4 / 4
4
しおりを挟む
「ん……」
俺はなにか違和感を抱いていた。
なんだかやけに体が、ふわふわする物の上にある。
重い瞼を数ミリ開けると、白いものが見えた。
ああ、これはベッドだとなんとなく思う。
でも俺のベッドはもっと固くて、こんなに気持ちよくはない。
もしかすると俺は雲の上にいるのか?
いや、綿菓子かもしれない。
ああ、綿菓子なら全部食べてしまいたい……。
そう思いながら目を開けると、スピラの顔が目に入った。
「……」
えっと?
なんだっけ?
「目が覚めたんだね」
その言葉に俺の意識がはっきり戻った。
「スピラ様!」
叫んで起き上がろうとした。
けれどそんな俺を、スピラは上からベッドに押さえつける。
自分の状況を確認した。
何がどうなってるんだ?
そう思いながら、目に入った映像を結びつけて一瞬で組み立てる。
さっきの客室とは違う部屋にいる。
豪華なベッドに押さえつけられている。
俺どうなったんだ?
もしや裸ではないのかと、自分の体を見て驚いた。
「な、何でこんな格好に!?」
叫ぶとスピラが笑った。
「よく似合っているよ」
「ってメイド服じゃないですか!? しかもフリフリロリロリの! これは普通のクラシカルなメイドの服じゃ
ないですよ。これじゃアキバ専用ですよ!」
「アキバ? ああ君の国の都市だね。なんでも優秀な技術者がいるとか言う」
まあ、あながち技術者に間違いはないか……なんてのんきに考えてる場合ではない!
「あの、スピラ様、これはどういう事ですか!? ってか何で俺こんな格好で押し倒されているんでしょうか?
これじゃまるで俺の貞操の危機なんですが!」
スピラは顔を近づけながら言う。
「君は本当に面白いね。この状況が貞操の危機以外の何に見えるっていうの?」
言いながら彼は自分のシャツのボタンを外し出した。
「え、な、なんで、そんな事に……」
俺は震えながら必死で聞く。
「何でって僕はそういう趣味なの。それで君はそんな僕のすごくタイプなんだよ」
「た、タイプ?」
「ああ、小さくてかわいいじゃない? 僕そういうリスみたいな子が好きなんだ」
「俺リスじゃないんで! どっちかと言うと凶暴でかわいくないし! ってそうだ、王子はどうしたんですか!?」
「フィには君より強い薬で眠ってもらってるよ。邪魔されないようにね。君には意識を持ってもらって、一緒に楽しみたかったから弱い薬にしたんだよ。フィが寝てる間に僕たちは関係を結ぶんだ。君は僕の専用召使になればいいよ。まさか嫌なんて言わないよね? そんな事言ったら、君と僕の関係をフィに言ってしまうよ。ね、恥ずかしいでしょ? 強姦されたなんて知られるの」
俺はその言葉にガタガタと震えた。
やっと状況が理解できた。
「お願いです、やめてください。考え直して……」
言いながら逃げ出すチャンスをうかがっていた。
するとスピラが楽しそうに笑う。
「ああ、逃げられないよ。君の飲んだ薬は体の自由も奪う薬だから」
「え?」
俺は足をあげようとした。
少しは動くが、力が入らなくて持ち上げる事が出来ない。
これって絶対絶命?
「さあ、ノア君、楽しもうね」
スピラの手が俺のメイド服のスカートの中に入り込んだ。
「わーーー! いきなりなんてとこ触るんですか!?」
あらい息でスピラが言う。
「ふふ、だってたまらないだろう? 僕は男の子が好きだけどね、スカートの中に手をいれるっていうのは最高に燃えるんだよ。ああ、君の国では萌えるって言うんだっけ? 良い文化だね。ああ、君のその黒い髪もいいね。上気した頬も色っぽいよ」
「わーー、もう何も言わないで下さい! 言葉責めとかすっげー気持ち悪いし、もう触らないで、あ……!」
「ああ、なんだ気持ちいいんじゃん。感じてるよね?」
スピラは俺のモノを下着の中から探し出す。
「本当にやめて下さい! 誰か助けて!」
俺は夢中で助けを呼び出していた。
体が動かないし、出来る事は叫ぶこと位しかなかった。
「助けて、助けて、誰か!」
叫びながらフィ王子の顔を思い浮かべた。
王子、王子、助けて、俺、あんたの事が……。
「ああ、こんなに濡れてるね……君も楽しんでるんだね……」
スピラのその言葉に俺の中の何かが切れた。
そして今度こそ恥も外聞もなく泣き叫んだ。
「助けて神様、仏様! 阿弥陀様! お釈迦様! ドラえもん! 王子ーーー!」
「呼んだか?」
「え?」
ふいに聞こえた声に驚いた。
いや、スピラも驚いている。
「王子?」
そう、俺達の前に王子が立っている。
その姿にスピラが青ざめてつぶやく。
「な、何で……」
王子は余裕ある笑みを浮かべる。
「何でって、ワインを飲まなかったんだよ。毒味もしてないものを、この俺様が口にすると思うか? お前の魂胆を暴くために飲んだフリをしてたんだよ!」
そう言う王子をなんだかとっても格好良いと思ってしまった。
「それよりも、よくも俺の召使に手をだしてくれたな」
スピラは慌てて俺の上からどいて、床に立つ。
「フィ、ごめん。ちょっとした出来心なんだよ。というかこういう趣味嗜好は罪じゃないんだよ。病気なんだから仕方ないんだ。だから許してくれるだろう?」
王子の青い目が光った。
そして。
「俺の王国ではな、そういう病人は生涯入院措置なんだよ!!」
王子は右ストレートをスピラの顔面にいれた。
俺はその見事さに言葉もなかった。
床で気絶しているスピラから俺へと、王子は視線を向けた。
「お前が俺を呼んだから来てやったんだぞ」
「あ、俺、ドラえもんって呼んだから」
「違うだろ! 王子って呼んだだろ!」
俺はいつもの会話に安堵して、やっと微笑んだ。
「ありがとうございます。助かりました、王子」
「ああ」
王子は俺に近付いてきた。
そしてそのまま俺の体を抱き上げた。
「お、王子?」
「動けないんだろ? 黙ってろ」
俺は顔を伏せた。
だって王子をすっごく格好いいって思ってしまったんだ。
顔が熱くてまともに見てらんない。
「首にしがみつけよ」
黙って腕を回した。
王子のやわらかい髪が頬に触れて、くすぐったかった。
襲われたのに、強姦されかけたのに、なんだか俺はすごく幸せな気持ちだった。
王子は王宮に戻ると、俺の部屋ではなく、何故か王子の部屋に向かった。
途中で会った人たちが、俺達を驚いて見つめてくるので、ちょっと気まずかった。
「あの、王子……俺注目浴びてて恥ずかしいんですが」
「ひらひらメイド服だしな」
「忘れてた……」
「それにそうだな、なんと言ってもこの俺が、お前を抱いて歩いてるんだものな」
俺はかなり重い気持ちになった。
「……身分不相応でスミマセン。すぐに降ります」
「違うよ」
「え?」
言われた意味が判らずに王子を見つめると、王子は前を見ながら言った。
「王子の俺がって意味じゃなくて、我侭で自己中で他人に構わなかった俺がって事に、みんな驚いてるんだよ」
その言葉に胸が熱くなる。
「そ、それって……」
また、いつものように否定されるだろうか?
そう思いながら俺は聞いた。
「それって、俺が王子にとって特別って意味ですか?」
「……まあ、そういう事だな」
王子の答えが嬉しくて、俺は王子の首に更に強く抱きついた。
王子の部屋に戻ると、そのまま天蓋つきのベッドに寝かされた。
「あの、王子?」
王子は黙って俺の横に座る。
「何だよ」
「あの、何で俺はここに寝かされてるんでしょうか?」
「何でってお前、薬飲まされたんだろ? それどうにかしないと」
「どうにかって、解毒剤とか?」
聞くと、王子は自分の服のボタンを片手で外しながら言った。
「そんな薬あるわけないだろ? だからこの俺が直々に抱いて収めてやろうって言うんだよ」
「そ、それって……」
「黙れ」
王子は俺の唇にキスをした。
「ん……」
思ったよりもやわらかい唇に、俺の胸がドキドキと高鳴る。
意地悪な王子のやさしいキスに体が熱くなっていく。
「あのバカにいろいろ触られやがって……」
王子は俺の体に触れていく。
「あ、ちょ、や……王子……」
「なんだよ? 気持ちいいか? あいつより俺のが絶対に上手いから安心しろ!」
「そ、そうじゃなくて、あ……」
俺のモノを王子が掴んで愛撫しだす。
「ちょ、ダメですよ、王子そんないきなりエッチだなんて、そんな……」
「スピラめ、俺の召使に手を出すのは許せないが、このヒラヒラメイド服はかなり良いな。褒めてやろう」
王子人の話聞いてないし!!
「あ……」
王子が俺のモノの先端に触れる。その感覚にビクビクと俺の体が震える。
「とりあえず一回イっとこうよ。その方がラクだろ?」
言いながら王子は俺のモノを擦り続ける。
「ダメですってば、王子ぃ……」
「何、甘い声で言ってんだよ」
王子は俺の頭を撫でた。そしてまたやさしくキスをする。
そのキスが気持ち良くて。
頭を撫でる手が気持ち良くて。
俺は王子の手でイってしまった……。
快感の波が去った後で、王子にさっきから聞きたかった事を聞いた。
「あの、王子……その……王子って俺のこと好き……とか?」
「……」
何で黙ってんだよ!?
突っ込もうと思って気付いた。
王子の顔が赤い。
それで確信する。
王子は俺の事が好きなんだ。
そう思うと幸せな気持ちで、自然と言葉が出てきた。
「今日は助けて下さってありがとうございました。俺、嬉しかったです。それで、その……」
俺達は不器用に見詰め合っていた。
けれど俺は勇気を出して言う。
「俺、王子のことが好きです」
「……」
あれ、間がある?
心配になって王子の顔を覗き込もうとすると、王子に抱きしめられた。
「俺も好きだよ」
その言葉がすごく嬉しくて、俺はもう黙って目を閉じた。
もうこのままどうなっても良いと思った。
身分違いも、男同士も何もかもどうでも良い。
王子は俺のメイド服のボタンを外していく。
「もったいないなー、このままヤっちまおうかなーーー」
その言葉に辟易する。
「それじゃスピラ様と同じ趣味じゃないですか?」
「俺をあいつと一緒にすんなよ! あつは本物の変態なんだよ! 俺はお前だけだけど、あいつは好みの男なら何だって良いようなヤツなんだからな!」
その言葉で俺は今日の事を思い出す。
「王子は何でワインを飲まなかったんですか?」
「スピラがお前を狙ってるのは判ってたからな。あいつ有名なんだよ、そういう趣味だって。俺のような美形じゃなくて、小動物みたいなのが好みだって、他のヤツからの情報もあってさ。家に誘われた時から、こういう魂胆だってわかってたんだよ」
「じゃあ、もっと早く助けに来てくれたら良かったのに……」
なんとなくそう言ったが、王子の返事は予想外なものだった。
「……だって、キワドイ所で助けないと、お前、感動してくれないだろ?」
「え?」
「格好良く助けに入って、お前が恋に堕ちれば良いって思ってたからさ。だからタイミング計ってたんだよ。あんま触らせたくはなかったけど、でも俺の恋もかかってるしって……おい、何で俺をどかすんだ?」
俺は王子の体をぐいぐいと押し返していた。
「そんな策略してたなんて最低です! 俺はマジで怖かったのに!」
「だから助けてやったじゃん?」
王子は俺をまたベッドに押し倒す。
「この嘘つき!」
「嘘じゃないだろ、俺だってお前に好かれようと必死だったんだからな」
真剣な声に、俺は反論の言葉をなくす。そう言う王子が、なんだかちょっとかわいかったからだ。
半分騙されたような気がするけど、でも俺を思う気持ちがニセモノじゃないならいいかと、そう思ってしまった。
「王子はやっぱり性格悪いですね」
俺は王子の首にしがみついてそう言った。
「俺、お前もかなり性格悪いと思うんだけど?」
言われてみると確かにそうかも?
俺達はくすくすと笑った。俺達はこんな風に言い合って、愛しあう。
そういう恋愛も良いんじゃないかとそう思った……。
で、その後どうなったかと言うと、俺は王子にまたも押し倒されていた。
そしてあんな事やこーんな事をされて、ついには挿入という所までやってきた。
「う……王子……痛いんですけど……」
「あんまり痛いって言うなよ、俺がヘタみたいじゃないか?」
「え、ヘタなんじゃないんですか?」
王子は俺の頭を殴った。
「ひでー、エッチの途中で殴るなんて殴るなんて、そんなの普通じゃないと思います!」
「お前の発言の方が普通じゃないよ」
まあ確かにそうだったかもしれないと少し反省する。
「だいたい痛いのは俺のが大きすぎるせいなんだよ」
「は? 何かおっしゃいましたか?」
また王子は俺を殴った。
「いったー、また殴りましたね?」
「軽くじゃないか……」
「でも殴ったじゃないですか、これじゃゴーカンです」
「これのどこが強姦なんだよ?」
王子は俺の物をさすりながら意地悪に言う。
「ぬるぬるのべとべとじゃないか?」
「わー! 恥ずかしい事言わないで下さい!」
「事実だろ? こんなに先走りでとろとろなのにさ……」
「う……王子の意地悪……」
「意地悪だよ。それが何?」
楽しそうに目を細めて言う王子。
でもそんな顔の王子を、格好いいなんて俺は思ってしまった。
もう何でもいい。
意地悪でも、我侭でも、やらしくても、とにかく王子が大好きだ。
「もう痛くても良いです。王子が大好きですから我慢しちゃいます」
「お前マジでかわいいな」
そう言った後で、王子は俺の中に自分自身を埋めた。
エッチまで俺達は漫才みたいだった。
でも、そんなのも悪くはない。それでこそ俺達らしい。
王子のふかふかのベッドの中で、俺は今、王子に抱きしめられている。
「お前を俺専用召使にして正解だったな。今じゃ仕事どころか、心も体も俺専用だからな」
その言葉を聞きながら、俺は思ったままを口にする。
「俺専用とか王子専用とかって、シャア専用みたいですよね」
「シャアってなんだ?」
「赤い彗星を知らないんですかって、知らないか。んっと……何でもないです」
不思議そうな王子の顔を見て微笑む。
王子専用召使。
嫌だと思った事もあったけれど、今ではなれてすごく嬉しいと思っている。
今では心も体も全部、王子のもの。
そう思うのはなんだか嬉しかった。
「あ、言っておくけどな……」
王子が突然言い出すので王子を見つめた。
「お前は俺専用だけど、俺だってお前だけのものだからな」
「え?」
俺はちょっと驚いた。
「王子なのに?」
「ああ、王子でもだ。好きなヤツには独占されたいんだよ。だからお前は王子専用召使であり、王子占有召使でもあるんだ。わかるか?」
「わかんないです」
そう言ったら王子は毛布を俺の頭にかぶせて「バカ」って言った。
本当は言われた意味はわかっている。
ただ嬉しかっただけなんだ。嬉しくてちょっと泣きそう。
そう思いながら俺は王子の胸に抱きついた。
「今後も公私ともにご奉仕させて頂きます」
「お、なんかやらしー言い方」
「そう言う意味じゃないです!」
「あはは」
俺達は恋人同士になっても、ずっとこんな風なんだろうと思った。
これからもきっと、楽しい日々が続く事だろう。
俺は王子様専用召使になって良かったと、本当にそう思った……。
俺はなにか違和感を抱いていた。
なんだかやけに体が、ふわふわする物の上にある。
重い瞼を数ミリ開けると、白いものが見えた。
ああ、これはベッドだとなんとなく思う。
でも俺のベッドはもっと固くて、こんなに気持ちよくはない。
もしかすると俺は雲の上にいるのか?
いや、綿菓子かもしれない。
ああ、綿菓子なら全部食べてしまいたい……。
そう思いながら目を開けると、スピラの顔が目に入った。
「……」
えっと?
なんだっけ?
「目が覚めたんだね」
その言葉に俺の意識がはっきり戻った。
「スピラ様!」
叫んで起き上がろうとした。
けれどそんな俺を、スピラは上からベッドに押さえつける。
自分の状況を確認した。
何がどうなってるんだ?
そう思いながら、目に入った映像を結びつけて一瞬で組み立てる。
さっきの客室とは違う部屋にいる。
豪華なベッドに押さえつけられている。
俺どうなったんだ?
もしや裸ではないのかと、自分の体を見て驚いた。
「な、何でこんな格好に!?」
叫ぶとスピラが笑った。
「よく似合っているよ」
「ってメイド服じゃないですか!? しかもフリフリロリロリの! これは普通のクラシカルなメイドの服じゃ
ないですよ。これじゃアキバ専用ですよ!」
「アキバ? ああ君の国の都市だね。なんでも優秀な技術者がいるとか言う」
まあ、あながち技術者に間違いはないか……なんてのんきに考えてる場合ではない!
「あの、スピラ様、これはどういう事ですか!? ってか何で俺こんな格好で押し倒されているんでしょうか?
これじゃまるで俺の貞操の危機なんですが!」
スピラは顔を近づけながら言う。
「君は本当に面白いね。この状況が貞操の危機以外の何に見えるっていうの?」
言いながら彼は自分のシャツのボタンを外し出した。
「え、な、なんで、そんな事に……」
俺は震えながら必死で聞く。
「何でって僕はそういう趣味なの。それで君はそんな僕のすごくタイプなんだよ」
「た、タイプ?」
「ああ、小さくてかわいいじゃない? 僕そういうリスみたいな子が好きなんだ」
「俺リスじゃないんで! どっちかと言うと凶暴でかわいくないし! ってそうだ、王子はどうしたんですか!?」
「フィには君より強い薬で眠ってもらってるよ。邪魔されないようにね。君には意識を持ってもらって、一緒に楽しみたかったから弱い薬にしたんだよ。フィが寝てる間に僕たちは関係を結ぶんだ。君は僕の専用召使になればいいよ。まさか嫌なんて言わないよね? そんな事言ったら、君と僕の関係をフィに言ってしまうよ。ね、恥ずかしいでしょ? 強姦されたなんて知られるの」
俺はその言葉にガタガタと震えた。
やっと状況が理解できた。
「お願いです、やめてください。考え直して……」
言いながら逃げ出すチャンスをうかがっていた。
するとスピラが楽しそうに笑う。
「ああ、逃げられないよ。君の飲んだ薬は体の自由も奪う薬だから」
「え?」
俺は足をあげようとした。
少しは動くが、力が入らなくて持ち上げる事が出来ない。
これって絶対絶命?
「さあ、ノア君、楽しもうね」
スピラの手が俺のメイド服のスカートの中に入り込んだ。
「わーーー! いきなりなんてとこ触るんですか!?」
あらい息でスピラが言う。
「ふふ、だってたまらないだろう? 僕は男の子が好きだけどね、スカートの中に手をいれるっていうのは最高に燃えるんだよ。ああ、君の国では萌えるって言うんだっけ? 良い文化だね。ああ、君のその黒い髪もいいね。上気した頬も色っぽいよ」
「わーー、もう何も言わないで下さい! 言葉責めとかすっげー気持ち悪いし、もう触らないで、あ……!」
「ああ、なんだ気持ちいいんじゃん。感じてるよね?」
スピラは俺のモノを下着の中から探し出す。
「本当にやめて下さい! 誰か助けて!」
俺は夢中で助けを呼び出していた。
体が動かないし、出来る事は叫ぶこと位しかなかった。
「助けて、助けて、誰か!」
叫びながらフィ王子の顔を思い浮かべた。
王子、王子、助けて、俺、あんたの事が……。
「ああ、こんなに濡れてるね……君も楽しんでるんだね……」
スピラのその言葉に俺の中の何かが切れた。
そして今度こそ恥も外聞もなく泣き叫んだ。
「助けて神様、仏様! 阿弥陀様! お釈迦様! ドラえもん! 王子ーーー!」
「呼んだか?」
「え?」
ふいに聞こえた声に驚いた。
いや、スピラも驚いている。
「王子?」
そう、俺達の前に王子が立っている。
その姿にスピラが青ざめてつぶやく。
「な、何で……」
王子は余裕ある笑みを浮かべる。
「何でって、ワインを飲まなかったんだよ。毒味もしてないものを、この俺様が口にすると思うか? お前の魂胆を暴くために飲んだフリをしてたんだよ!」
そう言う王子をなんだかとっても格好良いと思ってしまった。
「それよりも、よくも俺の召使に手をだしてくれたな」
スピラは慌てて俺の上からどいて、床に立つ。
「フィ、ごめん。ちょっとした出来心なんだよ。というかこういう趣味嗜好は罪じゃないんだよ。病気なんだから仕方ないんだ。だから許してくれるだろう?」
王子の青い目が光った。
そして。
「俺の王国ではな、そういう病人は生涯入院措置なんだよ!!」
王子は右ストレートをスピラの顔面にいれた。
俺はその見事さに言葉もなかった。
床で気絶しているスピラから俺へと、王子は視線を向けた。
「お前が俺を呼んだから来てやったんだぞ」
「あ、俺、ドラえもんって呼んだから」
「違うだろ! 王子って呼んだだろ!」
俺はいつもの会話に安堵して、やっと微笑んだ。
「ありがとうございます。助かりました、王子」
「ああ」
王子は俺に近付いてきた。
そしてそのまま俺の体を抱き上げた。
「お、王子?」
「動けないんだろ? 黙ってろ」
俺は顔を伏せた。
だって王子をすっごく格好いいって思ってしまったんだ。
顔が熱くてまともに見てらんない。
「首にしがみつけよ」
黙って腕を回した。
王子のやわらかい髪が頬に触れて、くすぐったかった。
襲われたのに、強姦されかけたのに、なんだか俺はすごく幸せな気持ちだった。
王子は王宮に戻ると、俺の部屋ではなく、何故か王子の部屋に向かった。
途中で会った人たちが、俺達を驚いて見つめてくるので、ちょっと気まずかった。
「あの、王子……俺注目浴びてて恥ずかしいんですが」
「ひらひらメイド服だしな」
「忘れてた……」
「それにそうだな、なんと言ってもこの俺が、お前を抱いて歩いてるんだものな」
俺はかなり重い気持ちになった。
「……身分不相応でスミマセン。すぐに降ります」
「違うよ」
「え?」
言われた意味が判らずに王子を見つめると、王子は前を見ながら言った。
「王子の俺がって意味じゃなくて、我侭で自己中で他人に構わなかった俺がって事に、みんな驚いてるんだよ」
その言葉に胸が熱くなる。
「そ、それって……」
また、いつものように否定されるだろうか?
そう思いながら俺は聞いた。
「それって、俺が王子にとって特別って意味ですか?」
「……まあ、そういう事だな」
王子の答えが嬉しくて、俺は王子の首に更に強く抱きついた。
王子の部屋に戻ると、そのまま天蓋つきのベッドに寝かされた。
「あの、王子?」
王子は黙って俺の横に座る。
「何だよ」
「あの、何で俺はここに寝かされてるんでしょうか?」
「何でってお前、薬飲まされたんだろ? それどうにかしないと」
「どうにかって、解毒剤とか?」
聞くと、王子は自分の服のボタンを片手で外しながら言った。
「そんな薬あるわけないだろ? だからこの俺が直々に抱いて収めてやろうって言うんだよ」
「そ、それって……」
「黙れ」
王子は俺の唇にキスをした。
「ん……」
思ったよりもやわらかい唇に、俺の胸がドキドキと高鳴る。
意地悪な王子のやさしいキスに体が熱くなっていく。
「あのバカにいろいろ触られやがって……」
王子は俺の体に触れていく。
「あ、ちょ、や……王子……」
「なんだよ? 気持ちいいか? あいつより俺のが絶対に上手いから安心しろ!」
「そ、そうじゃなくて、あ……」
俺のモノを王子が掴んで愛撫しだす。
「ちょ、ダメですよ、王子そんないきなりエッチだなんて、そんな……」
「スピラめ、俺の召使に手を出すのは許せないが、このヒラヒラメイド服はかなり良いな。褒めてやろう」
王子人の話聞いてないし!!
「あ……」
王子が俺のモノの先端に触れる。その感覚にビクビクと俺の体が震える。
「とりあえず一回イっとこうよ。その方がラクだろ?」
言いながら王子は俺のモノを擦り続ける。
「ダメですってば、王子ぃ……」
「何、甘い声で言ってんだよ」
王子は俺の頭を撫でた。そしてまたやさしくキスをする。
そのキスが気持ち良くて。
頭を撫でる手が気持ち良くて。
俺は王子の手でイってしまった……。
快感の波が去った後で、王子にさっきから聞きたかった事を聞いた。
「あの、王子……その……王子って俺のこと好き……とか?」
「……」
何で黙ってんだよ!?
突っ込もうと思って気付いた。
王子の顔が赤い。
それで確信する。
王子は俺の事が好きなんだ。
そう思うと幸せな気持ちで、自然と言葉が出てきた。
「今日は助けて下さってありがとうございました。俺、嬉しかったです。それで、その……」
俺達は不器用に見詰め合っていた。
けれど俺は勇気を出して言う。
「俺、王子のことが好きです」
「……」
あれ、間がある?
心配になって王子の顔を覗き込もうとすると、王子に抱きしめられた。
「俺も好きだよ」
その言葉がすごく嬉しくて、俺はもう黙って目を閉じた。
もうこのままどうなっても良いと思った。
身分違いも、男同士も何もかもどうでも良い。
王子は俺のメイド服のボタンを外していく。
「もったいないなー、このままヤっちまおうかなーーー」
その言葉に辟易する。
「それじゃスピラ様と同じ趣味じゃないですか?」
「俺をあいつと一緒にすんなよ! あつは本物の変態なんだよ! 俺はお前だけだけど、あいつは好みの男なら何だって良いようなヤツなんだからな!」
その言葉で俺は今日の事を思い出す。
「王子は何でワインを飲まなかったんですか?」
「スピラがお前を狙ってるのは判ってたからな。あいつ有名なんだよ、そういう趣味だって。俺のような美形じゃなくて、小動物みたいなのが好みだって、他のヤツからの情報もあってさ。家に誘われた時から、こういう魂胆だってわかってたんだよ」
「じゃあ、もっと早く助けに来てくれたら良かったのに……」
なんとなくそう言ったが、王子の返事は予想外なものだった。
「……だって、キワドイ所で助けないと、お前、感動してくれないだろ?」
「え?」
「格好良く助けに入って、お前が恋に堕ちれば良いって思ってたからさ。だからタイミング計ってたんだよ。あんま触らせたくはなかったけど、でも俺の恋もかかってるしって……おい、何で俺をどかすんだ?」
俺は王子の体をぐいぐいと押し返していた。
「そんな策略してたなんて最低です! 俺はマジで怖かったのに!」
「だから助けてやったじゃん?」
王子は俺をまたベッドに押し倒す。
「この嘘つき!」
「嘘じゃないだろ、俺だってお前に好かれようと必死だったんだからな」
真剣な声に、俺は反論の言葉をなくす。そう言う王子が、なんだかちょっとかわいかったからだ。
半分騙されたような気がするけど、でも俺を思う気持ちがニセモノじゃないならいいかと、そう思ってしまった。
「王子はやっぱり性格悪いですね」
俺は王子の首にしがみついてそう言った。
「俺、お前もかなり性格悪いと思うんだけど?」
言われてみると確かにそうかも?
俺達はくすくすと笑った。俺達はこんな風に言い合って、愛しあう。
そういう恋愛も良いんじゃないかとそう思った……。
で、その後どうなったかと言うと、俺は王子にまたも押し倒されていた。
そしてあんな事やこーんな事をされて、ついには挿入という所までやってきた。
「う……王子……痛いんですけど……」
「あんまり痛いって言うなよ、俺がヘタみたいじゃないか?」
「え、ヘタなんじゃないんですか?」
王子は俺の頭を殴った。
「ひでー、エッチの途中で殴るなんて殴るなんて、そんなの普通じゃないと思います!」
「お前の発言の方が普通じゃないよ」
まあ確かにそうだったかもしれないと少し反省する。
「だいたい痛いのは俺のが大きすぎるせいなんだよ」
「は? 何かおっしゃいましたか?」
また王子は俺を殴った。
「いったー、また殴りましたね?」
「軽くじゃないか……」
「でも殴ったじゃないですか、これじゃゴーカンです」
「これのどこが強姦なんだよ?」
王子は俺の物をさすりながら意地悪に言う。
「ぬるぬるのべとべとじゃないか?」
「わー! 恥ずかしい事言わないで下さい!」
「事実だろ? こんなに先走りでとろとろなのにさ……」
「う……王子の意地悪……」
「意地悪だよ。それが何?」
楽しそうに目を細めて言う王子。
でもそんな顔の王子を、格好いいなんて俺は思ってしまった。
もう何でもいい。
意地悪でも、我侭でも、やらしくても、とにかく王子が大好きだ。
「もう痛くても良いです。王子が大好きですから我慢しちゃいます」
「お前マジでかわいいな」
そう言った後で、王子は俺の中に自分自身を埋めた。
エッチまで俺達は漫才みたいだった。
でも、そんなのも悪くはない。それでこそ俺達らしい。
王子のふかふかのベッドの中で、俺は今、王子に抱きしめられている。
「お前を俺専用召使にして正解だったな。今じゃ仕事どころか、心も体も俺専用だからな」
その言葉を聞きながら、俺は思ったままを口にする。
「俺専用とか王子専用とかって、シャア専用みたいですよね」
「シャアってなんだ?」
「赤い彗星を知らないんですかって、知らないか。んっと……何でもないです」
不思議そうな王子の顔を見て微笑む。
王子専用召使。
嫌だと思った事もあったけれど、今ではなれてすごく嬉しいと思っている。
今では心も体も全部、王子のもの。
そう思うのはなんだか嬉しかった。
「あ、言っておくけどな……」
王子が突然言い出すので王子を見つめた。
「お前は俺専用だけど、俺だってお前だけのものだからな」
「え?」
俺はちょっと驚いた。
「王子なのに?」
「ああ、王子でもだ。好きなヤツには独占されたいんだよ。だからお前は王子専用召使であり、王子占有召使でもあるんだ。わかるか?」
「わかんないです」
そう言ったら王子は毛布を俺の頭にかぶせて「バカ」って言った。
本当は言われた意味はわかっている。
ただ嬉しかっただけなんだ。嬉しくてちょっと泣きそう。
そう思いながら俺は王子の胸に抱きついた。
「今後も公私ともにご奉仕させて頂きます」
「お、なんかやらしー言い方」
「そう言う意味じゃないです!」
「あはは」
俺達は恋人同士になっても、ずっとこんな風なんだろうと思った。
これからもきっと、楽しい日々が続く事だろう。
俺は王子様専用召使になって良かったと、本当にそう思った……。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。
これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。
無自覚両片想いの勇者×親友。
読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。
悪役令息に転生した俺は推しの為に舞台から退場する
スノウマン(ユッキー)
BL
前世の記憶を思い出したアレクシスは悪役令息に転生したことに気づく。このままでは推しである義弟ノアが世界を救った後も幸せになれない未来を迎えてしまう。それを回避する為に、俺は舞台から退場することを選んだ。全てを燃やし尽くす事で。
そんな俺の行動によってノアが俺に執着することになるとも知らずに。
兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜
紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。
ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。
そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる