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放課後 ~後日談~
初めてのバレンタイン(後編)
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うーん、どう考えてもいい言い訳が思いつかないな。
裏事情を打ち明けるのは情けないし恥ずかしいけど、説明せずに適当に誤魔化すわけにはいかなそうだ。
私は別に、新川透に意地悪をしたい訳ではない。傷つけたくないのよ。
「あの……実は、チョコを買いに行ったら小林梨花さんに会って」
「……」
「私……あの、バレンタインにチョコをあげるの、初めてで」
「えっ」
「そしたら小林さんがいろいろ教えてくれて。……これも、選んでくれたの」
「ふうん……」
「もっとちゃんと相手の基本的なことを知っておくべきだ、とアドバイスをくれたのも小林さんで……」
「ああ……」
だからあの一問一答になったんだ、と新川透は独り言のように呟いた。私の向かいに座り、自分の膝で頬杖をついた姿勢のまま、なるほどね、と頷いている。
その顔は「やれやれ」といった風で……やっぱり迷惑だったんだな、とちょっと凹んでしまった。
知らず知らず、顔が下がってしまう。まともに見ることができない。
「だから、これじゃ駄目だなあって」
「何が?」
「だって、私……新川透が喜ぶかどうか、とか考えてなかったから」
「……」
「そういうのちゃんとして……私が選んだものじゃないから」
小林梨花が言いたかったのは実はそういう意味じゃないかな……と、初めて思い当たった。
ただ情報を押さえろってことじゃなくて……もっと相手のことを思いやるべきだって。
ちゃんと相手のことで頭いっぱいにしてから、何をしてあげたいのか考えないと駄目だよ、と言っていたのでは。
だからこのチョコはあげられません、と言おうとすると、頭上から「はあぁ」という大きな溜息が降ってきた。
「莉子は本当に困った子だね」
「……っ……」
やっぱり失望しちゃったんだろうか。
そうだよね、このままじゃ駄目だよね。
「あの、お願い。チョ……」
チョコのやり直しをさせて、と言おうとして顔を上げると、新川透の両手が私の顔に伸びてきた。
そのまま両頬を包まれ、チュッと軽く口づけされる。
い? 何だ?
あれ? ガッカリ、じゃない? 怒ってるわけでも、ない?
何でここでソレ? どういう感情?
どういうことなのかよくわからずボケッとしていると、そのままギュッと抱きしめられた。
「頑固というか、融通が利かないというか……」
「え……」
やっぱりクレームだろうか……と混乱していると、左サイドの髪をかきあげられ、耳にもチュッとキスされる。
「ひゃっ!」
「でも、莉子のそういう真摯な所が好き」
「えっ……やん!」
耳元で囁かれ、再び口づけされて、私の脳ミソはあっという間にオーバーヒートを起こした。
な、何、何、何!? 何が起こってるの!?
ちょっと待って!
と、溶ける……溶けるから、脳ミソが!
だから何でこの人は説明ナシで行動に移すの! 実力行使はやめろと何度も言ったはずなんだけど!
いや、事前に「するね」と言われても困るけども。でもそうしてくれれば少なくとも逃げるチャンスは……。
あ、そうか、逃げられないようにか!
基本、私に拒否権が無いのってどうなんだろうね! これは不平等じゃないでしょうか!
ねぇ、世の中のカップルの皆さん……。本当に、どうやってお互いの意思の疎通を図ってるの? 何か合図とかあるの?
そもそも一方がこんなにガンガン来るものなんでしょうか?
経験値が低すぎて私にはよくわからない!
「莉子の『正しい』がいつも正しいかどうかはともかくとして……」
「な……きゃっ!」
後ろ手にしていた手の平から、チョコが零れ落ちる。
グッと身体を持ち上げられて視界がぐるりと回り、壁、テーブル、カーペットが敷かれた床と目まぐるしく変わった。
しまった! 頭がスパークして目がチカチカして頭がグルグルしている間に次の一手が遅れた! またもや新川透の思うがままだよ!
ところで、何でここで抱き上げるの!? どんな嫌がらせをしようとしてるの!?
んでもって、私を左腕で抱えたまま、右手にしっかりチョコを掴んでるし!
「それ、チョコ!」
「あ、これは絶対に貰うから。莉子の初めてを逃すわけにはいかないし」
「でも!」
「売り場まで足を運んだのは、莉子自身の気持ちじゃないの?」
「それは、そうだけどっ……」
新川透は右手のチョコを傍のテーブルに置くと、両腕で私を抱え直した。
いわゆるお姫様抱っこの状態になり、顔が目の前に来る。
……なに、その蕩けそうな笑顔!
危険、これは危険だ! 見ちゃ駄目だ、あっという間にテンパってしまう!
全員、退避――!
首がグキッとなるぐらい勢いよく顔を背け、ガシッと新川透の左肩にしがみつく。
そしてそのままトレーナーをギュッと掴み、ぎゅうっと目をつぶって顔を伏せた。
あー、もう、何か物凄く恥ずかしいぞ!
えーと、こういう時はどうしたらいいんだろう!? どこか入れる穴はないですか!?
いや、それじゃダメダメ! パニクったらますます正しい判断ができなくなる。
――そうだ。とりあえず落ち着くのだ、莉子よ。
幸い敵は、お怒りモードでも魔王モードでもないのだ。アタフタしていては、またいいようにからかわれてしまう。
様子を窺って、反撃のタイミングを考えよう。
うーん、でもさらに厄介な劇的甘々モードのような……。しかも過去最大級の。
ヤバ、また頬の熱が上がってきた……。
とにかく、こんな真っ赤になってアウアウしている様子は見せちゃいけない!
まずはクールダウンだ! うん!
打つ手を誤ると、大変なことになるからね!
「でね。莉子はバカ正直でいつも真っすぐだから……そんな莉子の前だと俺も誠実になれるかな、と思う」
バカ正直で悪かったですね! だからいちいち私の反応を面白がるんでしょう!
今回はそうはいかないからな!
……ところで『誠実』の意味、本当にわかってます? 裏工作するような人を『誠実』とは言わないんですよ。
「莉子の前でちゃんと胸を張れるように、と思えるから……正直な、真人間でいられそう」
ほら、やっぱり元は嘘つきということじゃないですか。
……って、そうか、真人間じゃないって自覚あったんだね。意外です。
それにその表現だとギリギリ魔物にならずに済んでます、って感じだね。私は猛獣使いかよ。
そのとき、身体がグッと斜めに傾けられ、驚いて目を開けた。
辺りがひどく薄暗い。ぼふん、と柔らかいものが背中に当たる。
どうなってるんだろう、と必死に目を凝らしてみる。
――扉からリビングの光が漏れている。その明かりだけが頼りの、薄暗い寝室。
あれ、これはベッドに寝かされたのでは……と気づいたときにはすでに遅かった。自分の顔の両サイドに突かれた腕とずしりとした重み、そして新川透の顔が近付いてくる気配を感じる。
「ちょっと待った――!!」
私は全力で叫ぶと、幸い自由になっていた両手でぶにっと新川透の顔を押し返した。「ふがっ」という小さい呻き声が上から聞こえてくる。
「何!? 何するつもり!?」
「何って勿論、え……」
「ば、バッカじゃないの!?」
「うん、バカでいい」
私の左手が捉えられ、薬指にチュッとキスをされる。
ひゃあ! 何をする!
あああ、薄暗くて新川透の顔が見えなくて、本当に良かった!
あんな綺麗な顔でそんなキザなことされたら絶対に撃沈している!
……ってバカ、想像したら同じでしょうが! 踏ん張れ、踏ん張るんだ莉子!
「せ、『誠実』はどうした!」
「自分に『正直』な方をチョイスした。莉子が悪い」
「何でよ!」
「煽るから。一生懸命でけなげで可愛すぎる」
「煽ってな……だ、か、ら駄目だって!」
尚も顔を近づけようとする気配を感じ、掴まれた左手を咄嗟に振り払う。
とりあえず両頬を掴み、びろーんと左右に引っ張った。「へっ」という空気の漏れた間抜けな音がする。
どうだ、これでムードもへったくれもないだろう!
「ひゃ、ひゃい……」
案の定、驚いたような、それでいて毒気が抜かれた声が降ってきた。リビングからの逆光で、表情までは分からないけど。
「とにかくコレはナシ! 早くクールダウンして!」
「ふりひゃお、ほんなにはひゃふっはほい……」
「大丈夫、やればできる!」
「ひはうほうあひはい」
「絶対、駄目! ほら、早く!」
「ひょうしてほはへ?」
「ダメ!」
その後しばらく唸り声が漏れていたけど、やがて「わはっは」という小さな声が聞こえてきたので、私は両手を新川透の頬から離し、すかさずのしかかっていた上半身を押しのけた。慌てて上半身を起こし、ベッドの上で少しだけ距離を取る。
はぁ、ドキドキした。もう恋のドキドキかスリルのドキドキか訳がわかんない。
まさか大暴走ケモノモードに突入していたとは!
確変かよ! 危うく777になるところだったわ!
初心者なんだからもうちょっと分かりやすく予告してくれ!
「どこでどういう回路が繋がったらこんなことになるのよ!」
「そんな複雑なもんじゃないよ。男って単純だから」
「複雑怪奇な、難儀な性格してるクセに!」
「そんなことはない。こういう方面なら俺とてただの男、例外ではない」
「開き直るな!」
これ以上押し問答しても仕方がない。再び危機がやってくるだけだ。
私はよろめきながらベッドを降り、光を頼りにリビングへの扉へと向かう。
その背後で、新川透は
「あー、やっぱり莉子は簡単に流されてはくれないかー」
となぜか楽しそうに笑っていた。
何で笑えるのよ……。冗談でやった訳じゃないよね? ちゃんと真剣だったのは確かなのに。
やっぱりこの人の思考回路はよくわからない……。
私の初めてのバレンタインはかなりドキドキのギリギリのスレスレで。
色んな意味でこの人と本腰を入れて向き合わなければならない、と思いました。
がふうっ。
裏事情を打ち明けるのは情けないし恥ずかしいけど、説明せずに適当に誤魔化すわけにはいかなそうだ。
私は別に、新川透に意地悪をしたい訳ではない。傷つけたくないのよ。
「あの……実は、チョコを買いに行ったら小林梨花さんに会って」
「……」
「私……あの、バレンタインにチョコをあげるの、初めてで」
「えっ」
「そしたら小林さんがいろいろ教えてくれて。……これも、選んでくれたの」
「ふうん……」
「もっとちゃんと相手の基本的なことを知っておくべきだ、とアドバイスをくれたのも小林さんで……」
「ああ……」
だからあの一問一答になったんだ、と新川透は独り言のように呟いた。私の向かいに座り、自分の膝で頬杖をついた姿勢のまま、なるほどね、と頷いている。
その顔は「やれやれ」といった風で……やっぱり迷惑だったんだな、とちょっと凹んでしまった。
知らず知らず、顔が下がってしまう。まともに見ることができない。
「だから、これじゃ駄目だなあって」
「何が?」
「だって、私……新川透が喜ぶかどうか、とか考えてなかったから」
「……」
「そういうのちゃんとして……私が選んだものじゃないから」
小林梨花が言いたかったのは実はそういう意味じゃないかな……と、初めて思い当たった。
ただ情報を押さえろってことじゃなくて……もっと相手のことを思いやるべきだって。
ちゃんと相手のことで頭いっぱいにしてから、何をしてあげたいのか考えないと駄目だよ、と言っていたのでは。
だからこのチョコはあげられません、と言おうとすると、頭上から「はあぁ」という大きな溜息が降ってきた。
「莉子は本当に困った子だね」
「……っ……」
やっぱり失望しちゃったんだろうか。
そうだよね、このままじゃ駄目だよね。
「あの、お願い。チョ……」
チョコのやり直しをさせて、と言おうとして顔を上げると、新川透の両手が私の顔に伸びてきた。
そのまま両頬を包まれ、チュッと軽く口づけされる。
い? 何だ?
あれ? ガッカリ、じゃない? 怒ってるわけでも、ない?
何でここでソレ? どういう感情?
どういうことなのかよくわからずボケッとしていると、そのままギュッと抱きしめられた。
「頑固というか、融通が利かないというか……」
「え……」
やっぱりクレームだろうか……と混乱していると、左サイドの髪をかきあげられ、耳にもチュッとキスされる。
「ひゃっ!」
「でも、莉子のそういう真摯な所が好き」
「えっ……やん!」
耳元で囁かれ、再び口づけされて、私の脳ミソはあっという間にオーバーヒートを起こした。
な、何、何、何!? 何が起こってるの!?
ちょっと待って!
と、溶ける……溶けるから、脳ミソが!
だから何でこの人は説明ナシで行動に移すの! 実力行使はやめろと何度も言ったはずなんだけど!
いや、事前に「するね」と言われても困るけども。でもそうしてくれれば少なくとも逃げるチャンスは……。
あ、そうか、逃げられないようにか!
基本、私に拒否権が無いのってどうなんだろうね! これは不平等じゃないでしょうか!
ねぇ、世の中のカップルの皆さん……。本当に、どうやってお互いの意思の疎通を図ってるの? 何か合図とかあるの?
そもそも一方がこんなにガンガン来るものなんでしょうか?
経験値が低すぎて私にはよくわからない!
「莉子の『正しい』がいつも正しいかどうかはともかくとして……」
「な……きゃっ!」
後ろ手にしていた手の平から、チョコが零れ落ちる。
グッと身体を持ち上げられて視界がぐるりと回り、壁、テーブル、カーペットが敷かれた床と目まぐるしく変わった。
しまった! 頭がスパークして目がチカチカして頭がグルグルしている間に次の一手が遅れた! またもや新川透の思うがままだよ!
ところで、何でここで抱き上げるの!? どんな嫌がらせをしようとしてるの!?
んでもって、私を左腕で抱えたまま、右手にしっかりチョコを掴んでるし!
「それ、チョコ!」
「あ、これは絶対に貰うから。莉子の初めてを逃すわけにはいかないし」
「でも!」
「売り場まで足を運んだのは、莉子自身の気持ちじゃないの?」
「それは、そうだけどっ……」
新川透は右手のチョコを傍のテーブルに置くと、両腕で私を抱え直した。
いわゆるお姫様抱っこの状態になり、顔が目の前に来る。
……なに、その蕩けそうな笑顔!
危険、これは危険だ! 見ちゃ駄目だ、あっという間にテンパってしまう!
全員、退避――!
首がグキッとなるぐらい勢いよく顔を背け、ガシッと新川透の左肩にしがみつく。
そしてそのままトレーナーをギュッと掴み、ぎゅうっと目をつぶって顔を伏せた。
あー、もう、何か物凄く恥ずかしいぞ!
えーと、こういう時はどうしたらいいんだろう!? どこか入れる穴はないですか!?
いや、それじゃダメダメ! パニクったらますます正しい判断ができなくなる。
――そうだ。とりあえず落ち着くのだ、莉子よ。
幸い敵は、お怒りモードでも魔王モードでもないのだ。アタフタしていては、またいいようにからかわれてしまう。
様子を窺って、反撃のタイミングを考えよう。
うーん、でもさらに厄介な劇的甘々モードのような……。しかも過去最大級の。
ヤバ、また頬の熱が上がってきた……。
とにかく、こんな真っ赤になってアウアウしている様子は見せちゃいけない!
まずはクールダウンだ! うん!
打つ手を誤ると、大変なことになるからね!
「でね。莉子はバカ正直でいつも真っすぐだから……そんな莉子の前だと俺も誠実になれるかな、と思う」
バカ正直で悪かったですね! だからいちいち私の反応を面白がるんでしょう!
今回はそうはいかないからな!
……ところで『誠実』の意味、本当にわかってます? 裏工作するような人を『誠実』とは言わないんですよ。
「莉子の前でちゃんと胸を張れるように、と思えるから……正直な、真人間でいられそう」
ほら、やっぱり元は嘘つきということじゃないですか。
……って、そうか、真人間じゃないって自覚あったんだね。意外です。
それにその表現だとギリギリ魔物にならずに済んでます、って感じだね。私は猛獣使いかよ。
そのとき、身体がグッと斜めに傾けられ、驚いて目を開けた。
辺りがひどく薄暗い。ぼふん、と柔らかいものが背中に当たる。
どうなってるんだろう、と必死に目を凝らしてみる。
――扉からリビングの光が漏れている。その明かりだけが頼りの、薄暗い寝室。
あれ、これはベッドに寝かされたのでは……と気づいたときにはすでに遅かった。自分の顔の両サイドに突かれた腕とずしりとした重み、そして新川透の顔が近付いてくる気配を感じる。
「ちょっと待った――!!」
私は全力で叫ぶと、幸い自由になっていた両手でぶにっと新川透の顔を押し返した。「ふがっ」という小さい呻き声が上から聞こえてくる。
「何!? 何するつもり!?」
「何って勿論、え……」
「ば、バッカじゃないの!?」
「うん、バカでいい」
私の左手が捉えられ、薬指にチュッとキスをされる。
ひゃあ! 何をする!
あああ、薄暗くて新川透の顔が見えなくて、本当に良かった!
あんな綺麗な顔でそんなキザなことされたら絶対に撃沈している!
……ってバカ、想像したら同じでしょうが! 踏ん張れ、踏ん張るんだ莉子!
「せ、『誠実』はどうした!」
「自分に『正直』な方をチョイスした。莉子が悪い」
「何でよ!」
「煽るから。一生懸命でけなげで可愛すぎる」
「煽ってな……だ、か、ら駄目だって!」
尚も顔を近づけようとする気配を感じ、掴まれた左手を咄嗟に振り払う。
とりあえず両頬を掴み、びろーんと左右に引っ張った。「へっ」という空気の漏れた間抜けな音がする。
どうだ、これでムードもへったくれもないだろう!
「ひゃ、ひゃい……」
案の定、驚いたような、それでいて毒気が抜かれた声が降ってきた。リビングからの逆光で、表情までは分からないけど。
「とにかくコレはナシ! 早くクールダウンして!」
「ふりひゃお、ほんなにはひゃふっはほい……」
「大丈夫、やればできる!」
「ひはうほうあひはい」
「絶対、駄目! ほら、早く!」
「ひょうしてほはへ?」
「ダメ!」
その後しばらく唸り声が漏れていたけど、やがて「わはっは」という小さな声が聞こえてきたので、私は両手を新川透の頬から離し、すかさずのしかかっていた上半身を押しのけた。慌てて上半身を起こし、ベッドの上で少しだけ距離を取る。
はぁ、ドキドキした。もう恋のドキドキかスリルのドキドキか訳がわかんない。
まさか大暴走ケモノモードに突入していたとは!
確変かよ! 危うく777になるところだったわ!
初心者なんだからもうちょっと分かりやすく予告してくれ!
「どこでどういう回路が繋がったらこんなことになるのよ!」
「そんな複雑なもんじゃないよ。男って単純だから」
「複雑怪奇な、難儀な性格してるクセに!」
「そんなことはない。こういう方面なら俺とてただの男、例外ではない」
「開き直るな!」
これ以上押し問答しても仕方がない。再び危機がやってくるだけだ。
私はよろめきながらベッドを降り、光を頼りにリビングへの扉へと向かう。
その背後で、新川透は
「あー、やっぱり莉子は簡単に流されてはくれないかー」
となぜか楽しそうに笑っていた。
何で笑えるのよ……。冗談でやった訳じゃないよね? ちゃんと真剣だったのは確かなのに。
やっぱりこの人の思考回路はよくわからない……。
私の初めてのバレンタインはかなりドキドキのギリギリのスレスレで。
色んな意味でこの人と本腰を入れて向き合わなければならない、と思いました。
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