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収監令嬢・蛇足の舞台裏 ~神々の事情~
男神の回顧録14・男神の困惑【第13幕上】
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「ミーアとマリアンセイユが大乱闘? 何ですか、それは?」
二人に遭遇したというマデラの話を聞いて、呆気にとられる。
何でも、マデラギガンダの洞窟周辺で鉢合わせた二人は、炎と水の魔法でやり合ったあと罵り合いになり、その後は取っ組み合いの喧嘩になったという。
ミーアがマリアンセイユの魔界追放イベントを起こそうとマデラギガンダの洞窟に向かい、それを察したマユが止めに入った、というところか。聖獣もいたというから、彼らがマユを案内したのだろう。
……しかし罵り合い、取っ組み合いとは。およそミーアとマリアンセイユの関係からは考えられないが……。
となると、元の世界の記憶が蘇ったのか。そしてお互い、相手がかつての親友だと気づいたのだろう。
それがどうして喧嘩になってしまったのかはよくわからないが、親しくなければ喧嘩もできまい。
……ひょっとすると、マユの方はもう少し前にミーアが早坂美玖だと気づいていたのかもしれない。
だから、ミーアをディオンの側妃にする計画に乗ったのか。親友の望みを叶えるために。
久しぶりに、日本で見た『繭』の姿を思い出した。早坂美玖を助けようと駆け寄る、あの美しい横顔。強くまっすぐな瞳。
魂は変わらないのだ、と思う。
しかしそれでは、マユの望みはどうなるのだ。一方的過ぎるではないか。
「いったいどういうことなのか……」
わたしがやや憮然としながら言葉を漏らすと、マデラは『んー』と右手で顎をしゃくりながら、何かを思い出すように左斜め上を見上げた。
『ディオンがどうとかこうとか言っていましたが。三角関係のもつれですかな』
「……別に喧嘩の理由を聞いている訳ではありません」
『なかなか見応えはありましたがな。ハッハッハッ!』
マデラはその巨体を大きく揺らしながら豪快に笑う。
一方こちらはちっとも笑えない。マユがディオンを取り合ってミーアと争うなど、あり得ない話だ。
……そう思いたいが。
思わず溜息をつくと、わたしの機嫌を損ねたとでも思ったのか、マデラはふと我に返ったように居住まいを正し、真面目な顔をして頭を垂れた。
『さて、魔王。それで、どうされますか』
「どう、とは?」
『二人とも聖女でした。ワシの姿も見えていましたからな』
「……」
『聖女の性質が強いのはミーアですが、魔の者に近いのはマリアンセイユです』
マデラの分析は的を射ているとは思うが……どう、と言われても今は判断材料が少なすぎる。
マデラは約定は破られたがどうするつもりか、と聞いているのだろう。
地上に侵攻するのか、それとも再び約定を取り交わすのか。
もう一度結び直す、その証としてマリアンセイユを所望する、ということはできそうだ。
だが、しかし、それは……マユの望みと合致するだろうか。
さんざん振り回してきたし振り回されてきたが、やっとここまで来た。
なのに有無を言わさず魔界に連れて行くというのも……。
“魔王。少々いいか”
ムーンがぬうっと謁見の間に顔を出す。
ペントのところに魔物サルサを引き取りに行くように頼んであったのだが、どうやらそれを終えて帰ってきたらしい。
「サルサのことですか?」
“それもある”
ふわり、と六角柱の透明な結晶が宙に現れ、わたしとマデラの間に置かれた。
ムーンの結界を結晶化したものだ。中には、魔物サルサがぐったりとした様子で横たわっている。
蝶の羽はあちらこちら千切れ、右手と左足が折られているようだ。かなり手酷くペントに痛めつけられたらしい。意識もないみたいだが……。
「死んではいませんよね」
“ああ”
カイ=ト=サルサは人間ベースの魔物。その能力や魔物になったきっかけ、ミーアに会うまでの様子などは知識として頭に入っているが、肝心なのはその後。
物語の本編において、ミーアとどんなやりとりをしていたのか。何を思って彼女の傍にいたのか?
マユが現れたことで、本来のゲームとはまったく違う物語となった『リンドブロムの聖女』。当然サルサも元々の設定とは違っているはずだ。
その辺りを知るためにもサルサを尋問しなければならない。しかし今は、マデラの方が先だ。
「話を聞きたいので、フェデンに体を治してもらってください。その後は一階の中庭に運んでおいてもらえますか。後で彼女の場所を用意します」
“わかった。あと、アッシュが急ぎ魔王に取り次いでほしいと言っている”
「アッシュが? では、マデラの後に……」
“いや、同席したい、と。聖女の件らしい”
「え?」
確かアッシュはマユを聖女に推している、という話だった。聖獣の保護者でもあるし、どう見積もってもマユに悪い話ではないだろう。
同席したいということはマデラに聞かせたい話がある、ということだ。
「わかりました。許可します」
“承知した”
ムーンがサルサの結晶と共に姿を消すと、しばらく経ってから謁見の間の池が渦を巻き出した。水面が揺れ、その飛沫が周りの地面を濡らす。
そして渦の中心からぬうっと、アッシュことアッシメニアが顔を出した。
銀の鱗に覆われた巨大な鰐の魔獣。その瞳は、しっかりと閉じられたまま。両前脚を地面につけ、『ふむぅ』と鼻息を漏らす。
『魔王、謁見を許してくださりありがとうございます』
「いえ。で、火急の要件とは?」
当然マユに関することだろう、と思いながらも平静を装って聞くと、アッシュは恭しく頭を下げた。
『マデラの問いかけに対する、聖女の返事を預かってきました』
「問いかけ? マデラ、二人に何と言ったのですか?」
わたしが聞くと、マデラが少し戦き、再び右手で顎をしゃくり始めた。
『何、と言われても……』
「正確に思い出してください」
マデラは乱闘している二人の前に現れ、何か言葉をかけた。それに対して二人は――いやマユは、すぐに何らかの手を講じる必要があると考えた。
だからアッシュに伝言を頼んだのだろう。そんなことができるのは、聖獣を従えるマユだけだ。
マユは相手の表情、言葉尻から状況を直観的に判断する能力に長けている。マデラが何と言ったのか、正しく知らなければならない。
『うー……〝いつまで、ワシの縄張り付近で無駄話をしているつもりだ〟だったか』
『それの後ですな』
アッシュが違うとばかりに口を挟む。どうやら『水通鏡』で一連の出来事は見ていたようだ。
『えーと……〝こたびの聖女は二人か。面白いことになったな〟』
『それと、もう少し後も』
『ああん? ……〝約定は、破られた。魔王はその眼を開いたぞ〟』
『もう一声』
『うーむ……〝さぁて、どうする? 小娘ども〟』
『以上ですな』
マデラから言葉を聞きだしたアッシュが、私の方に向き直る。
「つまり、マデラが二人を聖女と認め、わたしが目覚めたことも伝えたということですね」
『そうです』
「そして、どうする?と聞かれた、と。つまり約定が破られたがどうするつもりだ?と問われた、と捉えた訳ですね」
『そういうことになりますな』
実際のところ、魔王であるわたしはまだ何も言っていない。マデラの勇み足な訳だが……。
まぁ、いいだろう。それに気づいてこうしてわたしに謁見を申し出たのだから。
『その返事を聖獣経由で預かりました』
『王獣アッシュともあろう者が、小娘の使いか?』
マデラがやや皮肉めいた言葉を放つが、アッシュは一向に構わない様子で『その通りじゃ』と相槌を打った。
『ハトとスク、そしてスクォリスティミの件では世話になりましたからな。――マリアンセイユには』
『……ふうむ。まぁ、確かに』
マデラが納得したように何度か頷く。どうやらアッシュの真意には気づいていないようだ。
アッシュは念を押した。これは二人の聖女からの伝言ではなく、マユ一人のものだと。マユに頼まれたから、動いたのだと。
つまり、これこそがマユの望み。恐らく、マユの真意。
ならば叶えよう。それが、どんなものだったとしても。
胸の奥が鉛を押し込められたように苦しくなるが、表に出す訳には行かない。腹に力を入れ直し、アッシュへと向き直った。
「で、その内容とは?」
『三日後の聖なる者の選定の場に、王獣マデラギガンダを招待したい、と』
「え?」『は?』
わたしとマデラが同時に声を上げる。
思わずアッシュをまじまじと見てしまったが、アッシュは特に動じることもなく、落ち着き払っていた。
マデラを招待? どうしてそうなる?
いったいマユは、今度は何をやろうとしているのだ?
二人に遭遇したというマデラの話を聞いて、呆気にとられる。
何でも、マデラギガンダの洞窟周辺で鉢合わせた二人は、炎と水の魔法でやり合ったあと罵り合いになり、その後は取っ組み合いの喧嘩になったという。
ミーアがマリアンセイユの魔界追放イベントを起こそうとマデラギガンダの洞窟に向かい、それを察したマユが止めに入った、というところか。聖獣もいたというから、彼らがマユを案内したのだろう。
……しかし罵り合い、取っ組み合いとは。およそミーアとマリアンセイユの関係からは考えられないが……。
となると、元の世界の記憶が蘇ったのか。そしてお互い、相手がかつての親友だと気づいたのだろう。
それがどうして喧嘩になってしまったのかはよくわからないが、親しくなければ喧嘩もできまい。
……ひょっとすると、マユの方はもう少し前にミーアが早坂美玖だと気づいていたのかもしれない。
だから、ミーアをディオンの側妃にする計画に乗ったのか。親友の望みを叶えるために。
久しぶりに、日本で見た『繭』の姿を思い出した。早坂美玖を助けようと駆け寄る、あの美しい横顔。強くまっすぐな瞳。
魂は変わらないのだ、と思う。
しかしそれでは、マユの望みはどうなるのだ。一方的過ぎるではないか。
「いったいどういうことなのか……」
わたしがやや憮然としながら言葉を漏らすと、マデラは『んー』と右手で顎をしゃくりながら、何かを思い出すように左斜め上を見上げた。
『ディオンがどうとかこうとか言っていましたが。三角関係のもつれですかな』
「……別に喧嘩の理由を聞いている訳ではありません」
『なかなか見応えはありましたがな。ハッハッハッ!』
マデラはその巨体を大きく揺らしながら豪快に笑う。
一方こちらはちっとも笑えない。マユがディオンを取り合ってミーアと争うなど、あり得ない話だ。
……そう思いたいが。
思わず溜息をつくと、わたしの機嫌を損ねたとでも思ったのか、マデラはふと我に返ったように居住まいを正し、真面目な顔をして頭を垂れた。
『さて、魔王。それで、どうされますか』
「どう、とは?」
『二人とも聖女でした。ワシの姿も見えていましたからな』
「……」
『聖女の性質が強いのはミーアですが、魔の者に近いのはマリアンセイユです』
マデラの分析は的を射ているとは思うが……どう、と言われても今は判断材料が少なすぎる。
マデラは約定は破られたがどうするつもりか、と聞いているのだろう。
地上に侵攻するのか、それとも再び約定を取り交わすのか。
もう一度結び直す、その証としてマリアンセイユを所望する、ということはできそうだ。
だが、しかし、それは……マユの望みと合致するだろうか。
さんざん振り回してきたし振り回されてきたが、やっとここまで来た。
なのに有無を言わさず魔界に連れて行くというのも……。
“魔王。少々いいか”
ムーンがぬうっと謁見の間に顔を出す。
ペントのところに魔物サルサを引き取りに行くように頼んであったのだが、どうやらそれを終えて帰ってきたらしい。
「サルサのことですか?」
“それもある”
ふわり、と六角柱の透明な結晶が宙に現れ、わたしとマデラの間に置かれた。
ムーンの結界を結晶化したものだ。中には、魔物サルサがぐったりとした様子で横たわっている。
蝶の羽はあちらこちら千切れ、右手と左足が折られているようだ。かなり手酷くペントに痛めつけられたらしい。意識もないみたいだが……。
「死んではいませんよね」
“ああ”
カイ=ト=サルサは人間ベースの魔物。その能力や魔物になったきっかけ、ミーアに会うまでの様子などは知識として頭に入っているが、肝心なのはその後。
物語の本編において、ミーアとどんなやりとりをしていたのか。何を思って彼女の傍にいたのか?
マユが現れたことで、本来のゲームとはまったく違う物語となった『リンドブロムの聖女』。当然サルサも元々の設定とは違っているはずだ。
その辺りを知るためにもサルサを尋問しなければならない。しかし今は、マデラの方が先だ。
「話を聞きたいので、フェデンに体を治してもらってください。その後は一階の中庭に運んでおいてもらえますか。後で彼女の場所を用意します」
“わかった。あと、アッシュが急ぎ魔王に取り次いでほしいと言っている”
「アッシュが? では、マデラの後に……」
“いや、同席したい、と。聖女の件らしい”
「え?」
確かアッシュはマユを聖女に推している、という話だった。聖獣の保護者でもあるし、どう見積もってもマユに悪い話ではないだろう。
同席したいということはマデラに聞かせたい話がある、ということだ。
「わかりました。許可します」
“承知した”
ムーンがサルサの結晶と共に姿を消すと、しばらく経ってから謁見の間の池が渦を巻き出した。水面が揺れ、その飛沫が周りの地面を濡らす。
そして渦の中心からぬうっと、アッシュことアッシメニアが顔を出した。
銀の鱗に覆われた巨大な鰐の魔獣。その瞳は、しっかりと閉じられたまま。両前脚を地面につけ、『ふむぅ』と鼻息を漏らす。
『魔王、謁見を許してくださりありがとうございます』
「いえ。で、火急の要件とは?」
当然マユに関することだろう、と思いながらも平静を装って聞くと、アッシュは恭しく頭を下げた。
『マデラの問いかけに対する、聖女の返事を預かってきました』
「問いかけ? マデラ、二人に何と言ったのですか?」
わたしが聞くと、マデラが少し戦き、再び右手で顎をしゃくり始めた。
『何、と言われても……』
「正確に思い出してください」
マデラは乱闘している二人の前に現れ、何か言葉をかけた。それに対して二人は――いやマユは、すぐに何らかの手を講じる必要があると考えた。
だからアッシュに伝言を頼んだのだろう。そんなことができるのは、聖獣を従えるマユだけだ。
マユは相手の表情、言葉尻から状況を直観的に判断する能力に長けている。マデラが何と言ったのか、正しく知らなければならない。
『うー……〝いつまで、ワシの縄張り付近で無駄話をしているつもりだ〟だったか』
『それの後ですな』
アッシュが違うとばかりに口を挟む。どうやら『水通鏡』で一連の出来事は見ていたようだ。
『えーと……〝こたびの聖女は二人か。面白いことになったな〟』
『それと、もう少し後も』
『ああん? ……〝約定は、破られた。魔王はその眼を開いたぞ〟』
『もう一声』
『うーむ……〝さぁて、どうする? 小娘ども〟』
『以上ですな』
マデラから言葉を聞きだしたアッシュが、私の方に向き直る。
「つまり、マデラが二人を聖女と認め、わたしが目覚めたことも伝えたということですね」
『そうです』
「そして、どうする?と聞かれた、と。つまり約定が破られたがどうするつもりだ?と問われた、と捉えた訳ですね」
『そういうことになりますな』
実際のところ、魔王であるわたしはまだ何も言っていない。マデラの勇み足な訳だが……。
まぁ、いいだろう。それに気づいてこうしてわたしに謁見を申し出たのだから。
『その返事を聖獣経由で預かりました』
『王獣アッシュともあろう者が、小娘の使いか?』
マデラがやや皮肉めいた言葉を放つが、アッシュは一向に構わない様子で『その通りじゃ』と相槌を打った。
『ハトとスク、そしてスクォリスティミの件では世話になりましたからな。――マリアンセイユには』
『……ふうむ。まぁ、確かに』
マデラが納得したように何度か頷く。どうやらアッシュの真意には気づいていないようだ。
アッシュは念を押した。これは二人の聖女からの伝言ではなく、マユ一人のものだと。マユに頼まれたから、動いたのだと。
つまり、これこそがマユの望み。恐らく、マユの真意。
ならば叶えよう。それが、どんなものだったとしても。
胸の奥が鉛を押し込められたように苦しくなるが、表に出す訳には行かない。腹に力を入れ直し、アッシュへと向き直った。
「で、その内容とは?」
『三日後の聖なる者の選定の場に、王獣マデラギガンダを招待したい、と』
「え?」『は?』
わたしとマデラが同時に声を上げる。
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