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07話 ヒーロー活動の光と影
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夏休みに入ってもヒーロー活動は続いた。健は愛犬のチャチャの散歩を兼ねてのヒーロー活動になった。通学路の住人にはその活動がにわかに認知されてきた。
「ゴミ拾いをしている子供がいる」
「感心だねー。小学校の生徒だろ」
「なかなか出来るもんじゃないぞ。どこの家の子だ」
健たちにとっては自己満足の手段だったゴミ拾いが、思わず通学路近辺の大人たちの目に留まったのだ。自分の家の前くらいきれいにしようと、多くの大人たちは動き出した。
夏休みにもかかわらず、学校には電話が鳴り響いた。
「ぜひ表彰してやってください。」
「お小遣いをあげたいのですが、どんな子どもさんなのですか」
などなど。
すぐに健たちのことだと用務員のおじさんは気がついた。健のクラスの担任の那須川景子先生が夏休みの当番で出勤すると、彼らの朝の活動が済むなり呼び止めた。
「あなたたちは何故ゴミ拾いをしているの」
健は言った
「僕らにとっては当然の活動なんです。どうか見逃してください」
「何言ってるの? 通学路近辺の人から褒めてやってくださいと電話がなりどうしなのよ」
「なんだ自分勝手なことして怒られるのかと思った」
健が言った。
「当然の活動ってどういう意味」
「それは……」
健は戸惑った。ヒーローに対して偏見を持っている大人もいるからだ。
「今何歳だ。ヒーローは卒業して勉強しなさい」
「まだヒーローなんかに憧れているのか」
などなど。
ヒーローへの道は険しい。正直にヒーローのためさと告白してしまえば大人たちは反対の対応を示すものもいるだろう。
吉郎がふと
「慈善活動です」
と言った。先生は
「まあなんて素晴らしい子どもたちでしょう。これからもずっと活動してね」
景子先生が言った。この場はそれで済ました。
吉郎はこの活動の実態を知らない。吉郎がこの活動に参加したきっかけは友達欲しさだ。そろそろ本当の活動実態を知らせなきゃ。この活動はヒーローになるための活動だと。最初は吉郎が誤解して、つまりヒーローなんているわけないじゃんと言って、参加を拒むんじゃないかと思って伏せていたのだが。少し付き合ってみるとこの活動への理解が健を除けば一番だ。今なら言える。
職員室を出ると吉郎に
「打ち明けたいことがある」
といって健が話し始めた
「吉郎。実はこの活動の目的は…」
「慈善活動だろ。それにしても皆に褒めてもらってよかったね」
「いや慈善活動というのは世を欺くための仮の呼び名だ。実はこの活動はヒーローになるための活動なのさ」
「ヒーローなんてまだ信じているのかい。慈善活動でもいいじゃん。ヒーローだって慈善活動のたまものだよ。どちらも変わらないと思うよ。この僕らの活動で、自分の家の前くらいは掃除しようと思った人がいるのだから。その人たちもヒーローさ。ヒーロー活動が広がって街に善が行われば、それらはヒーロー活動そのものじゃん」
健は思った。吉郎のような人がたくさんいればいいのに。でも敵もいるんだよな。
敵は子どもたちの間に現れた。
「おまえたちヒーローに憧れているんだって? この前通りすがりに聞いちゃったよ」
この年頃の子どもは大人に憧れる。同期にまだ自分より子どもっぽいものがいると感じると、彼らを否定して自分の地位をあげる。常套手段だ。
まあ敵が子供なら我慢できる。フィギュアでも持って遊んでいれば、そういう趣味なんだと理解もされる。しかし大人に敵が現れると厄介だ。何とかヒーローを卒業させようとお節介を焼いて来る者もいる。大人には力がある。健は、これを恐れていたのだ。大人には慈善活動と言っておくのが無難だった。
悟は
「ヒーローごっこだよな。ごっこ遊びはもう卒業しようぜ」
といち早くヒーロー活動にピリオドを打とうと構えたが、吉郎の考え方を聞いて大きくうなずくものがあった。慈善活動もヒーロー活動も同じものという考え方だ。そうだ俺は慈善活動をしているのだと自分に言い聞かせていた。
恵ちゃんは、根っからのヒーローマニアだが、最近思うところあって活動に身が入らないようだ。恵ちゃんのおじさんが恵ちゃんのヒーローに違いないのだが、普通の大人の顔をにわかに感じ取っていたのだから。女の子は早熟だ。このヒーロー活動のメンバーにおいて一番の大人よりだったのかもしれない。
「ゴミ拾いをしている子供がいる」
「感心だねー。小学校の生徒だろ」
「なかなか出来るもんじゃないぞ。どこの家の子だ」
健たちにとっては自己満足の手段だったゴミ拾いが、思わず通学路近辺の大人たちの目に留まったのだ。自分の家の前くらいきれいにしようと、多くの大人たちは動き出した。
夏休みにもかかわらず、学校には電話が鳴り響いた。
「ぜひ表彰してやってください。」
「お小遣いをあげたいのですが、どんな子どもさんなのですか」
などなど。
すぐに健たちのことだと用務員のおじさんは気がついた。健のクラスの担任の那須川景子先生が夏休みの当番で出勤すると、彼らの朝の活動が済むなり呼び止めた。
「あなたたちは何故ゴミ拾いをしているの」
健は言った
「僕らにとっては当然の活動なんです。どうか見逃してください」
「何言ってるの? 通学路近辺の人から褒めてやってくださいと電話がなりどうしなのよ」
「なんだ自分勝手なことして怒られるのかと思った」
健が言った。
「当然の活動ってどういう意味」
「それは……」
健は戸惑った。ヒーローに対して偏見を持っている大人もいるからだ。
「今何歳だ。ヒーローは卒業して勉強しなさい」
「まだヒーローなんかに憧れているのか」
などなど。
ヒーローへの道は険しい。正直にヒーローのためさと告白してしまえば大人たちは反対の対応を示すものもいるだろう。
吉郎がふと
「慈善活動です」
と言った。先生は
「まあなんて素晴らしい子どもたちでしょう。これからもずっと活動してね」
景子先生が言った。この場はそれで済ました。
吉郎はこの活動の実態を知らない。吉郎がこの活動に参加したきっかけは友達欲しさだ。そろそろ本当の活動実態を知らせなきゃ。この活動はヒーローになるための活動だと。最初は吉郎が誤解して、つまりヒーローなんているわけないじゃんと言って、参加を拒むんじゃないかと思って伏せていたのだが。少し付き合ってみるとこの活動への理解が健を除けば一番だ。今なら言える。
職員室を出ると吉郎に
「打ち明けたいことがある」
といって健が話し始めた
「吉郎。実はこの活動の目的は…」
「慈善活動だろ。それにしても皆に褒めてもらってよかったね」
「いや慈善活動というのは世を欺くための仮の呼び名だ。実はこの活動はヒーローになるための活動なのさ」
「ヒーローなんてまだ信じているのかい。慈善活動でもいいじゃん。ヒーローだって慈善活動のたまものだよ。どちらも変わらないと思うよ。この僕らの活動で、自分の家の前くらいは掃除しようと思った人がいるのだから。その人たちもヒーローさ。ヒーロー活動が広がって街に善が行われば、それらはヒーロー活動そのものじゃん」
健は思った。吉郎のような人がたくさんいればいいのに。でも敵もいるんだよな。
敵は子どもたちの間に現れた。
「おまえたちヒーローに憧れているんだって? この前通りすがりに聞いちゃったよ」
この年頃の子どもは大人に憧れる。同期にまだ自分より子どもっぽいものがいると感じると、彼らを否定して自分の地位をあげる。常套手段だ。
まあ敵が子供なら我慢できる。フィギュアでも持って遊んでいれば、そういう趣味なんだと理解もされる。しかし大人に敵が現れると厄介だ。何とかヒーローを卒業させようとお節介を焼いて来る者もいる。大人には力がある。健は、これを恐れていたのだ。大人には慈善活動と言っておくのが無難だった。
悟は
「ヒーローごっこだよな。ごっこ遊びはもう卒業しようぜ」
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