13 / 63
第二話 『世界よ変われ』
1-3 オタトーク
しおりを挟む
「昨日さ、マジョレンの話してたらこっち見てたじゃん。もしかしてと思ったんだよね」
急に高くなったテンションに着いていけなくて、そっか、と受け流す。マジョレンなんて言葉は聞いたことがないけれど、『魔女の練習曲』を省略したものなのだろう。
「北沢さんってアニメ結構観るの?」
「え、いや、あんまり。その……マジョレン? も、テレビつけたらたまたまやってて、なんとなく観たっていうか……」
「そうなんだ。何話ぐらい観たの?」
「えっと、四回ぐらい、かな。憶えてるのは、骸骨が主人公の子に呪いの話をする、とか」
「ホラー回!」
突然、南川くんの友達が大声を出した。ひょろりと細長い体格の彼は、確か、赤坂くん。その彼に、もう一人の友達である久米くんが「おまえテンション上がりすぎ」とチョップして、三人は同時に笑い声をあげた。
なんだか、三人の中で出来上がっている空気に溶け込んでいける気がしない。
「あの、骸骨。いいキャラだと思うよ」
なんとか話題を繋げるために、こっちから話を振ってみる。
「ああ、スタッカートね。おれもあいつ好き」
「マスコットキャラかと思ってたけど、戦ったら強かったよね、確か」
「そうそう! あいつ破壊魔法使えるからなあ」
久米くんが楽しそうに語りだす。ハカイマホウとやらは良く分からないけれど、自分との会話で盛り上がっている相手を見るのは、純粋に嬉しい。
「一期のは観てないの?」
裏返ったような声で、赤坂くんが久米くんの声を遮った。
「いっき?」
「えっと、ピアニシモが二期。無印が一期」
「あんまり覚えてないけど、私が観たのはピアニシモだったと思う」
「そっかー」
大きな声で短く発せられる声。ずっと声裏返ってるし、赤坂くんは喋るの苦手なのかな。
「二期は二期で面白いんだけどさ、ほとんどバトルものになっちゃってるから――ホラー回が好きなら一期の方が合ってるかもね」
別に、そのホラー回が好きだなんて一言も言ってないんだけどな。内心で苦笑しながら頷いていると、南川くんが急に落ち着きを取り戻して、さっき初めに声をかけてきたときのような顔になる。
「よかったらさ、ディスク持ってるから、貸すよ。きっと面白いから」
「でも、悪いよ」
「大丈夫。むしろ、見てみて欲しいし」
やんわりと拒否したことに気づいていないのか、南川くんは意外と押しが強い。貸してもらってまでアニメを観るのは面倒くさいなと思ってしまう自分がいるにはいるのだけれど、わざわざ断るのも悪いし、何よりも、誰かと共通の話題を持つことができるという予感は私に大きな期待を抱かせた。
「明日、一巻持ってくるよ。もし合わなかったら――そうだな、三話まで観て面白くなかったら、遠慮なく言って」
「うん、分かった。ありがとう」
会話の流れとして、自然と言うよりもいっそ予定調和的な返事を返すと、南川くんたちがおお、と歓声をあげた。
急に高くなったテンションに着いていけなくて、そっか、と受け流す。マジョレンなんて言葉は聞いたことがないけれど、『魔女の練習曲』を省略したものなのだろう。
「北沢さんってアニメ結構観るの?」
「え、いや、あんまり。その……マジョレン? も、テレビつけたらたまたまやってて、なんとなく観たっていうか……」
「そうなんだ。何話ぐらい観たの?」
「えっと、四回ぐらい、かな。憶えてるのは、骸骨が主人公の子に呪いの話をする、とか」
「ホラー回!」
突然、南川くんの友達が大声を出した。ひょろりと細長い体格の彼は、確か、赤坂くん。その彼に、もう一人の友達である久米くんが「おまえテンション上がりすぎ」とチョップして、三人は同時に笑い声をあげた。
なんだか、三人の中で出来上がっている空気に溶け込んでいける気がしない。
「あの、骸骨。いいキャラだと思うよ」
なんとか話題を繋げるために、こっちから話を振ってみる。
「ああ、スタッカートね。おれもあいつ好き」
「マスコットキャラかと思ってたけど、戦ったら強かったよね、確か」
「そうそう! あいつ破壊魔法使えるからなあ」
久米くんが楽しそうに語りだす。ハカイマホウとやらは良く分からないけれど、自分との会話で盛り上がっている相手を見るのは、純粋に嬉しい。
「一期のは観てないの?」
裏返ったような声で、赤坂くんが久米くんの声を遮った。
「いっき?」
「えっと、ピアニシモが二期。無印が一期」
「あんまり覚えてないけど、私が観たのはピアニシモだったと思う」
「そっかー」
大きな声で短く発せられる声。ずっと声裏返ってるし、赤坂くんは喋るの苦手なのかな。
「二期は二期で面白いんだけどさ、ほとんどバトルものになっちゃってるから――ホラー回が好きなら一期の方が合ってるかもね」
別に、そのホラー回が好きだなんて一言も言ってないんだけどな。内心で苦笑しながら頷いていると、南川くんが急に落ち着きを取り戻して、さっき初めに声をかけてきたときのような顔になる。
「よかったらさ、ディスク持ってるから、貸すよ。きっと面白いから」
「でも、悪いよ」
「大丈夫。むしろ、見てみて欲しいし」
やんわりと拒否したことに気づいていないのか、南川くんは意外と押しが強い。貸してもらってまでアニメを観るのは面倒くさいなと思ってしまう自分がいるにはいるのだけれど、わざわざ断るのも悪いし、何よりも、誰かと共通の話題を持つことができるという予感は私に大きな期待を抱かせた。
「明日、一巻持ってくるよ。もし合わなかったら――そうだな、三話まで観て面白くなかったら、遠慮なく言って」
「うん、分かった。ありがとう」
会話の流れとして、自然と言うよりもいっそ予定調和的な返事を返すと、南川くんたちがおお、と歓声をあげた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる