴らは放っておいて中へ」
「ん? ああそうだな」
使用人の言葉で男は見下した目で俺達の横を通り過ぎていった。どうやらどこかの国王のようだ。あんな国に転移しなくて心底良かったと思う。
ルディもホッと息を吐いているが、青白い顔には変わりないので心配だ。マオは今だに震えて目に涙を浮かべている。
「ルディ立てるか?」
「う、うん」
ここはひと目につく為、俺はマオを抱っこしルディの肩を支えて橋を渡りきり、少し外れた人気のない場所へ移動した。
それにしてもあいつのあの態度なんだったんだ。まるでマオやルディを人間として見ていなかった。それに二人の怖がりようを見るとあの態度がどういう事なのか分かっているかのような感じである。
二人を木陰に座らせる。ルディの顔色はさっきよりも良くなっていて、マオも震えはおさまり落ち着いたようだ。
「二人とも大丈夫か?」
「あ、あぁ。わりぃ、取り乱した……」
ルディの声は弱々しくいつもの勢いのある生意気な少年の姿はどこにもない。何だか調子が狂う。
「なあ、あれってどういう事なんだ? あの男お前らを人間として見てなかった感じだったけど……」
俺は恐る恐る二人にさっきの状況について尋ねる。しかし二人は俺の言葉を聞き俯き下を向いてしまった。マオに至ってはまた泣きそうな顔をしている。
「わ、悪い! 嫌なら話さなくてもいいから!」
俺は慌ててさっきの言葉を取り消す。
このどんよりした空気を俺にはどうすることもできず、頭を抱え二人と一緒に俯いた。
「なーにやってんの3人とも俯いて?」
悪い空気を打ち消すように明るい声が聞こえ、俺は顔を上げた。そこにいたのは二人の所属している第一連隊の隊長レオンハルトことレオだった。
俺は助けを求めるかのようにレオにさっき起きたことを話した。
「なるほどねえ。ギルが気を利かせて人気のないところの警備にしてくれたのにマオお前バカだなあ」
「うう、ごめんなさい」
デリカシーの無い言葉を部下に吐き捨てるレオ。言い方ってもんがあるだろうにとレオに言おうと思ったが状況が掴めない今、割って入るのは良く無いと俺は黙っていた。
「いいから二人は自分達の区域に戻れ」
「……ああ、ほらいくぞ」
「……うん」
マオはルディに手を引かれ本来自分達が担当する警備区域へ歩いていった。二人が見えなくなるとレオは小さくため息をつき二人が座っていた木のそばに腰を下ろした。すると自分の座っている横の芝生を手で叩きながら俺の顔を見る。ここへ座れということだろう。俺は黙ってレオの横へ腰を下ろした。
「聞きたいんでしょ。さっきの状況について」
「ああ、でも無理して話さなくてもいいからな!」
「別にいいよ。話すって」
レオは俺の反応に苦笑いをし、さっきの男の態度がどう言う意味なのか説明し始めた。
「俺たちはこの国では獣の特徴を持った人間って立場で暮らしてる。でも国によっては人間のような見た目をした動物って扱いのところもある」
俺からしてみれば耳と尻尾が生えただけの人間の様にしか見えない。動物寄りなら童話の美女と野獣に出てくる野獣みたいな姿のことを言うと思うのだけれど、捉え方は人それぞれなのだろうか。この場合国それぞれだな。
「そう言う国では俺たちは奴隷として扱われる。人の言葉が通じる奴隷として、人間に飼われるんだ」
「飼われてどうなるんだ……」
「飼い主のマニアックな遊びに付き合わされる。そしていらなくなったら捨てられる。薬漬けにされて中毒死する奴らもいる」
レオは遠い目をしてそう言った。まるでその姿を見たことがあるかの様に……いつも笑ってふざけている彼の過去に何があったのだろうか。人の過去に土足で踏み込むのは良く無い。俺だって過去など知られたく無いし忘れたい。
「そんなこと許されるのか?」
「国がそう決めたんだ。それが当たり前だからね。誰も疑問になんて思わないよ。当たり前ってのは洗脳と一緒さ小さい頃からそれが当たり前なら誰も疑問になんて思わない」
レオは諦めた顔でそう言った。今まで見たことのない彼の姿に俺は何と言葉をかければいいのかわからなくなった。マオやルディのあの怯えた姿、そう言う国があると聞いただけの反応とは思えない。恐らくだが二人もそういった経験があるのかもしれない。これは俺の憶測でしかない為、確証は全くない。
これ以上レオから聞き出すのは酷である。いつもふざけている奴だからと言って、何でもかんでも聞いていいわけじゃない。
「そっか、話してくれてありがとな」
「いえいえ」
レオはもういつも通りの表情に戻っていた。このクロノス王国はどうやら相当恵まれた豊かな国の様だ。そんな寛容な国の国王とは一体どんな人物なのだろうか。リズやみんなからバカ王子と呼ばれているエドガー王子の父親に当たる存在がこの国の国王なわけだ。勝手ながらにこの国に住まわせて貰っている身としては、国王の顔知っておき毎日感謝しながら過ごしたほうがいいだろう。
しかしあの二人の親か……美形ではあるだろうが、ぶっ飛んだ考えしてそうだ。
「ところで何でサタローはこんなところにいるの? ちなみに俺はサボり~」
ヘラヘラ笑いながら堂々とサボり宣言をする隊長様。さっきのしんみりした空気どこいった?
「式典を見に来たんだ。国王の顔を一度でいいから拝見しておこうと思って」
「ほー、んじゃ俺が案内してあげる。人も多いし迷うだろうから」
「ほんとか! あっ……でもな……うーん、お前サボりだし……」
「大丈夫だって、俺がサボるのはいつものことだから誰も何とも思わないって」
「……それ自分で言ってて情けなくならないのか……いいよ一人で行くからさっさと仕事に戻れって」
レオの提案に悩んだ結果、結局断ることにした。サボりの常習犯であるレオがいなくなったところで本人の言うとおり誰も疑問には思わないだろう。しかし、サボりと気づいた時の副隊長であるアーサーのことを思うと罪悪感しか生まれないので一人で行くことにした。城の中だ、危険なことはないだろうし一般客もたくさんいるため案内も必要ないだろう。レオの悲しそうな顔を尻目に俺は一般参加者の入城時間になるまで待って城の中へ入った。
昨日はあの後、アルと一緒に帰り門の前で別れた。アルはどこか寂しそうにしている様に見えたがきっと気のせいだろう。
俺は朝の身支度を整えると食堂へ遅めの朝食兼早めの昼食を食べに向かった。いつもならちらほらと兵士の姿が見えているのだが今日は食堂に兵士たちの姿を見られなかった。不思議に思い厨房を覗くと料理人も一人もいない。
辺りをキョロキョロと見回すと張り紙が一枚貼ってあるのに気がついた。張り紙には何か文字が書いてあったが生憎この国の文字は読めない。しかし張り紙が貼ってある場合は大体やっていないということだ。数字だけは何となく読めるので、恐らくだが建国祭の影響で営業時間がいつもより早まっていたと思われる。
式典の後はパーティーがあると聞いた。その食事の準備をしているのだろう。そう言えばこの5日間でデニスさんが色々と俺にレシピを聞いてきていた。この日のために聞いてきたのかもしれない。俺の教えた味が来訪者に喜んでもらえるかと考えると少し緊張してしまう。
———って、それは大袈裟だよな。
妄想で一人盛り上がってしまった。それにしても本当に一人きりで、何だが世界に俺しかいないみたいだ。本日の予定はない。王都は今日も出店で賑わっているだろう。ロキとラケルさんは今日、王都へ行くと言っていた。一人で行ってばったり出会したら気まずいし、ここで大人しくしていたほうがいいだろう。暇すぎるので、式典を行う城の方へ行ってみようと思う。聞くところによると一般向けの参列席も用意されているらしい、昨日アルに我儘上等と言われたので自由にやらせてもらうことに決めた。
とりあえず食べ逃した朝食を食べてから行くことにしよう。厨房に入り何かないか探し朝食を作ることにした。勝手に使って大丈夫かと思うかもしれないが、デニスさんに自由に使っていいと言われているのでそこは問題ない。
俺はちゃちゃっと朝食を作り腹を満たし、式典が行われる城へ向かった。
城門が見えてくると兵士の姿も見えてきた。城門の前は長く大きな橋になっており、等間隔で兵士達が立っている。来訪者はここで馬車を降り城に入るのだろう。ちらほらと豪華な正装に身を包んだ者たちが門をくぐり城の中に入っていくのが見える。一般参加の入城時間は決められておりまだ30分も時間がある。流石に中に入ることはできないので門の外に知っている兵士がいなかと眺めていると見知った顔を見つけた。
「おーいマオ!」
「あれ? サタローにいちゃんだ!」
俺の天使マオだ。いつもの可愛い洋服とは違いアルやギルが来ている軍の制服を着ている。本当に兵士だったようだ。こんなに小さな男の子が国のために働いているというのに俺は呑気に祭りを楽しんでいたことに少し情けなくなる。
それにしてもマオ以外の獣人は見当たらない。マオだけここを任されているのだろうか。可愛いからみんなに見せびらかす為かもしれない。その気持ちはすごくわかる。
俺の登場に大層喜んでいるマオの姿に俺は癒されていると知った声が聞こえた。
「おい、マオ! こんなところにいたのかよ!」
「あ! ルディにいだ!」
焦った様子のルディは俺の姿を見て驚いた様子だったが、すぐにマオの方に視線を向けるとマオの腕を掴んだ。
「俺たちの警備区域はここじゃない! 移動するぞ!」
「あれそうだったっけ?」
どうやら警備する場所を間違えていたようだ。呑気に笑っているマオとは違い、焦っているルディ。何か急ぎの用事でもあるのだろうか。他に知り合いもいないのでルディの後に俺もついて行くことにした。
「痛っ、ご、ごめんなさい!」
「「大丈夫か!」」
門へ向かって行く客人を避けて小走りで進んでいくとマオが男の人とぶつかり尻餅をついた。俺とルディはマオの側に駆け寄る。すぐにマオは謝ったが俺が見た感じだと男はわざと当たったように見えた。正装に身を包んだ男はどこかの国のお偉いさんだろうか、美形が多いと感じるこの世界だがそいつはでっぷりと太ったいかにも性格が捻じ曲がったような見た目の男であった。
「なぜ貴様ら獣人がそのような格好をしている?」
太った男は尻餅をついているマオに謝りもせず冷たい口調でそう言った。
「この国では人として扱われているようです」
男の少し後ろを歩いていた使用人であろう男が太った男の問いに答える。
「奴隷ごときが人間と同じ扱いとはいい気なものだな? 我が国に生まれたのなら私が存分に可愛がってやったのに、特に狼は珍しいからな」
舐めるようにルディを見ている。いつもならすぐに言い返すルディはじっと黙ったまま真っ青な顔をしていた。マオは怯えて俺の服を掴んで震えていた。
「陛下、そんな奴らは放っておいて中へ」
「ん? ああそうだな」
使用人の言葉で男は見下した目で俺達の横を通り過ぎていった。どうやらどこかの国王のようだ。あんな国に転移しなくて心底良かったと思う。
ルディもホッと息を吐いているが、青白い顔には変わりないので心配だ。マオは今だに震えて目に涙を浮かべている。
「ルディ立てるか?」
「う、うん」
ここはひと目につく為、俺はマオを抱っこしルディの肩を支えて橋を渡りきり、少し外れた人気のない場所へ移動した。
それにしてもあいつのあの態度なんだったんだ。まるでマオやルディを人間として見ていなかった。それに二人の怖がりようを見るとあの態度がどういう事なのか分かっているかのような感じである。
二人を木陰に座らせる。ルディの顔色はさっきよりも良くなっていて、マオも震えはおさまり落ち着いたようだ。
「二人とも大丈夫か?」
「あ、あぁ。わりぃ、取り乱した……」
ルディの声は弱々しくいつもの勢いのある生意気な少年の姿はどこにもない。何だか調子が狂う。
「なあ、あれってどういう事なんだ? あの男お前らを人間として見てなかった感じだったけど……」
俺は恐る恐る二人にさっきの状況について尋ねる。しかし二人は俺の言葉を聞き俯き下を向いてしまった。マオに至ってはまた泣きそうな顔をしている。
「わ、悪い! 嫌なら話さなくてもいいから!」
俺は慌ててさっきの言葉を取り消す。
このどんよりした空気を俺にはどうすることもできず、頭を抱え二人と一緒に俯いた。
「なーにやってんの3人とも俯いて?」
悪い空気を打ち消すように明るい声が聞こえ、俺は顔を上げた。そこにいたのは二人の所属している第一連隊の隊長レオンハルトことレオだった。
俺は助けを求めるかのようにレオにさっき起きたことを話した。
「なるほどねえ。ギルが気を利かせて人気のないところの警備にしてくれたのにマオお前バカだなあ」
「うう、ごめんなさい」
デリカシーの無い言葉を部下に吐き捨てるレオ。言い方ってもんがあるだろうにとレオに言おうと思ったが状況が掴めない今、割って入るのは良く無いと俺は黙っていた。
「いいから二人は自分達の区域に戻れ」
「……ああ、ほらいくぞ」
「……うん」
マオはルディに手を引かれ本来自分達が担当する警備区域へ歩いていった。二人が見えなくなるとレオは小さくため息をつき二人が座っていた木のそばに腰を下ろした。すると自分の座っている横の芝生を手で叩きながら俺の顔を見る。ここへ座れということだろう。俺は黙ってレオの横へ腰を下ろした。
「聞きたいんでしょ。さっきの状況について」
「ああ、でも無理して話さなくてもいいからな!」
「別にいいよ。話すって」
レオは俺の反応に苦笑いをし、さっきの男の態度がどう言う意味なのか説明し始めた。
「俺たちはこの国では獣の特徴を持った人間って立場で暮らしてる。でも国によっては人間のような見た目をした動物って扱いのところもある」
俺からしてみれば耳と尻尾が生えただけの人間の様にしか見えない。動物寄りなら童話の美女と野獣に出てくる野獣みたいな姿のことを言うと思うのだけれど、捉え方は人それぞれなのだろうか。この場合国それぞれだな。
「そう言う国では俺たちは奴隷として扱われる。人の言葉が通じる奴隷として、人間に飼われるんだ」
「飼われてどうなるんだ……」
「飼い主のマニアックな遊びに付き合わされる。そしていらなくなったら捨てられる。薬漬けにされて中毒死する奴らもいる」
レオは遠い目をしてそう言った。まるでその姿を見たことがあるかの様に……いつも笑ってふざけている彼の過去に何があったのだろうか。人の過去に土足で踏み込むのは良く無い。俺だって過去など知られたく無いし忘れたい。
「そんなこと許されるのか?」
「国がそう決めたんだ。それが当たり前だからね。誰も疑問になんて思わないよ。当たり前ってのは洗脳と一緒さ小さい頃からそれが当たり前なら誰も疑問になんて思わない」
レオは諦めた顔でそう言った。今まで見たことのない彼の姿に俺は何と言葉をかければいいのかわからなくなった。マオやルディのあの怯えた姿、そう言う国があると聞いただけの反応とは思えない。恐らくだが二人もそういった経験があるのかもしれない。これは俺の憶測でしかない為、確証は全くない。
これ以上レオから聞き出すのは酷である。いつもふざけている奴だからと言って、何でもかんでも聞いていいわけじゃない。
「そっか、話してくれてありがとな」
「いえいえ」
レオはもういつも通りの表情に戻っていた。このクロノス王国はどうやら相当恵まれた豊かな国の様だ。そんな寛容な国の国王とは一体どんな人物なのだろうか。リズやみんなからバカ王子と呼ばれているエドガー王子の父親に当たる存在がこの国の国王なわけだ。勝手ながらにこの国に住まわせて貰っている身としては、国王の顔知っておき毎日感謝しながら過ごしたほうがいいだろう。
しかしあの二人の親か……美形ではあるだろうが、ぶっ飛んだ考えしてそうだ。
「ところで何でサタローはこんなところにいるの? ちなみに俺はサボり~」
ヘラヘラ笑いながら堂々とサボり宣言をする隊長様。さっきのしんみりした空気どこいった?
「式典を見に来たんだ。国王の顔を一度でいいから拝見しておこうと思って」
「ほー、んじゃ俺が案内してあげる。人も多いし迷うだろうから」
「ほんとか! あっ……でもな……うーん、お前サボりだし……」
「大丈夫だって、俺がサボるのはいつものことだから誰も何とも思わないって」
「……それ自分で言ってて情けなくならないのか……いいよ一人で行くからさっさと仕事に戻れって」
レオの提案に悩んだ結果、結局断ることにした。サボりの常習犯であるレオがいなくなったところで本人の言うとおり誰も疑問には思わないだろう。しかし、サボりと気づいた時の副隊長であるアーサーのことを思うと罪悪感しか生まれないので一人で行くことにした。城の中だ、危険なことはないだろうし一般客もたくさんいるため案内も必要ないだろう。レオの悲しそうな顔を尻目に俺は一般参加者の入城時間になるまで待って城の中へ入った。
107
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件
表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。
病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。
この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。
しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。
ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。
強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。
これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。
甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。
本編完結しました。
続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる