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第八章 アサキ、覚醒
11 おそろしく巨大な蟻地獄の巣。すり鉢状になった地面。
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おそろしく巨大な蟻地獄の巣。
すり鉢状になった地面。
その斜面の途中に、アサキとカズミの身体が、半ば埋まった状態になっている。
ぜいはあ、苦しそうな表情で、肩を大きく上下させている二人。
二人だけではない。
少し離れたところに、治奈、成葉、応芽、正香の四人が、やはり同じように埋まっている。
上空には黒い雲と、
再び浮上した、ザーヴェラーの巨体。
「み、みんな、だ、大丈夫かあ……」
カズミが、埋まっている地面から、なんとか自身の上半身を起こした。
「生きてるよーっ」
顔が完全に埋まっていた成葉、すぽんっと頭を地面から引き抜くと、ぶるぶるぶるっと左右に激しく振った。
「無事です」
「死ぬかと思ったけえね」
正香、そして治奈が、めり込んだ地面から上半身を起こした。
「ったくどいつもこいつも、バカな真似をしやがってよ」
激痛をこらえながら、言葉を吐き出すカズミ。
その顔には微笑が浮かんでいる。
寸前、彼女たちになにがあったのか、説明しよう。
ザーヴェラーの、自らの巨体をただ落下させるという、シンプルかつ破滅的なこの攻撃に、アサキは逃げなかった。
足の大怪我で逃げられないカズミを守ろうと、いちかばちかの魔法障壁を張ったのだ。
それ自体、桁外れに巨大な魔法陣であったが、さらに治奈たちも強力して、各々魔法障壁を張って、巨体落下の衝撃を受け止めたのである。
それでもこの破壊力だ。
一人分でも障壁が欠けていたならば、誰かが、または全員が、生命を落としていたかも知れない。
「あのザーヴェラー、最初の方でも急降下を仕掛けてきよったけど……」
治奈が、ぶるぶると身体を震わせながら、なんとか立ち上がった。
「その時のそれは単に『なりたて』で未熟だったというだけかも知れん。ほじゃけど、今の攻撃はきっと意図的じゃろな。うちらを倒せる、と踏んでおるんじゃ」
額の汗を袖で拭いながら、苦々しげな表情で空を見上げる。
「つまりは、すぐにまたくる、ということです。少しだけ様子を見てから、次は完全に仕留めにくるでしょうね」
正香が補足する。
「去年の時のよりずーっと強いのに、こっちはこっちで人数が半分だしさあ。……未熟なザーヴェラーだから倒せるとかあ、いってたの誰だあ! ナルハもう動けないよー。……あーあ、先輩たちがいればなあ」
「おらん人のこといっても仕方ないじゃろ!」
心に余裕がなくなっているためだろうか、いつも飄々としている治奈が珍しく声を荒らげた。
それで逆に落ち着いた、というわけではないだろうが、とにかく反対に余裕の笑みを浮かべたのは、応芽である。
「はん。その先輩たちとやらを合わせた以上のスペシャルが、ここにおるやろ」
親指で自分の顔を差しながら、ふふん、と済まし顔で鼻を鳴らした。
「はあ?」
まだ下半身を地面に埋もれさせたままのカズミ、顔に縦線がびっしりだ。
応芽はすぐ真顔になると、ゆっくりと、はっきりと、口を開いた。
「頼みがあるんやけど」
仲間たちの顔を見回し、ひと呼吸置くと言葉を続けた。
「みんなの、残りの魔力を、すべてあたしに預けてくれへんか?」
すり鉢状になった地面。
その斜面の途中に、アサキとカズミの身体が、半ば埋まった状態になっている。
ぜいはあ、苦しそうな表情で、肩を大きく上下させている二人。
二人だけではない。
少し離れたところに、治奈、成葉、応芽、正香の四人が、やはり同じように埋まっている。
上空には黒い雲と、
再び浮上した、ザーヴェラーの巨体。
「み、みんな、だ、大丈夫かあ……」
カズミが、埋まっている地面から、なんとか自身の上半身を起こした。
「生きてるよーっ」
顔が完全に埋まっていた成葉、すぽんっと頭を地面から引き抜くと、ぶるぶるぶるっと左右に激しく振った。
「無事です」
「死ぬかと思ったけえね」
正香、そして治奈が、めり込んだ地面から上半身を起こした。
「ったくどいつもこいつも、バカな真似をしやがってよ」
激痛をこらえながら、言葉を吐き出すカズミ。
その顔には微笑が浮かんでいる。
寸前、彼女たちになにがあったのか、説明しよう。
ザーヴェラーの、自らの巨体をただ落下させるという、シンプルかつ破滅的なこの攻撃に、アサキは逃げなかった。
足の大怪我で逃げられないカズミを守ろうと、いちかばちかの魔法障壁を張ったのだ。
それ自体、桁外れに巨大な魔法陣であったが、さらに治奈たちも強力して、各々魔法障壁を張って、巨体落下の衝撃を受け止めたのである。
それでもこの破壊力だ。
一人分でも障壁が欠けていたならば、誰かが、または全員が、生命を落としていたかも知れない。
「あのザーヴェラー、最初の方でも急降下を仕掛けてきよったけど……」
治奈が、ぶるぶると身体を震わせながら、なんとか立ち上がった。
「その時のそれは単に『なりたて』で未熟だったというだけかも知れん。ほじゃけど、今の攻撃はきっと意図的じゃろな。うちらを倒せる、と踏んでおるんじゃ」
額の汗を袖で拭いながら、苦々しげな表情で空を見上げる。
「つまりは、すぐにまたくる、ということです。少しだけ様子を見てから、次は完全に仕留めにくるでしょうね」
正香が補足する。
「去年の時のよりずーっと強いのに、こっちはこっちで人数が半分だしさあ。……未熟なザーヴェラーだから倒せるとかあ、いってたの誰だあ! ナルハもう動けないよー。……あーあ、先輩たちがいればなあ」
「おらん人のこといっても仕方ないじゃろ!」
心に余裕がなくなっているためだろうか、いつも飄々としている治奈が珍しく声を荒らげた。
それで逆に落ち着いた、というわけではないだろうが、とにかく反対に余裕の笑みを浮かべたのは、応芽である。
「はん。その先輩たちとやらを合わせた以上のスペシャルが、ここにおるやろ」
親指で自分の顔を差しながら、ふふん、と済まし顔で鼻を鳴らした。
「はあ?」
まだ下半身を地面に埋もれさせたままのカズミ、顔に縦線がびっしりだ。
応芽はすぐ真顔になると、ゆっくりと、はっきりと、口を開いた。
「頼みがあるんやけど」
仲間たちの顔を見回し、ひと呼吸置くと言葉を続けた。
「みんなの、残りの魔力を、すべてあたしに預けてくれへんか?」
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