犬と歩けば!

もり ひろし

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第03章 ヒロちゃん

07話 譲渡会、ヒロちゃん散歩会の正式メンバーとなる

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 譲渡会の当日がやってきた。ヒロちゃんは、母親と、さとしと、寺本を連れて、隣町の催事場に向かった。催事場に着くと早速ヒロちゃんは母親を連れて、気になっていたポメラニアンがいる犬のブースを訪れた。ブースは黒山の人だかりだ。ペット産業の人気はこんな底辺にまで徹底している。果たしてヒロちゃんは、無事、里親になれるのだろうか。
 ヒロちゃんは係の人に飼育希望ですと告げると、そのポメラニアンをケージから出して抱かせてもらった。どうやら人を恐れているようなしぐさをする。係の人に聞くと募集要項にあったように臆病だということだ。ブリーダーに飼育放棄されたらしい。
 ブリーダーを名乗ることはたやすい。本来は相当な知識と労力を必要とする職なのだが、安易に儲けだけを目当てにして始める素人もいるという。彼らはこの仕事が予想以上に経費がかさむことを知り、仕方ないから飼育放棄したというケースが後を絶たない。
 ヒロちゃんはそのポメラニアンがこれまでは狭いケージに入れられ、あらんかぎりに繁殖に利用されたと聞いた。なんてひどいことを。こんなことをされたら人間不信にもなるのも仕方のないことだ。そんな犬の過去もヒロちゃんは受け入れなければならない。ヒロちゃんはこの犬の未来を幸せなものにすることを心に誓った。
 ヒロちゃんは里親になる条件はクリアしている。あとは縁があるかどうかと言ったところだろう。飼育希望の用紙にヒロちゃんは母親の助けを借りて必要事項を記入した。あとは後日面談で譲渡が決まる。ヒロちゃんの母さんは、ニュースで保護犬の実情を聞いていたが、こんなにひどいとは思ってもみなかった。

 さとしと寺本は、ほかのブースをまわっていた。そして係の人に説明を受けるといろいろな子がいるのに改めて気づかされた。障害、病気を持つ子、老齢の子、その他、若くて健康でも、様々な理由で手放された犬が集まっていた。人のエゴの支配下にある、犬の世界の縮図が、ここに垣間見えてくる。さとしと寺本は心を痛めた。この中から一匹でも不幸な子を救ってあげたいが、現実にはそう簡単ではない。
 さとしもユキを迎えるにあたって、何度も自分が犬を飼う資格があるかを考えたものだ。実際迎え入れた後が大変なのは実感としてある。好きでなければそうたやすく受け入れられるものではないことを知っていた。
 寺本はロロと同じ年頃のマルチーズの保護犬の前でたたずんだ。この子とロロの間に何か違うものがあるのかと自問自答した。運命と言ってしまうのはたやすいが、それははばかられた。



 さてヒロちゃんと母親の面談だが、いたって簡単に済まされた条件はぴったりだしヒロちゃんの決意とその母親のサポートの決意を考えてこれ以上にない組み合わせだったので譲渡はすぐに決まった。

 あんなに犬を怖がっていたヒロちゃんに何と愛犬だなんてと、さとしと寺本は信じられない様子だったが、たえ子ちゃんの協力の元、ヒロちゃんは一丁前の愛犬家として散歩会の正式メンバーとなった。そう、今までは仮のメンバーとして扱われていたのだった。

 
                                   つづく
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