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第二十五章 終わりの、終わり
09 それは、幻であったか。闇に浮かぶは、少女であった。
しおりを挟むそれは、幻であったか。
闇に浮かぶは、少女であった。
赤と黒の、西洋甲冑に似た魔道着を着た。髪を横に流しておでこを出した、ちょっと気が強そうではあるがかわいらしい顔の少女であった。
微笑んでいる。
邪気の、まるでない。
この渦巻いた瘴気の中において、天使のような笑みであった。
ウメ……ちゃん?
自分の魂が溶けていく中で、アサキは問う。
少女、慶賀応芽は、小さく頷いた。
かわいらしく苦笑すると、また口を開いた。
困ったあかんたれやなあ、令堂は。
せっかく必死に守ってきた、この世界やろ?
あたしたちや、自分が守ってきた、この世界は嘘か?
自分のおとんおかんがおった、この世界は、嘘か?
あたしが、雲音のために頑張ってきたこと、無茶を心配してくれた令堂の気持ち、優しさ、みんな無駄だった?
あたしの、令堂への感謝の気持ちも。
無駄やったんかな?
ウメちゃん……
わたしは……
アサキは、手を伸ばした。
暗闇の中、ぼろぼろに崩れた魂の中で。
自分へと微笑む、気の強そうな、ちょっと口の悪い、でも優しい、かわいらしい、天使へと。
笑みを苦笑に変化させつつ、天使も、手を伸ばした。
二人の手が、がっしりと結ばれていた。
静かに、溶けていった。
ぼろぼろになった魂が、溶けて、消えた。
闇の中へと。
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