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第6話 代替行為
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華澄は自宅に帰り、明日のモデルの仕事の用意を終わらせた。
華澄の玲花への気持ちは、尊敬に近いものであった。華澄は人生の今まで、その容姿ゆえに多くの人からもて囃された。自分が望まなくとも、周りの人々は華澄に注目し続けた。そんな生活に辟易していた華澄は、それを他の誰にも相談できず、どこへともやれない気持ちを持て余していた。
高校に入学すると、同じクラスに同じような境遇の生徒がいた。華澄は玲花を始めた見た時その出立の美しさに圧倒された。窓から漏れる春の日差しを通してしまいそうな白い肌、凛とした表情と姿勢、堂々としてそれでいて澄み切った声。華澄は自分よりも注目を浴びてきたであろうと推察し、同情心を燃やした。華澄は玲花に近づいて言った。
「なんかこれから大変そうだね。みんな黒田さんに興味津々で。」
玲花はその言葉の意味を考えるように俯いたがすぐに返した。
「そうかな、あまり気にならないけど。人の目が多いってことは良いようにも悪いようにも転ぶと思うの。」
華澄は黙って聞いていた。
「そしてその未来を決めるのは自分自身。最初から悪いことをするつもりもないし、悪いことをしてきたわけでもない。私にとってはチャンスの一つだよ。」
窓から流れる春風がカーテンを揺らして陽を教室内へもたらした。華澄は玲花の曇りのない言葉に感銘を受け、それから華澄はいつも玲花の隣にいるようになった。
ある時華澄は玲花に尋ねた。
「玲花はどうしてそんなに堂々としていて他人を気にしないの。」
「私は私の信念を頼りに生きてるから。好きなものを愛する。それが否定されても私は構わず愛する。他人の言葉を間に受けたっていいことの方が少ないからね。」
玲花はまっすぐな笑顔で答えた。
「あとは、家族かな。家族のおかげで愛を知れて、そのおかげで私は私でいることができるのだと思う。」
華澄は玲花にとって家族とは本当に大切な存在であることを感じ取った。そして興味が湧いた。同時に華澄は自分の心臓の鼓動が早くなっているのに気づいて、これはなんだろうと疑問に思った。この感情は、と玲花の方を向くとそれがより早くなる。まさかね、と落ち着かせようと思ったが、玲花の甘い香りが鼓動を誘った。
恋、いや愛?華澄は今まで恋愛の感情を持ったことがなかったので自分の状況を理解できなかった。それも相手は女性だ。ここでさっきの玲香の言葉を思い出した。「好きなものを愛する。否定されても。」華澄はこの気持ちを玲香への愛だとすることにした。何かはわからないけど、ひとまず愛してみよう、と。
「兄さん、好き、愛してる。」
電話越しに聞こえる女性の艶っぽい声。そして、艶かしい音。華澄は混乱した。混乱して言葉が出なかった。電話の相手はお兄さん、秀人さんのはずである。そして、「兄さん」という女性の声。
「玲花...?」
震えるような声で囁いた。
華澄は初めて聞く玲花の喘ぎ声に興奮した。何が起こってるいるのかは理解できないけれど、玲花の声は興奮剤として華澄を刺激した。
華澄は自然と右手を下腹部へ伸ばした。
「んっ」
伸ばされた手は、下腹部が濡れているのを感じさせた。息をフーッと熱を持って吐いて、優しく愛撫した。華澄は玲花のことを思って愛撫した。彼女の声を耳で感じながら。
しばらくすると、華澄は腰を跳ねさせて抑えようのない声を出して果てた。果てた後、電話を切った。そして、玲花の相手が兄である秀人であることに胸を痛めた。しかし、玲花が秀人を強く愛していることを、家に行った時や電話越しの声から感じた。玲花が幸せそうな顔で笑ったり、玲花が玲花らしくいられる理由は秀人であると。華澄は寂しさを覚え、ベッドの中にうずくまって煩悶した。このまま、また、どこへもやれない感情を抱き続けるのか。そんな思いを抱えて、玲花の声を思い出しながら腰の炎を燃やした。
翌週の月曜、秀人は華澄に呼び出されたので、滅多に人の来ない屋上の扉前に向かった。秀人がそこに着くと、すでに華澄が扉に寄りかかって腕組みで待っていた。
「お兄さん、いや、秀人さん、私知ってるよ。」
なんのことだか秀人はわからなかった。だけど、華澄が家に遊びに来た時の口調と違いどこか挑発的な口調であることに違和感を感じた。
「なんのことかな。」
「玲花のこと。土曜の夜に電話したよね。その電話中に、ね。」
華澄は切れ長の目をより細めて、怪しげな笑顔を浮かべた。そして続けた。
「このこと、みんなに言ったら玲花大変だろうなあ。兄妹でいやらしいことするなんて、穢らわしい。」
秀人は、目を泳がせて身震いした。
「そ、そんなこと。お願いだ、俺はどうなってもいいから、い、言わないでくれ。」
華澄はその言葉を聞き、決心したように深呼吸した。次の瞬間、俯く秀人に口付けした。
秀人は顔を上げて華澄を目を見開いて見つけた。
「どうして。こんなこと。」
「私、玲花のことが好き。電話で伝えた通り。だけど玲花は秀人さんのことが好きみたい。悔しくて仕方ないけど、どうしようもない。だから、秀人さんに玲花をお裾分けしてもらおーと思って。玲花とキスした秀人さんとキスすれば玲花とキスした気分を味わえる。代替行為。誰にも玲香と秀人さんの関係言わないから、代わりに私が呼んでら来てね。来なかったらわかるよね。」
「わ、わかったよ。」
秀人はあたふたしながら頷いた。
「うふふ、キス気持ちいいね。」
華澄は、怪しげに上目遣いで言った。
その日の帰り、雨が降っていた。天気予報には無いにわか雨だった。秀人は傘を持っていなかったので雨に濡れながら走って帰った。湿気で重たくなった空気が秀人の体にのし掛かり、どんよりと世界を歪めた。華澄の約束、玲花の愛。秀人は早く帰ってギターを弾きたくなったので足を早めた。
玄関に着いて、鍵を差し込み回す。ドアを開けようとドアコブに手をかけてまた回す。しかしドアは開かなかった。もう一度鍵を差し込み、ドアを開けるとドアが開いた。鍵が開いたままだったのだろうか。その先には、ずぶ濡れの玲花がこちらを向いて立っていた。
華澄の玲花への気持ちは、尊敬に近いものであった。華澄は人生の今まで、その容姿ゆえに多くの人からもて囃された。自分が望まなくとも、周りの人々は華澄に注目し続けた。そんな生活に辟易していた華澄は、それを他の誰にも相談できず、どこへともやれない気持ちを持て余していた。
高校に入学すると、同じクラスに同じような境遇の生徒がいた。華澄は玲花を始めた見た時その出立の美しさに圧倒された。窓から漏れる春の日差しを通してしまいそうな白い肌、凛とした表情と姿勢、堂々としてそれでいて澄み切った声。華澄は自分よりも注目を浴びてきたであろうと推察し、同情心を燃やした。華澄は玲花に近づいて言った。
「なんかこれから大変そうだね。みんな黒田さんに興味津々で。」
玲花はその言葉の意味を考えるように俯いたがすぐに返した。
「そうかな、あまり気にならないけど。人の目が多いってことは良いようにも悪いようにも転ぶと思うの。」
華澄は黙って聞いていた。
「そしてその未来を決めるのは自分自身。最初から悪いことをするつもりもないし、悪いことをしてきたわけでもない。私にとってはチャンスの一つだよ。」
窓から流れる春風がカーテンを揺らして陽を教室内へもたらした。華澄は玲花の曇りのない言葉に感銘を受け、それから華澄はいつも玲花の隣にいるようになった。
ある時華澄は玲花に尋ねた。
「玲花はどうしてそんなに堂々としていて他人を気にしないの。」
「私は私の信念を頼りに生きてるから。好きなものを愛する。それが否定されても私は構わず愛する。他人の言葉を間に受けたっていいことの方が少ないからね。」
玲花はまっすぐな笑顔で答えた。
「あとは、家族かな。家族のおかげで愛を知れて、そのおかげで私は私でいることができるのだと思う。」
華澄は玲花にとって家族とは本当に大切な存在であることを感じ取った。そして興味が湧いた。同時に華澄は自分の心臓の鼓動が早くなっているのに気づいて、これはなんだろうと疑問に思った。この感情は、と玲花の方を向くとそれがより早くなる。まさかね、と落ち着かせようと思ったが、玲花の甘い香りが鼓動を誘った。
恋、いや愛?華澄は今まで恋愛の感情を持ったことがなかったので自分の状況を理解できなかった。それも相手は女性だ。ここでさっきの玲香の言葉を思い出した。「好きなものを愛する。否定されても。」華澄はこの気持ちを玲香への愛だとすることにした。何かはわからないけど、ひとまず愛してみよう、と。
「兄さん、好き、愛してる。」
電話越しに聞こえる女性の艶っぽい声。そして、艶かしい音。華澄は混乱した。混乱して言葉が出なかった。電話の相手はお兄さん、秀人さんのはずである。そして、「兄さん」という女性の声。
「玲花...?」
震えるような声で囁いた。
華澄は初めて聞く玲花の喘ぎ声に興奮した。何が起こってるいるのかは理解できないけれど、玲花の声は興奮剤として華澄を刺激した。
華澄は自然と右手を下腹部へ伸ばした。
「んっ」
伸ばされた手は、下腹部が濡れているのを感じさせた。息をフーッと熱を持って吐いて、優しく愛撫した。華澄は玲花のことを思って愛撫した。彼女の声を耳で感じながら。
しばらくすると、華澄は腰を跳ねさせて抑えようのない声を出して果てた。果てた後、電話を切った。そして、玲花の相手が兄である秀人であることに胸を痛めた。しかし、玲花が秀人を強く愛していることを、家に行った時や電話越しの声から感じた。玲花が幸せそうな顔で笑ったり、玲花が玲花らしくいられる理由は秀人であると。華澄は寂しさを覚え、ベッドの中にうずくまって煩悶した。このまま、また、どこへもやれない感情を抱き続けるのか。そんな思いを抱えて、玲花の声を思い出しながら腰の炎を燃やした。
翌週の月曜、秀人は華澄に呼び出されたので、滅多に人の来ない屋上の扉前に向かった。秀人がそこに着くと、すでに華澄が扉に寄りかかって腕組みで待っていた。
「お兄さん、いや、秀人さん、私知ってるよ。」
なんのことだか秀人はわからなかった。だけど、華澄が家に遊びに来た時の口調と違いどこか挑発的な口調であることに違和感を感じた。
「なんのことかな。」
「玲花のこと。土曜の夜に電話したよね。その電話中に、ね。」
華澄は切れ長の目をより細めて、怪しげな笑顔を浮かべた。そして続けた。
「このこと、みんなに言ったら玲花大変だろうなあ。兄妹でいやらしいことするなんて、穢らわしい。」
秀人は、目を泳がせて身震いした。
「そ、そんなこと。お願いだ、俺はどうなってもいいから、い、言わないでくれ。」
華澄はその言葉を聞き、決心したように深呼吸した。次の瞬間、俯く秀人に口付けした。
秀人は顔を上げて華澄を目を見開いて見つけた。
「どうして。こんなこと。」
「私、玲花のことが好き。電話で伝えた通り。だけど玲花は秀人さんのことが好きみたい。悔しくて仕方ないけど、どうしようもない。だから、秀人さんに玲花をお裾分けしてもらおーと思って。玲花とキスした秀人さんとキスすれば玲花とキスした気分を味わえる。代替行為。誰にも玲香と秀人さんの関係言わないから、代わりに私が呼んでら来てね。来なかったらわかるよね。」
「わ、わかったよ。」
秀人はあたふたしながら頷いた。
「うふふ、キス気持ちいいね。」
華澄は、怪しげに上目遣いで言った。
その日の帰り、雨が降っていた。天気予報には無いにわか雨だった。秀人は傘を持っていなかったので雨に濡れながら走って帰った。湿気で重たくなった空気が秀人の体にのし掛かり、どんよりと世界を歪めた。華澄の約束、玲花の愛。秀人は早く帰ってギターを弾きたくなったので足を早めた。
玄関に着いて、鍵を差し込み回す。ドアを開けようとドアコブに手をかけてまた回す。しかしドアは開かなかった。もう一度鍵を差し込み、ドアを開けるとドアが開いた。鍵が開いたままだったのだろうか。その先には、ずぶ濡れの玲花がこちらを向いて立っていた。
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