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16話 大切なことはすべて子どもの頃に習った
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いよいよ子ども5人組始動である。五ヒーロー慈善隊と名乗った。健のネーミングだが、センスが知れる。相変わらず活動はゴミ拾いだったが前より意欲的である。このささいな清掃活動がいずれ大きな善をなすと皆は本気で信じていた。
活動が表彰され有名になるにつれ、メンバーの悪口をいうものもあらわれる。
「いい年して何がヒーローだ。頭おかしいんじゃないの」
健は黙っていた。元々おとなしいというのもあるが、もう弱虫で臆病者ではなくなっていたのだ。人の目を気にするなんて弱虫の証拠だろう。自分に負けている。それに話さない分、よく自分の中で物事を考察し、内面がある意味成長していたのだ。
なぜ多くの者は悪口をいい、ヒーローから離れていくのか。ヒーローを信じる者に向けられる“馬鹿を見るような目”も、健はおおかたその理由を察していた。世間一般の成長を真の成長と信じ、子どもっぽいものは卒業だという偏見。大切なことはすべて子どもの頃に習ったはずだというのに。大人になるにつけ、そこから離れてゆく。健は大人になるということが、ちょっと大げさだけど、次第に悪に染まることのように感じてしまった。
そんなことをメンバーにも話した。
「健君素敵」
健の同属の恵ちゃんがささやいた。
「相変わらずだな」
健の天然キャラを知っている悟が落ち着いて言った。
「そうだよね。そんな気がするよ」
難しいことにはこだわらない吉郎が気にもせずに誉めた。
「そんなにややこしいこと考えてたんだね」
守は少し身を引いた。守はあくまで、普通の大人になれればいいと思っていたのだから。
悪口に対して悟は健のために何か言い出しそうだったが、健は止めた。応援してくれる多くの仲間がいることで十分だったのだ。
先にも述べたが人の目を気にするのは自分の弱さの印。その時その場で、自分に自信のある事ならば堂々としていればよい。後で馬鹿にされるという可能性もあるが、それはその時。馬鹿にされるのは幾分つらいが、今の自分が大切であり、ひとの目ばかり気にする時代でもなかろう。
「自分を信じよう」
健はそう思っていた。
今日はC地区。軽めの活動だが守は手を抜くことはない。
「おい、悟」
守が言った。
「分かっている左だな。ゴミを確認した。任せておけ」
チームワークは万全だった。
守は他のメンバーが頼りにならないので、今ではヒーロー慈善隊の仕事頭であった。
「あと30分あれば余裕で終わるだろう」
守は言った。皆が一生懸命やっているのが分かるだけに、仕事の手を抜けない。器用な守は他の隊員より仕事をしてしまう結果となった。
おかげで守は授業中も居眠りをしていた。今度の期末テストはどうなる事やら。
さすがに親も、
「ヒーロー慈善隊なんて、やめなさい」
と言うかもしれない。守はヒーロー慈善隊に助けられた身であるのでやめたくなかった。
「どうして僕は心が不器用なのだろう」
最近、活動について行けないと思い始めていた。しかし一生懸命やるのは隊の皆に応えたい一心である。全力でヒーロー慈善活動も勉学もやるしかなかった。
悟は気づいていた。守のここのところの生活の様子に、
「おい守、最近授業中居眠りばかりじゃないか。早寝してるのかい」
「授業について行けないから夜遅くまで復習している」
「それで授業中寝ていたら仕方ないじゃん。ヒーローとは言えないぜ」
守はぷっつりと切れて本音を言ってしまった。
「そんなこと言ってもぼくの活動の比重が皆より大きいから仕方ないじゃん」
とつい言葉を滑らせてしまった。
「お前よく働くと思ってたけど、そんなに力を入れなくてもいいんだぞ」
「え!」
「皆、力抜いてやってるんだから。ヒーロー慈善活動は長期戦だぞ」
「僕には、皆、一生懸命やっているように見えたけど」
「お前真面目だよな」
「皆ふりをしているだけだよ。おまえにはまだヒーローのふりという技ができていないようだ。ヒーローだって無限じゃない。無限のものなんて現実にはないんだぜ。これは大きなルールだ。これも子どもの頃に習ったろ。いや、若い俺らにはまだ早いことかも。大きなことを考えてる子どもの特権かもな。なら今からでいい。気楽に行こうぜ。健も気楽にと言ってたろ。真面目過ぎるよ」
活動が表彰され有名になるにつれ、メンバーの悪口をいうものもあらわれる。
「いい年して何がヒーローだ。頭おかしいんじゃないの」
健は黙っていた。元々おとなしいというのもあるが、もう弱虫で臆病者ではなくなっていたのだ。人の目を気にするなんて弱虫の証拠だろう。自分に負けている。それに話さない分、よく自分の中で物事を考察し、内面がある意味成長していたのだ。
なぜ多くの者は悪口をいい、ヒーローから離れていくのか。ヒーローを信じる者に向けられる“馬鹿を見るような目”も、健はおおかたその理由を察していた。世間一般の成長を真の成長と信じ、子どもっぽいものは卒業だという偏見。大切なことはすべて子どもの頃に習ったはずだというのに。大人になるにつけ、そこから離れてゆく。健は大人になるということが、ちょっと大げさだけど、次第に悪に染まることのように感じてしまった。
そんなことをメンバーにも話した。
「健君素敵」
健の同属の恵ちゃんがささやいた。
「相変わらずだな」
健の天然キャラを知っている悟が落ち着いて言った。
「そうだよね。そんな気がするよ」
難しいことにはこだわらない吉郎が気にもせずに誉めた。
「そんなにややこしいこと考えてたんだね」
守は少し身を引いた。守はあくまで、普通の大人になれればいいと思っていたのだから。
悪口に対して悟は健のために何か言い出しそうだったが、健は止めた。応援してくれる多くの仲間がいることで十分だったのだ。
先にも述べたが人の目を気にするのは自分の弱さの印。その時その場で、自分に自信のある事ならば堂々としていればよい。後で馬鹿にされるという可能性もあるが、それはその時。馬鹿にされるのは幾分つらいが、今の自分が大切であり、ひとの目ばかり気にする時代でもなかろう。
「自分を信じよう」
健はそう思っていた。
今日はC地区。軽めの活動だが守は手を抜くことはない。
「おい、悟」
守が言った。
「分かっている左だな。ゴミを確認した。任せておけ」
チームワークは万全だった。
守は他のメンバーが頼りにならないので、今ではヒーロー慈善隊の仕事頭であった。
「あと30分あれば余裕で終わるだろう」
守は言った。皆が一生懸命やっているのが分かるだけに、仕事の手を抜けない。器用な守は他の隊員より仕事をしてしまう結果となった。
おかげで守は授業中も居眠りをしていた。今度の期末テストはどうなる事やら。
さすがに親も、
「ヒーロー慈善隊なんて、やめなさい」
と言うかもしれない。守はヒーロー慈善隊に助けられた身であるのでやめたくなかった。
「どうして僕は心が不器用なのだろう」
最近、活動について行けないと思い始めていた。しかし一生懸命やるのは隊の皆に応えたい一心である。全力でヒーロー慈善活動も勉学もやるしかなかった。
悟は気づいていた。守のここのところの生活の様子に、
「おい守、最近授業中居眠りばかりじゃないか。早寝してるのかい」
「授業について行けないから夜遅くまで復習している」
「それで授業中寝ていたら仕方ないじゃん。ヒーローとは言えないぜ」
守はぷっつりと切れて本音を言ってしまった。
「そんなこと言ってもぼくの活動の比重が皆より大きいから仕方ないじゃん」
とつい言葉を滑らせてしまった。
「お前よく働くと思ってたけど、そんなに力を入れなくてもいいんだぞ」
「え!」
「皆、力抜いてやってるんだから。ヒーロー慈善活動は長期戦だぞ」
「僕には、皆、一生懸命やっているように見えたけど」
「お前真面目だよな」
「皆ふりをしているだけだよ。おまえにはまだヒーローのふりという技ができていないようだ。ヒーローだって無限じゃない。無限のものなんて現実にはないんだぜ。これは大きなルールだ。これも子どもの頃に習ったろ。いや、若い俺らにはまだ早いことかも。大きなことを考えてる子どもの特権かもな。なら今からでいい。気楽に行こうぜ。健も気楽にと言ってたろ。真面目過ぎるよ」
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