トイレのミネルヴァは何も知らない

加瀬優妃

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4時間目 身元調査・後編 ~秘密の手紙と隠し子騒動~

エピローグ・いつまでも、こんな感じで

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「すごい部屋だねぇ……」
「うん……」

 ソファにふんぞり返り大きく口を開けたまま、恵がぐるりと辺りを見回している。

 二十畳ほどある寝室。一方の壁はすべてガラス張りで柔らかな日差しがさんさんと降り注いでいる。十階にあるため、景色も抜群。駅付近のビル群やその奥の遠くの山々が綺麗に見える。
 ふかふかのダブルサイズのベッド。そのちょうど反対側には40インチのテレビが置かれ、その前にはガラステーブルとベージュのソファ。いわゆる応接セットがあり、私と恵は向い合わせに座っている。
 窓と反対側の壁には木目のいい匂いのするチェストと机が置いてあって、パソコンを持ち込んで作業できるようになっている。当然、ネット環境も整えられている。
 他には小さいキッチンが備え付けられていて、普通の家庭に置かれているような冷蔵庫がドーン。勿論、トイレとバスルームもあり、その広さはその辺のホテルよりずっと大きい。

 改めて見ると、本当に凄いな。入院して三日ほど経ったけど、まだ慣れないわ。

「病院の最高クラスの特別室ってこんな感じなんだ」
「そうだね。何と言うか、病院って言われないと分かんないくらいお洒落で豪華だよね」

 恵が差し入れしてくれたコンビニのプリンを食べながら、私はしみじみと頷いた。

 翌日には退院できると思ったけど
「念のため色々検査しておきましょう。私、莉子ちゃんの身体もずっと心配だったのよ」
と玲香さんに押し切られ、結局四日間の入院になった。
 元気な人間が四日間も入院とか、おかしいよね? でもこれでも、頑張って交渉したんだよ。新川透のお母さんは一週間ぐらい、とか言うしさあ。
 私には掃除婦としての仕事が待っている。……『ミネルヴァ』もね! だから、そんないい加減なことはできないよ。

 恵の元には、新川透から連絡が行っていた。だけど何しろ特別室なので、外部の人間が自由に見舞いに来れるようなシステムにはなっていない。
 恵は今日になってやっと、玲香さんの手引きでこの病室にやって来れたのだ。


 新川透の家族については、新川透自身と玲香さんが教えてくれた。
 玲香さんは新川透のお兄さんである伊知郎さんの奥さん。実は高校生の頃からの付き合いで、当然ながら新川透とも時々は顔を合わせていた。結婚することになり新川透が家を出たのは、この好奇心旺盛な玲香さんの攻撃を躱したかったから、らしい。

「攻撃を、躱す……?」
「専業主婦になって暇になったら、元新聞記者の玲香さんは何をするか分からないからね。莉子のことは絶対にバレたくなかったし」
「ふふふ、甘いわね」

 しかし結局、私の存在が新川家にバレてしまう。どんな子なの、透はどうするつもりなんだ、となり、玲香さんが
「私が調べますから、お義父さんとお義母さんは絶対に引っ込んでて下さいね!」
と説き伏せ、私のアパートの隣を借りたのだそうだ。

「それってやっぱり、新川センセーを心配して? どこの馬の骨とも知れない女が……」
「違う、違う。見ただろ、あの歓迎ぶり」
「うーん?」
「日本を飛び出してどこに行くか何をしでかすか解らなかった息子がこんなにおとなしくなるなんて、どんな相手なんだ、と。そういうことだな」
「へ?」
「だからね。まぁ言うなれば、莉子ちゃんは『透くんホイホイ』?」
「全然、分からないんだけど……」

 玲香さんの言葉を借りるならば、『莉子ちゃんがいるところに透くんは落ち着くんだから』ということで、ご両親は私にとても感謝しているらしい。
 学生時代の新川透が如何に両親の手を焼いていたか、ということがよくわかるエピソードだ。

 一方、玲香さんはそんな新川透と両親の言動に不安を感じていた。
 天涯孤独(元新聞記者、私の境遇を調べるなんて朝飯前だ)のまだ若い私が、新川透に無理矢理従わされているんじゃないか、と。そして、何も分からないうちに大人たちに丸め込まれてしまうんじゃないか、と。
 玲香さんは最初から、私の身を案じてアパートに来てくれたのだ。

「まぁ、心配することなかったけどね。莉子ちゃん、意思が強いし。むしろ、透くんが……ぶくく……」
「玲香さん、笑うのやめてもらえます?」

 新川透はすっかり玲香さんに頭が上がらなくなっている。
 なぜなら退院後、私は玲香さんの家にお世話になることになったからだ。

 新川透のマンションは言語道断。新川家の実家は
「タケがいるから駄目」
と新川透が却下し、両親も「確かに」「そうねえ」と強くは言わなかった。

 その点、玲香さんの家は伊知郎さんと玲香さんの二人きり。玲香さんが
「あと何か月かのために賃貸アパートを借りるのは勿体ないわよ。部屋は空いてるんだから、使って」
と申し出てくれた。
 実際、この先どうしようと本当に困っていた私は、素直に玲香さんの好意に甘えることにした。

「とにかく、莉子ちゃんの保護者代わりには私がなります。透くんはせいぜい素敵な彼氏を目指すことね」
「素敵な夫じゃなくて?」
「17歳の子に結婚を迫るとか、絶対におかしいからね!」

……と、常識的に新川透のやり過ぎを牽制してくれるので、とっても助かります。


 その話を恵にすると、手を叩いて大笑いした。

「あはは! やるねぇ、玲香さん」
「うん。旦那さんとお似合いだよ、本当に」
「旦那さん? 新川センセーのお兄さん?」
「そうそう」

 新川透の兄、伊知郎さんは昨日の夜遅くに病室に現れた。

「弟達と両親、それに妻が、大変ご迷惑をおかけしました……」

とガッツリ頭を下げられて、かなりアタフタしちゃったんだよね。

 でも、伊知郎お兄さん。お兄さんとの初対面が、一番マトモでした……。
 私、心の底からホッとしました。

 伊知郎さんはとても穏やかで落ち着いた雰囲気の、信頼できそうな男性だ。
 高校時代から玲香さんと付き合い始め、遠距離恋愛となった大学時代も難なく乗り切り、2年前に結婚したそうだ。

「ただ、玲香はとても楽しそうに莉子さんの話をしていました。家にいても一人きりですし、妹ができたみたいで嬉しかったのでしょう。我が家に来られるのは大歓迎ですよ。できましたら、これからも話し相手になってくれると助かります」
「いえ、そんな! こちらこそよろしくお願いいたします」

……と、お互いペコペコと頭を下げたのだった。

「ふうん。玲香さんってバリバリのキャリアウーマンっぽいのにね。何で新聞記者やめて専業主婦になったんだろ?」
「何でだろうね? でも、日中は習い事をしたり資格を取る勉強をしたり忙しそうだよ」
「へえ……で、莉子は?」
「ん?」

 コンビニプリンの最後の一口をゴックンしながら、恵に聞き返す。
 恵はやれやれといった様子で肩をすくめた。

「もう、相変わらずボケてるね。約束の『来週』だよ。新川センセーと、どうなったのよ?」
「ど、どうって……」

 何で急にそんな攻撃をするのさ。びっくりするじゃん!
 ここ何日かの出来事を思い出し、身体がカーッと熱くなる。

「だって結婚がどうとかっていう単語が出るってことは、何か言われたんでしょ? 何を言われたの?」
「い、今は、ちょっと……」
「またそれ~? 仕方がないな。じゃあ、傘の話は? してみた?」

 うっ、それもあるんだよね! だけど……。

「えーと、もうちょっと。もうちょっと待って!」
「もう……」

 恵は食べ終わったプリンを片付けながら、不満そうに小さく溜息をついた。
 だって……だって、だって!
 恥ずかしすぎて、無理なんだよー!


 一昨日、月曜日の夜のこと。
 実はあれには……続きがある。

   * * *

 どうしてこの人はこんなに私を見てるんだろう。一体、いつからなんだろう。
 本当の意味で知りたくなって、私はついに口を開いた。

「ねえ。初めて会ったのって……傘のとき?」
「傘? ……ああ、時計台の前?」

 新川透はすんなりと答える。
 そうか、恵の言っていたアレは、本当に新川透だったのか。

「思い出したの?」
「ううん、私は全然。恵がマンションで同じ傘を見つけて『こんなことがあったよ』って教えてくれたの」
「だろうねぇ……」

 苦笑すると、新川透は
「それは初めてではないね。莉子と恵ちゃんだと分かって行ってるから」
と答えた。

「えっ……」
「だからサングラスまでかけて顔を見えないようにした訳で」
「じゃ……じゃあ、初めてっていつ!?」

 勢い込んで聞くと、新川透はしばらく考えたあとニッコリと笑った。
 あ、これ、魔王スマイルの方です。嫌な予感。

「結婚してくれたら教えてあげる」
「な、何でそんな先なの!?」
「まぁ、保険?」

 保険って、どういう意味?
 ちょ、ちょっとちょっと……。そこまでしないと教えられない情報なんですか。
 あんたマジで、裏で何やってたのよ?

「それよりさ」

 新川透はキャスター付きの椅子をカラカラカラ……と音をさせ、私ににじり寄ってきた。
 何ですか「それより」って。私の質問は置き去りかよ。

「過去形だったのが、すごく気になってるんだけど」
「過去形?」
からね、って。覚えてない?」
「くあっ……!」

 な、何でそれを……! 
 た、確かに言った……言いました! でも、夢の中でだよ?

 どんなに叫んでも聞いてもらえなくて……だけど、ある一瞬だけ声が届いて。
 これが最後なんだなって思った。誓いを破って、ボロボロ泣いて。
 だから、必死な想いで口走った。

 ――ちゃんと好きだったからね。

 うおお……アレ、夢じゃなかったのか!
 失敗した、どうして覚えてないフリができなかったんだろう、私!
 いつもいつも、バカ正直すぎるのよ!

「あ、アレは……」
「アレは?」
「もう最後、と思って……」

 ヤバい、思い出してちょっと泣きそう。鼻の奥がツンとする。
 それに恥ずかしさも加わって、目の周りが急速に熱を帯びていく。

「やり直しを要求したいんだけど」
「……え?」

 何ですか、人が珍しく感傷に浸っている時に。

「現在形に直してもう1回言ってくれる?」
「はぁ!?」

 驚きすぎて、涙が引っ込む。
 まじまじと見つめたけど、新川透は微動だにしない。

 お、お、お前なあ!
 死ぬかもしれない、と思ってギリギリで絞り出した台詞を、今ここで再現しろっての!?

「無理! 絶対、無理だからー!」
「何で?」
「だって、最後だと思って頑張ったんだもん! 言っておかなくちゃって……」
「そこまで切羽詰まらないと出ないの? どれだけ頑固なの、莉子?」

 新川透はベッドに肘をつくと、むすーっとした顔で私を上目遣いに見る。
 いや、ちょっと、ヤメテ……。卑怯すぎるんじゃない?
 その角度は何だ? そんな目で私を見ないでー。

「それに、わかってる?」
「な、何が?」
「『結婚してくれたら教えてあげる』って言ったら、『何でそんな先なの!?』って言った」
「言った……けど……」
「先にはあるんだね、結婚。それって、プロポーズOKしたも同然じゃない?」

 ぐはぁ! 言質取られた!
 あれだけ……あれだけあれだけ、気をつけてたのに!
 いや、待て! まだ挽回の余地はある!

「違うもん! あくまで可能性の1つとして……」
「つまりその可能性はゼロじゃない。未来の選択肢の1つとして挙がるくらいの気持ちはすでにある、ということだろ」
「うっ……」

 そうですね、そうですよ!
 何だよ、しばらくは泳がしてくれるんじゃじゃなかったの?
 違った、逃す気はないって言ってたわ! はい、詰んだー!

「わ……分かってるんなら! わざわざもう1回言わせなくたっていいじゃん!」
「聞きたい」
「恥ずかしすぎるもん! 嫌だよ!」

 見たらわかるでしょ、この赤い顔。ほら、半泣きよ?
 どんだけ追いつめる気だよ。お願いだから許して~~!

「……じゃあ、妥協案」
「何?」
「目を閉じて」
「……」

 一瞬、脳ミソが活動停止した後――急にフルスロットルで高速回転し始める。

 ひ、ひいぃぃー! それは、もしや……もしや!
 キスしようとしてます!?
 さっき拒否したから!? お前は根に持つタイプか! そうだね、そうだったわ!

「は、歯磨きしてないし!」
「大丈夫、俺は全く気にしない」
「気にして、お願いだから!」

 今からキスしますよ、それではどうぞって、恥ずかしすぎない!?
 ドラマとかだと何気なくしてるじゃない! 阿吽の呼吸ってやつ?
 世の中のカップルの皆さん、その辺どうなの!? 教えてー!
 恥ずかしいよね、コレ!
 ああ、今、切実にオーディエンスを使いたい!

「ああ……考えてる、考えてる」
「なっ……」
「とてつもなく興奮するなー」
「へ、変態――!」
「この程度で変態って言ってたら、莉子、この先大変だよ?」
「恐ろしいことを言うな!」

 ……とか何とか言っているうちに、抱き寄せられ、両手で顔を固定され、しっかりと唇を奪われてしまったのだった。


 もう! どうしていつも、こうなるの!?
 これから先、私が新川透にイニシアチブを取る日は来るんだろうか?
 
 私が好きになった人は、いつまで経っても謎めいている。
 私だけが何も知らないままで、彼に振り回される日々が続くんだろう。
 いつまでも、こんな感じで……。
 
 ――いやいや、諦めたりなんかしないよ!?
 いつか、私だけの『新川透トリセツ』を作ってみせるんだから!
 


                            - Fin -






――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 これにて本編、完結です。
 読んでくださった方々、本当にありがとうございました。

 このあとですが。
 『放課後』と称しまして、本編中で回収できなかったエピソードや、不意に思いついたエピソードを思いつくまま書き散らした後日談が存在します。短編連作になります。

 しばらくしたら連載再開しようと思いますので、よろしければ、その後の莉子たちを覗いて頂けると嬉しいです。m(_ _)m
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