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第03章 ヒロちゃん
06話 さようならスキャンダル
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明くる日の朝の散歩会に、ヒロちゃんは出て来た。そして、しきりに寺本に質問した。
「テレビを見ていたら犬の譲渡会というのがあるんだけれど、ぼくも参加できるのかな?」
というのだ。寺本は
「ヒロちゃんなら家も広いし、家族も多いから、参加できると思うよ」
と答えた。今、犬を取り巻く環境は厳しい。事情で犬を手放す人が多いのだ。はぐれた犬は、保健所やその他保護施設に収容される。そこで第二の飼い主を探すのだ。ヒロちゃんはパソコンで開いた、譲渡会のホームページで、とある犬をピックアップしていた。その写真を印刷した紙をを寺本に見せていた。
「ポメラニアン・6歳・メス」
と書いてあるのを寺本は読み上げた。「臆病」とも書いてある。
「な、僕にピッタリだろ。ぼくはポメラニアンに好かれるし、たえ子ちゃんのサムを知っているからどう飼えばいいのかも分かるんだ」
「両親は説得できたのか」
とさとしが聞いた。
「僕は両親の信頼が厚いんだ。それにあんたは犬を飼ってもいないのに、毎日犬の散歩会に参加するのだから、よっぽどのもの好きだよねとも言われた。そして、犬を放り出すような心配はしてないけど、どうやって犬を手に入れるのさ、うちはお金なんてないよと言うから、譲渡会のことを教えたんだ」
「ヒロちゃん犬ぎらいは治ったの」
とさとしが言うから
「ロロは苦手だけど、サムがいるおかげで犬が好きになったんだ」
とヒロちゃんは答えた。
「それでポメラニアンか」
さとしは笑った。たえ子ちゃんが
「サムのいい友達になるといいわ」
と言った。
ヒロちゃんは少し驚いた。「たえ子ちゃんが話してくれた」もうずいぶん話してくれなかった気がする。なんだかたえ子ちゃんに嫌われていると思っていたのは自分の思い込みだったような気がする。こんな気づきにも、ヒロちゃんはサムがいてくれたおかげだと思って、足元でじゃれているサムを抱きしめた。
「それじゃあ譲渡会、付き合ってやるよ」
と寺本が言うと
「俺も俺も」
とさとしが言った。
寺本が
「保護者がひとりはついてこないとな」
と言うのでヒロちゃんは
「ああ。母さんに頼むよ」
と言った。譲渡会は一週間後だった。
一番後ろでユキのリードを持ち、皆の様子を見ていた日呂志おじさんは「なんだ、心配することなかったじゃん」と一人ほくそ笑んでいた。
ヒロちゃんは、その朝、学校に行った。そして、うわさ話は気にならなくなっていた。これもサムとたえ子ちゃんのおかげだ。今度、からかわれたら、ヒロちゃんは「それがどうした」といってやるつもりだった。ヒロちゃんは自分の感情をそっと受け入れたのだ。
つづく
「テレビを見ていたら犬の譲渡会というのがあるんだけれど、ぼくも参加できるのかな?」
というのだ。寺本は
「ヒロちゃんなら家も広いし、家族も多いから、参加できると思うよ」
と答えた。今、犬を取り巻く環境は厳しい。事情で犬を手放す人が多いのだ。はぐれた犬は、保健所やその他保護施設に収容される。そこで第二の飼い主を探すのだ。ヒロちゃんはパソコンで開いた、譲渡会のホームページで、とある犬をピックアップしていた。その写真を印刷した紙をを寺本に見せていた。
「ポメラニアン・6歳・メス」
と書いてあるのを寺本は読み上げた。「臆病」とも書いてある。
「な、僕にピッタリだろ。ぼくはポメラニアンに好かれるし、たえ子ちゃんのサムを知っているからどう飼えばいいのかも分かるんだ」
「両親は説得できたのか」
とさとしが聞いた。
「僕は両親の信頼が厚いんだ。それにあんたは犬を飼ってもいないのに、毎日犬の散歩会に参加するのだから、よっぽどのもの好きだよねとも言われた。そして、犬を放り出すような心配はしてないけど、どうやって犬を手に入れるのさ、うちはお金なんてないよと言うから、譲渡会のことを教えたんだ」
「ヒロちゃん犬ぎらいは治ったの」
とさとしが言うから
「ロロは苦手だけど、サムがいるおかげで犬が好きになったんだ」
とヒロちゃんは答えた。
「それでポメラニアンか」
さとしは笑った。たえ子ちゃんが
「サムのいい友達になるといいわ」
と言った。
ヒロちゃんは少し驚いた。「たえ子ちゃんが話してくれた」もうずいぶん話してくれなかった気がする。なんだかたえ子ちゃんに嫌われていると思っていたのは自分の思い込みだったような気がする。こんな気づきにも、ヒロちゃんはサムがいてくれたおかげだと思って、足元でじゃれているサムを抱きしめた。
「それじゃあ譲渡会、付き合ってやるよ」
と寺本が言うと
「俺も俺も」
とさとしが言った。
寺本が
「保護者がひとりはついてこないとな」
と言うのでヒロちゃんは
「ああ。母さんに頼むよ」
と言った。譲渡会は一週間後だった。
一番後ろでユキのリードを持ち、皆の様子を見ていた日呂志おじさんは「なんだ、心配することなかったじゃん」と一人ほくそ笑んでいた。
ヒロちゃんは、その朝、学校に行った。そして、うわさ話は気にならなくなっていた。これもサムとたえ子ちゃんのおかげだ。今度、からかわれたら、ヒロちゃんは「それがどうした」といってやるつもりだった。ヒロちゃんは自分の感情をそっと受け入れたのだ。
つづく
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