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第十八章 明木史奈救出作戦
04 「ちょっと慌てないでよ昭刃さん」「まあだああ、なあ
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「ちょっと慌てないでよ昭刃さん」
「まあだああ、なあんかあるんですかああああああ?」
燃える決意にまた水を差されて、カズミは、ぷつっと血管切れそうな顔になった。
「建物の情報を調べて教えるだけなら、離れていても出来たことだわ。何故わざわざ、ここへきてもらったと思う?」
「何故です? つうかもったいぶらないでよ先生、こっち焦ってんだからさあ」
「あ、もしかしたら……クラフト、ですか?」
アサキの言葉に、先生は眼鏡の奥でにこり目を細めた。
「そりゃそうよ。さっき魔法使いとの戦いも想定した話をしたわけだけど、どうやって戦うつもりでいたの?」
須黒先生は、椅子に座ったまま腰を屈めて、足元のバッグに手を入れた。
取り出したのは、三つのリストフォン。
銀と赤、
銀と紫、
銀と青。
通信が距離され、変身や魔法力調整など、機能が一切働かなくなってしまったので、先生に預け、調査をお願いしていたものだ。
それが、戻ってきたのである。
「機能、回復したんじゃろか?」
治奈の問いに、須黒先生はにこりと、でも少し寂しげに、頷いた。
「樋口校長も、天国から一緒に戦ってくれているからね。……残しておいてくれた資料を見て、バックアップ回線で魔道着をダウンロードして、わたしと校長しか知らないサーバーに格納したのよ」
「つまり……」
カズミの喉が、ごくりと鳴った。
「組織の回線を通さず、変身が出来るようになる」
「待ってましたあ!」
指をパチンと鳴らした。
「いや、確かにね、どうしようかなとは思っていたんですよ。魔法使いと戦うことになったら、生身で渡り合えるのなんて、変態のアサキしかいねえから。これで、こいつの足手まといにならずに済みそうだよ」
カズミは嬉しそうに、赤毛の少女、アサキの肩を叩いた。
「わたしも、みんなが変身出来るのなら心強いよ。一人で戦うなんて怖いし」
「はあ? 無敵の魔法使いがなにいってやがんだよ」
心底ほっとしているアサキの顔、その鼻を、カズミはぎゅうっと摘んだ。
「いたたっ。それいうのやめてよ、カズミちゃん。……弱いよ、わたしは」
鼻摘まれて鼻声なのがなんであるが、でも、心から、そう思う。
自分は、弱い。
だからこそ、強くありたいと常に願っているだけだ。
「でも、これまで通りに変身出来るんですか?」
アサキが、カズミの指を摘んでどかしながら、須黒先生へと尋ねる。
「変身は、問題ないはずよ。だけど着ていない時の、サーバー内でのダメージ修復は、これまでの何倍かの時間が掛かるみたい。だから、出来るだけ戦いにはならないように。もしもそうなった時も、あまり無茶な戦い方はしないでね」
「分かりました」
もともと、分かっている。
今回に限らない。
戦いなんて、ないに越したことはないのだ。
同じ人間同士。
本当なら、ヴァイスタの脅威に対し、助け合わなければいけないのだから。
「さっきの回線の件といい、この件といい、樋口校長は、こうした事態を予想していたんでしょうか」
「そうね。だからこそ至垂の暴走に不意を突かれた格好になり、準備を焦ってしまい、殺された。……もしも今回の件を解決しそこなったら、わたしたちもきっと同じ運命を辿るんでしょうね」
リヒトに逆らう者への、見せしめのために。
アサキだけは、別であろうが。
超ヴァイスタの実験のため、ずっと巨大水槽の中で、無数のパイプを繋がれて、そんな生活を送ることになるのだろう。
肉体はそのままで、意思を完全に消されるかも知れない。
リヒト所長からしたら、自分に歯向かう存在だからだ。
「辿らねえよ、そんな運命。こっちには大魔法使いアサキがいるし、あたしらもこうして変身出来るようになったんだし。なにがあろうと絶対に負けねえんだ! そんじゃ、クラフト受け取ったし、二人とも行くぞお!」
「ちょっと待って。慌てないでっていってるでしょ。もう一つ、大切なお話があるのよ」
「はあ……なんすか、もお……」
込める気合をいちいち削がれて、カズミは肩を落とし、げんなり顔である。
「でもそれは外。行きましょう、みんな」
須黒先生はそういうと玄関で靴を履いて、通路へ出た。
「外になにがあんだあ? 秘密武器かあ? 変形する大型バイクとか」
「とにかく行ってみようよ、カズミちゃん」
三人の少女たちも、上着を着て、靴を履いて、通路へ出る。
先生の後をぞろぞろ続いて、通路、階段、エントランス、外。
「お前ら!」
まず飛び出したのは、カズミのびっくりした大声であった。
そう、彼女らのよく知る人物が二人、エントランス前に立っていたのである。
「まあだああ、なあんかあるんですかああああああ?」
燃える決意にまた水を差されて、カズミは、ぷつっと血管切れそうな顔になった。
「建物の情報を調べて教えるだけなら、離れていても出来たことだわ。何故わざわざ、ここへきてもらったと思う?」
「何故です? つうかもったいぶらないでよ先生、こっち焦ってんだからさあ」
「あ、もしかしたら……クラフト、ですか?」
アサキの言葉に、先生は眼鏡の奥でにこり目を細めた。
「そりゃそうよ。さっき魔法使いとの戦いも想定した話をしたわけだけど、どうやって戦うつもりでいたの?」
須黒先生は、椅子に座ったまま腰を屈めて、足元のバッグに手を入れた。
取り出したのは、三つのリストフォン。
銀と赤、
銀と紫、
銀と青。
通信が距離され、変身や魔法力調整など、機能が一切働かなくなってしまったので、先生に預け、調査をお願いしていたものだ。
それが、戻ってきたのである。
「機能、回復したんじゃろか?」
治奈の問いに、須黒先生はにこりと、でも少し寂しげに、頷いた。
「樋口校長も、天国から一緒に戦ってくれているからね。……残しておいてくれた資料を見て、バックアップ回線で魔道着をダウンロードして、わたしと校長しか知らないサーバーに格納したのよ」
「つまり……」
カズミの喉が、ごくりと鳴った。
「組織の回線を通さず、変身が出来るようになる」
「待ってましたあ!」
指をパチンと鳴らした。
「いや、確かにね、どうしようかなとは思っていたんですよ。魔法使いと戦うことになったら、生身で渡り合えるのなんて、変態のアサキしかいねえから。これで、こいつの足手まといにならずに済みそうだよ」
カズミは嬉しそうに、赤毛の少女、アサキの肩を叩いた。
「わたしも、みんなが変身出来るのなら心強いよ。一人で戦うなんて怖いし」
「はあ? 無敵の魔法使いがなにいってやがんだよ」
心底ほっとしているアサキの顔、その鼻を、カズミはぎゅうっと摘んだ。
「いたたっ。それいうのやめてよ、カズミちゃん。……弱いよ、わたしは」
鼻摘まれて鼻声なのがなんであるが、でも、心から、そう思う。
自分は、弱い。
だからこそ、強くありたいと常に願っているだけだ。
「でも、これまで通りに変身出来るんですか?」
アサキが、カズミの指を摘んでどかしながら、須黒先生へと尋ねる。
「変身は、問題ないはずよ。だけど着ていない時の、サーバー内でのダメージ修復は、これまでの何倍かの時間が掛かるみたい。だから、出来るだけ戦いにはならないように。もしもそうなった時も、あまり無茶な戦い方はしないでね」
「分かりました」
もともと、分かっている。
今回に限らない。
戦いなんて、ないに越したことはないのだ。
同じ人間同士。
本当なら、ヴァイスタの脅威に対し、助け合わなければいけないのだから。
「さっきの回線の件といい、この件といい、樋口校長は、こうした事態を予想していたんでしょうか」
「そうね。だからこそ至垂の暴走に不意を突かれた格好になり、準備を焦ってしまい、殺された。……もしも今回の件を解決しそこなったら、わたしたちもきっと同じ運命を辿るんでしょうね」
リヒトに逆らう者への、見せしめのために。
アサキだけは、別であろうが。
超ヴァイスタの実験のため、ずっと巨大水槽の中で、無数のパイプを繋がれて、そんな生活を送ることになるのだろう。
肉体はそのままで、意思を完全に消されるかも知れない。
リヒト所長からしたら、自分に歯向かう存在だからだ。
「辿らねえよ、そんな運命。こっちには大魔法使いアサキがいるし、あたしらもこうして変身出来るようになったんだし。なにがあろうと絶対に負けねえんだ! そんじゃ、クラフト受け取ったし、二人とも行くぞお!」
「ちょっと待って。慌てないでっていってるでしょ。もう一つ、大切なお話があるのよ」
「はあ……なんすか、もお……」
込める気合をいちいち削がれて、カズミは肩を落とし、げんなり顔である。
「でもそれは外。行きましょう、みんな」
須黒先生はそういうと玄関で靴を履いて、通路へ出た。
「外になにがあんだあ? 秘密武器かあ? 変形する大型バイクとか」
「とにかく行ってみようよ、カズミちゃん」
三人の少女たちも、上着を着て、靴を履いて、通路へ出る。
先生の後をぞろぞろ続いて、通路、階段、エントランス、外。
「お前ら!」
まず飛び出したのは、カズミのびっくりした大声であった。
そう、彼女らのよく知る人物が二人、エントランス前に立っていたのである。
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