魔法使い×あさき☆彡

かつたけい

文字の大きさ
224 / 395
第十八章 明木史奈救出作戦

04 「ちょっと慌てないでよ昭刃さん」「まあだああ、なあ

しおりを挟む
「ちょっと慌てないでよ昭刃さん」
「まあだああ、なあんかあるんですかああああああ?」

 燃える決意にまた水を差されて、カズミは、ぷつっと血管切れそうな顔になった。

「建物の情報を調べて教えるだけなら、離れていても出来たことだわ。何故わざわざ、ここへきてもらったと思う?」
「何故です? つうかもったいぶらないでよ先生、こっち焦ってんだからさあ」
「あ、もしかしたら……クラフト、ですか?」

 アサキの言葉に、先生は眼鏡の奥でにこり目を細めた。

「そりゃそうよ。さっき魔法使いマギマイスターとの戦いも想定した話をしたわけだけど、どうやって戦うつもりでいたの?」

 須黒先生は、椅子に座ったまま腰を屈めて、足元のバッグに手を入れた。

 取り出したのは、三つのリストフォン。
 銀と赤、
 銀と紫、
 銀と青。
 通信が距離され、変身や魔法力調整など、機能が一切働かなくなってしまったので、先生に預け、調査をお願いしていたものだ。
 それが、戻ってきたのである。

「機能、回復したんじゃろか?」

 治奈の問いに、須黒先生はにこりと、でも少し寂しげに、頷いた。

ぐち校長も、天国から一緒に戦ってくれているからね。……残しておいてくれた資料を見て、バックアップ回線で魔道着をダウンロードして、わたしと校長しか知らないサーバーに格納したのよ」
「つまり……」

 カズミの喉が、ごくりと鳴った。

組織ギルドの回線を通さず、変身が出来るようになる」
「待ってましたあ!」

 指をパチンと鳴らした。

「いや、確かにね、どうしようかなとは思っていたんですよ。魔法使いと戦うことになったら、生身で渡り合えるのなんて、変態のアサキしかいねえから。これで、こいつの足手まといにならずに済みそうだよ」

 カズミは嬉しそうに、赤毛の少女、アサキの肩を叩いた。

「わたしも、みんなが変身出来るのなら心強いよ。一人で戦うなんて怖いし」
「はあ? 無敵の魔法使いがなにいってやがんだよ」

 心底ほっとしているアサキの顔、その鼻を、カズミはぎゅうっと摘んだ。

「いたたっ。それいうのやめてよ、カズミちゃん。……弱いよ、わたしは」

 鼻摘まれて鼻声なのがなんであるが、でも、心から、そう思う。
 自分は、弱い。
 だからこそ、強くありたいと常に願っているだけだ。

「でも、これまで通りに変身出来るんですか?」

 アサキが、カズミの指を摘んでどかしながら、須黒先生へと尋ねる。

「変身は、問題ないはずよ。だけど着ていない時の、サーバー内でのダメージ修復は、これまでの何倍かの時間が掛かるみたい。だから、出来るだけ戦いにはならないように。もしもそうなった時も、あまり無茶な戦い方はしないでね」
「分かりました」

 もともと、分かっている。
 今回に限らない。
 戦いなんて、ないに越したことはないのだ。

 同じ人間同士。
 本当なら、ヴァイスタの脅威に対し、助け合わなければいけないのだから。

「さっきの回線の件といい、この件といい、樋口校長は、こうした事態を予想していたんでしょうか」
「そうね。だからこそだれの暴走に不意を突かれた格好になり、準備を焦ってしまい、殺された。……もしも今回の件を解決しそこなったら、わたしたちもきっと同じ運命を辿るんでしょうね」

 リヒトに逆らう者への、見せしめのために。

 アサキだけは、別であろうが。
 オルトヴァイスタの実験のため、ずっと巨大水槽の中で、無数のパイプを繋がれて、そんな生活を送ることになるのだろう。
 肉体はそのままで、意思を完全に消されるかも知れない。
 リヒト所長からしたら、自分に歯向かう存在だからだ。

「辿らねえよ、そんな運命。こっちには大魔法使いアサキがいるし、あたしらもこうして変身出来るようになったんだし。なにがあろうと絶対に負けねえんだ! そんじゃ、クラフト受け取ったし、二人とも行くぞお!」
「ちょっと待って。慌てないでっていってるでしょ。もう一つ、大切なお話があるのよ」
「はあ……なんすか、もお……」

 込める気合をいちいち削がれて、カズミは肩を落とし、げんなり顔である。

「でもそれは外。行きましょう、みんな」

 須黒先生はそういうと玄関で靴を履いて、通路へ出た。

「外になにがあんだあ? 秘密武器かあ? 変形する大型バイクとか」
「とにかく行ってみようよ、カズミちゃん」

 三人の少女たちも、上着を着て、靴を履いて、通路へ出る。
 先生の後をぞろぞろ続いて、通路、階段、エントランス、外。

「お前ら!」

 まず飛び出したのは、カズミのびっくりした大声であった。

 そう、彼女らのよく知る人物が二人、エントランス前に立っていたのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...