転生勇者観察日記~不器用最強勇者を飼うことになりました~

常に眠い猫

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第1章「最強勇者観察日記1冊目」

観察日記4「自称"マッドサイエンティスト"が家にやってきまして」初挿絵(下手くそ)有り

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 20XX年某月某日

 今日、おじさんがメガネをかけた研究者と名乗る女の人を連れてきた。
 連れてきた?
 、、、、つ、連れてきた。


######################

 冬の季節が少しずつ通り過ぎていき、木々に少しずつ葉がつき始めた頃。
 その訪問者は突然現れた。

「おーっはよーう!おっじゃましまーす!!」

「うおえ!?」
 朝の5時半。
 冬の冷気が体を指すようなそんな寒さの中、それをものともしない陽気な声が突如響き渡り、クルミは飛び起きた。
「クルミ!何事か!」
 同時に驚くほどのスピードで部屋に入ってくるアカメに、クルミは目を丸くした。その速さ、声が聞こえたかと思った瞬間だったからだ。
 しかし寝ているところをたたき起こされて、まだはっきりしない頭では何が何だかわかっていない。
 今何か聞こえたような?
「貴様!何者だ!」
 混乱する頭で首をひねっていたクルミの耳に、今度はアカメの怒鳴り声が入り込む。
 なんだろう、ものすごく頭が痛いんでやめてほしい。
 そんな場違いなことを考えながら、目の前に立って、何者かからかばうような形をとっているアカメの後ろから、クルミは顔をのぞかせる。
「何者って、そっちが呼んだんじゃないのよ~」
 そこにいたのは明るい髪を腰まで伸ばして、間延びした感じにそういう、白衣メガネの美人がいた。
 メガネをかけていても美人なのだから、きっと外したらとんでもない化け物になるのではなかろうか。
 そんな女性が今そこで何やらアカメとはなしている。
 イケメンと美女、、、、、、ご褒美だろうか。
「私が?私はお前を知らない。……クルミ、クルミは知っているか?」
 そう聞きながらアカメに肩越しに見られて、もう一度その美女を見る。
 絶世の美女が目の前に悠然と立っていて。
 こんな美女見たのは初めてだ。ここまでの美人なら、一度見たら忘れないだろう。ええ絶対に。
 ということでクルミは知らないと首を振ることにした。
「うそぉー?ここであってるはずだし、私が間違うはずないんだけどなぁ」
 クルミの反応を見て頭を抱えてる様子でさえ、美しく見えてしまうのは末期だろうか。
 他者から見れば頭を抱えて大げさにのけぞっている変な人でしかないのに。
 なんにせよ、本当に知らないどころか、他人がここにいる事実に少し驚いて、クルミはアカメを仰ぎ見た。
「アカメ、この人だれ?」
 あれ、なんかあたしの声今かすれた?
「私も知らない。人違いか、場所を間違えたのか。とにかくさっさと追い出してく」


「ちょっとまって」


 疲れたようにそう言って向き合った瞬間、それを遮るように彼女はいって、アカメを指をさした。
「いま、あなたアカメって呼ばれてた?」
 その様子はさっきとは打って変わって真剣そのもの。
 まるで、できる女像を目の前にしているようだ。
「そうだが。なぜだ?」
 アカメがそう答えると、
「……ふふ」
 女性は少しばかりうつむき。
「ん?」
 そして
「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
 そうしてうつむいたまま、不気味に笑い始めた。
「お、おいなんだ」
 突然の変貌ぶりにさすがのアカメもうろたえて、一歩後ずさる。
「やっぱり間違ってなかったわ!」
 しかし、そんなアカメなど眼中に入っていない様子の女は、そう言って両手を広げ謎の歓喜の声をあげた。
「え?」
 突然大声を出されて驚いたくるみは、そんな声を出すことしかできない。
 先程からなぜか、目の前がぐるぐるしている気がする。
「大丈夫よ。私は怪しいものじゃないわ」
 先程の歓喜の雄叫びから一転、まるでそんなものなかったかのように女はいう。
「今この時。お前が怪しくなかったらなんだというんだ」
 間髪入れずに珍しく突っ込むアカメだが、女は全く気にした様子はない。
「私はここに来るように言われてきたんだもの」
 きにするどころか、得意げにフンと鼻息荒くそう言い切った。
「だから誰もお前など」
 そういて臨戦体制に入ろうとしたアカメを止めるように、女はその言葉を遮り。
「坏邑社長にね」
 これまた得意げにふふんと鼻を鳴らす。
「おじさんに?」
 意外な名前がその口から飛び出て、クルミはつい聞き返してしまう。
「ええ、間違いないわ!」
 そう言って大げさに懐に手を入れると、ニヤリとどこかのマッドサイエンスよろしく笑みを浮かべて、その手を引いた。
「っ!」
 奇妙な行動にアカメが思わず身構え、くるみはぼんやりとその様子を見ている。
「ふふふふ。私がここに来た理由は」
 懐から手を引き、その内ポケットに入っていた"それ"を、とりだす。
「これを渡すためよ!」
 そう言って掲げたのは、シルバーの細い鎖に、鳥の羽をかたどったような飾りのついた、洒落たネックレスだった。






続く
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